六本木けやき坂通り 六本木さくら坂

六本木ヒルズの中心部を走る六本木けやき坂通り。
高級ブランドのショップが並ぶ洗練された通りには、ベンチになるアート作品が点在。
一方、レジデンス側を通るさくら坂は、静かで落ち着いた雰囲気が魅力。
桜以外にも、小さな花や実のついた素朴な草花たちが四季折々に迎えてくれる。

  • 2018/11/13
  • カルチャー
  • 緑の散策路
六本木けやき坂通り 六本木さくら坂

六本木ヒルズの66プラザからアリーナを抜けて、六本木けやき坂通りへ。アルマーニ、ルイ・ヴィトン、フェラガモ、ティファニー、ロレックスと、誰もが知るラグジュアリーブランドが軒を連ね、高級感と洗練されたイメージが漂う。ワーカー・観光客・買い物客など、人が絶え間なく行き交い賑やかだ。

70万個のLED電灯が彩る六本木けやき坂通りのイルミネーション。すっかり東京の冬の風物詩として定着した

レジデンス棟と森タワーをつなぐ連絡ブリッジの上は、東京タワーを正面に臨む人気フォトスポットだ。イルミネーションの時期はもちろん、春の新緑や秋の紅葉とのコラボショットもオススメ。ブリッジから下りて柱を見ると、蔦が絡まって緑へと変貌している途中。遠くから見ても目立つ緑の柱は、コンクリートの質感に潤いを与えて温かな感じに。この柱はとても巨大で、ここまで一面に覆うほど蔦を育てるのは大変だったに違いない。そんな見えない苦労にも想いを馳せる。

連絡ブリッジの柱の緑化に取り組み、数年かけて成功。日照条件や風の具合などでなかなか難しいのだとか

歩道をグランドハイアット方面へ。建物の敷地内の一部を歩道として開放する歩道状空地を活用しているため、幅が広く歩きやすい。歩道状空地は六本木通り側からテレ朝通り、六本木けやき坂通りを抜け、テレビ朝日を曲がってトンネルの前まで続いており、ベビーカーを押しながら歩く母親や、ペットを連れて歩く人などにとっては、安心して散歩を楽しめる場所になっている。
 花壇には季節の花が咲いており美しい。この花壇の整備の一部を、GREEN UPというコミュニティー活動が行っている。毎月1回、朝の8時からヒルズで働くワーカーや店舗スタッフなどで構成される有志が集まって作業する。植えるのは、東京近郊で生産される花で、地産地消を意識した取り組みなのだとか。

歩道状空地を活用した歩道は広々。GREEN UPが活動する花壇には四季折々の花が集う

同通りの最大の特徴は、ストリートファニチャーと呼ばれる、ベンチになるアート作品が点在していること。13人のアーティストによるコラボから生まれた世界初の試みだとか。赤い布がはためいているような形をした内田繁《愛だけを…》のユニークな形、伊東豊雄《波紋》の和風なデザイン、ジャスパー・モリスン《パーク・ベンチ》の環境との調和を意識したデザインなど、見ているだけでも飽きないが、実際に座れる点が何とも楽しい。アンドレア・ブランジ《アーチ》は自宅のリビングから道路を眺めているような雰囲気。

有名なジャズの曲をタイトルに持つ、内田繁《愛だけを…》。うねりが意外と背中にフィット
寄り掛かる、座る、しゃがむなどの7種類のポーズと家具が一体化した作品、ドゥルーグ・デザイン《デイ・トリッパー》

坂上の交差点から、レジデンス南側へ回る六本木さくら坂へと入っていく。75本の桜が植えられ、春はまさに桜のトンネル。ライトアップも実施するため、夜桜見物もステキだ。けやき坂通りの華やかさとは一変して、長閑な雰囲気。道路わきの植樹帯に垣根が設けられ、ドウダンツツジ、ヤマブキ、ツワブキ、サカキなどが織り交ぜて植えられている。ミズヒキの小さな赤い花が可愛らしい。
 道の半ばまで来ると、子どもたちの歓声が耳に届く。通称ロボロボ公園と呼ばれるさくら坂公園が隣接しているからだ。真ん中にあるロボットがトーテムポールのように積まれた塔は、チェ・ジョンファが制作したパブリックアート《ロボロボロボ》。全部で44体あり、なんと夜には目や胸の部分が光る仕掛けも。10台が連なった滑り台、ロボットのスプリング遊具、ローラーコースターなどもチェ・ジョンファによるものだという。

韓国人アーティスト、チェ・ジョンファが制作した滑り台は子どもたちに大人気

更に下っていくと、フジが絡んだパトリシア・ウルキオラ《繁留気球》のベンチに到着。夏は葉が茂って木陰ができて涼しく、冬は枝だけになり日差しを通して暖かいという理にかなった造りであることが実感できる。六本木けやき坂通りに合流し、ベンチには見えない無限大を表した作品、ロン・アラッド《エバーグリーン?》がある交差点でゴール。
 六本木けやき坂通りからさくら坂にかけての周遊は、華やかな趣と落ち着いた趣の2つの雰囲気が一気に楽しめて、気分転換に良さそうだ。桜やイルミネーションの時期以外にも、ぶらり散歩を楽しんでみてほしい。

生物多様性に基づき、在来種を主体に
自分で手入れがしたくなる素朴なさくら坂

山口博喜氏
Interview
森ビル株式会社
設計部 技術顧問
山口博喜氏
ダブルチェックで植栽の生育状況を管理
六本木けやき坂通りは約400mある六本木ヒルズのメインストリートです。坂上から坂下まで40数本のケヤキが植わっており、花壇にはGREEN UPのコミュニティー活動などを通して季節の花を植えています。ブランドショップの店舗前の植栽は園芸種が主体で、メインストリートに相応しいスタイリッシュさを追求している一方、さくら坂は日本在来の品種を植えて落ち着いた感じを出すようにしました。生育状況は森ビルが委託している管理者が見回ってチェックしているほか、花壇の管理は園芸会社のお花がかりさんにお願いしています。夏は植栽の生育も早いためメンテナンス頻度を上げています。
六本木けやき坂通りの坂上からは東京タワーを望める
ケヤキ並木に潜む6本の象徴
連絡ブリッジの坂上側に、実は6本のクスノキが植えられています。ケヤキ並木の中でここだけクスノキになった理由は、レジデンス棟から吹き下ろす風が強く、防風植栽が必要だったためです。ビル風を防ぐ植栽には常緑樹を用いるので、落葉樹のケヤキは植えられませんでした。そこで“六本木”という地名の由来の一説に引っ掛けて6本のクスノキを植えることで、ケヤキ並木に隠れた遊び心を織り込んでいます。
 近年、さまざまな動植物が互いに共存している生物多様性という考え方が浸透し、森ビルでもその土地の在来種を中心に、生物多様性の保全と回復を目指す緑地づくりが行われるようになりました。荒川や多摩川流域に自生していたケヤキ、コナラ、クヌギ、シラカシ、アラカシなどの木々を積極的に緑地に植え、その地域らしい植生の再現を目指しています。これらの活動はデベロッパーでは先駆的な取り組みとなりました。
ビル風を防ぐクスノキで六本木を暗示
住宅の庭先をイメージしたさくら坂
さくら坂の植栽は、住宅の庭先をイメージしてつくりました。毛利庭園では日本庭園の趣きを損なわないよう樹木に樹名板は付けていませんが、さくら坂では親しみを持ってもらうため、高木には樹名板が掲げられており、歩きながら様々な植物を知ることができます。花や紅葉などの変化が楽しめる多品種の樹木を植えた混ぜ垣で素朴な見所も演出。赤く葉が染まるドウダンツツジ、赤い実をつけるアオキ、黄色い花が咲くヤマブキやツワブキ、朱色の鮮やかな花が印象的なヤマツツジ、青い実をつけるサカキなど、四季折々に発見する楽しみがあり、自分で手入れがしたくなるような楽しさがある点がポイントです。
 六本木けやき坂通りでもさくら坂でも、風や日当たりが生育に影響を与えやすく、隣同士の木であっても育ち方や勢いが全く異なることも珍しくありません。乾燥や過湿に気を配りながら、都心の緑地をさらに心地良いものにしていきたいと思います。
ロボロボ公園周辺には、古くから敷地内にあって親しまれていたヒメユズリハ、コナラ、クヌギなどの樹木を移植
六本木ヒルズの歴史
1995(平成7)年
都市計画決定
2000(平成12)年
建築工事着工
2003(平成15)年
竣工
2013(平成25)年
10周年を迎える
2018(平成30)年
15周年を迎える

基本情報

名称 六本木けやき坂通り 六本木さくら坂
所在地 港区六本木6-12ほか
問合せ 03-6406-6000 (六本木ヒルズ総合インフォメーション 10:00〜21:00)
アクセス 日比谷線「六本木駅」徒歩3分
大江戸線「六本木駅」徒歩7分
公式サイト https://www.roppongihills.com/green/

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