恋愛寫眞

堤幸彦監督の才能とセンスが閃く!
酸味と苦味を効かせた、サスペンスで青春な
堤流ラブ・ストーリー

  • 2003/05/26
  • イベント
  • シネマ
恋愛寫眞

邦画というと良作であったとしても、観た後によく抱いてしまう感覚がある。それは「いい2時間ドラマだったな〜」という感想。TVドラマの延長に思えてしまい、洋画にある非現実的な高揚感や興奮や感動があまり得られない。物足りなさを感じてしまうのだ。しかし本作はそうならないよう、巧く工夫されていた。『ケイゾク/映画』『トリック−劇場版』『池袋ウエストゲートパーク』堤幸彦監督の手腕である。

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主演は松田龍平と広末涼子。でも、ただのアイドル映画ではもちろんない。カメラマンの誠人のもとへ別れた彼女・静流(シズル)から手紙が届く。が、「静流はNYで撃たれて死んだはず」という話を聞き、彼女の行方を確認すべくNYへ発つ。ミステリーであり、少年と少女の青春恋愛ストーリーであり、少年の成長物語である。

まず、ひと捻りある映像がユニーク。ぜひ注目して欲しいのは映すだけで画になるNYより、さまざまな工夫が成されていた東京のシーン。退屈な画にならないよう、アングルや仕掛けに遊びがあるのだ。真上や真下からといった意外なアングルからの撮影、懐かしい思い出を語るときは大仰にも『エネミー・オブ・アメリカ』よろしく衛星からの地上映像を使用。かと思うと、昼間の街のシーンでは物干し竿売りの声(石焼き芋屋だったかも)をあえて入れてあったりして、東京の日常にある微妙にしみったれてパサパサと乾いた感じも正直に映す。バランスのとり方が面白いのだ。そして松田龍平くんのモノローグ(独白)によるナレーションは、全編英語で字幕付き!右脳をちくちくと刺激して、邦画でありながら飽きさせない工夫が随所にちりばめられているのである。

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ミステリーの真相は途中からわかるくらいのものだし、ラスト近くのクライマックスシーンでは重要人物の演技がクサすぎるけれど、それだけでは終わらない。最後の最後に一瞬で決断する誠人の選択や周囲の粋なはからいがとても良いのだ。「愛する」表現はキスやセックスや結婚だけじゃない。結末はありきたりじゃないけどストレートで、軽くジンときた。

力的なタレントを起用した邦画としては、今年3月に公開された蜷川幸雄氏の監督作『青の炎』も印象深く、気鋭の若手監督・北村龍平氏による現在公開中の映画『あずみ』も好評。9月には北野武氏のリメイクによる『座頭市』の公開も予定され、今年は話題作が目白押し。邦画もなかなかやってくれる。2003年は個性ある監督の邦画に要注目!・・・としてみようか。

作品データ

恋愛寫眞
公開 2003年6月公開
渋谷東急ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2003年 日本
上映時間 1:51
配給 松竹映画
監督 堤 幸彦
主題歌 山下達郎「2000トンの雨」
出演 広末 涼子
松田 龍平
小池 栄子
Dominic Marcus
Norma Chu
Stephanie Wang
大杉 漣
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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