ソダーバーグ監督が“傑作SF”をリメイク
まったく趣の異なるラブ・ロマンスとして生まれ変わった本作に
観客の評価は?
“傑作SF”として、『2001年宇宙の旅』と並び称される1972年の旧ソ連映画『惑星ソラリス』が、ハリウッド版としてリメイクされた。それもキャストはかなり豪華。ジェームズ・キャメロン製作、スティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー主演・・・である。
謎の惑星・ソラリスを探査する宇宙ステーションにて、スタッフ間に異変が起こる。それを解決すべく地球の心理学者クリス(クルーニー)が派遣されるが……。
本作は確かにオリジナル版とほぼ同様のキャラクター設定であり、そっくり同じシーンや台詞はもちろんある。が、趣はまったく異なる。オリジナルが哲学的で観念的、スローで考えさせられる作品とすると、本作はセットや映像に凝った、ハリウッドらしいサスペンスタッチのラブ・ロマンス。……オリジナルの熱烈ファンの“お怒り”は、避けられないかもしれない。
この映画を観始めてすぐ、ある作品を思い出した。1978年に発表された萩尾望都氏のSFコミック『スター・レッド』。人間が繰り返す進化や差別、生死の意味などが独特の世界観で描かれた秀作だ。この緻密なSFストーリーと比較してしまったことや、映画の中の惑星ソラリスがなかなか美しく思わせぶりだったこともあり、ついSF作として期待を膨らませてしまったため、シンプルなラブ・ロマンスぶりに少し気が抜けてしまった……というのが正直な感想。クリスと妻レイアとの恋愛の経緯や心理描写が丁寧に描かれている点は評価できる。
カルト的人気を誇る名作には、信仰のように崇めているファンが大勢いる。リメイクは当然とてもリスキーだがそれを知りつつ、しかもSF初挑戦で本作に臨んだというのだからソダーバーグも度胸がある。ここはひとつ、監督・脚本・撮影・編集と1人4役をこなしたソダーバーグのチャレンジ精神に一票あげたい。
本作を撮り終えた後、1年間の休養宣言をしたというソダーバーグ。1989年のカンヌ国際映画祭では史上最年少26歳にて、『セックスと嘘とビデオテープ』でパルムドール(グランプリ)を獲得し、’01年のアカデミー賞では『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』が監督賞にWノミネートされて『トラフィック』で受賞を果たし……と突っ走ってきた彼は今年で40歳。表現者として脂がのってくるのはまだまだこれから!心身をリフレッシュしてパワーを充填し、私たちの前に新作を発表してくれる時を心待ちにしていよう。
公開 | 2003年6月21日公開 日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2002年 アメリカ |
上映時間 | 1:39 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
製作 | ジェームズ・キャメロン |
監督 | スティーブン・ソダーバーグ |
出演 | ジョージ・クルーニー ナターシャ・マケルホーン ジェレミー・デイヴィス ヴィオラ・デイヴィス |
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