フリーダ

2003年アカデミー賞 作曲賞・メイクアップ賞受賞作
愛に芸術に、生命の極限をサバイバルした
メキシコ人女流画家の半生

  • 2003/07/07
  • イベント
  • シネマ
フリーダ

まるで灼きつける陽射しやテキーラの酔いのように濃く重く、それでいて透き通るような高い純度で迫りくる。重度の肉体的障害や精神的ストレスを負いながらも、ほとばしる生命力と情熱のままに47年の生涯を生き抜いたメキシコの女流画家フリーダ・カーロ。彼女の壮絶な半生を、メキシコ人女優サルマ・ハエックが渾身の力を込めて製作・熱演した作品だ。

フリーダ

快活で利発な18歳の少女フリーダは交通事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う。彼女は寝たきりの療養生活で油絵に没頭し、遂には作品を有名な壁画家ディエゴに認められる。その後強い結びつきにより、21歳の年齢差を超えてフリーダとディエゴは結婚。アーティストとして高め合うが、浮気を繰り返すディエゴ、男女問わず関係をもつ両性愛者のフリーダは互いを深く傷つけ合い・・・・。

不謹慎だが、彼女の事故の詳細を資料で確認したとき、官能的なニュアンスを覚えた。体中を骨折し、半裸で金粉にまみれて発見された彼女の身体には、鉄棒が左臀部から子宮を貫き膣を貫通していたという。その才能と美貌、奔放な性分は残酷な神に愛され、人間の男に渡すまいとしたのでは……と。しかし彼女は酷な運命に屈せず痛みをも糧にして、生きる歓びの獲得をあきらめなかった。これこそが痛々しいこの物語に、苦渋に満ちたフリーダの半生に閃く光の源。極限の苦痛や苦悩をサバイバルする彼女の強靭な意志、伴侶とともにやがて見出すかけがえのない感情が、観る者の心を洗うのだ。

フリーダ

監督はミュージカル『ライオンキング』で女性初のトニー賞ミュージカル部門の演出賞を受賞し、同時に衣装賞も獲得したジュリー・テイモア。映画監督は『タイタス』に続く2作目となる才人だ。2003年度アカデミー賞にて作曲賞、メイクアップ賞を受賞した本作では、古代都市の遺跡やディエゴの自宅兼スタジオであった保存建造物による撮影、フリーダの自宅や彼女が纏っていた民族衣裳の再現……と、物語を支える背景も素晴らしい。スタッフのひたむきな努力は、メキシコの熱い風が伝わってくる原色の映像へと結実した。

「絵は自分の現実であり、すべて経験した真実を語っている」と、自らの作品についてコメントする彼女。これから「Bunkamura ザ・ミュージアム」では、フリーダをはじめ5人の女性画家たちの作品約80点を展示する『メキシコの女性シュルレアリストたち フリーダ・カーロとその時代』を開催。映画に登場するレプリカも美しいが、複製ではない、本物のフリーダに会えるのだ!感情を真っ正直に描き、居心地の良いような悪いような微妙な感覚、共感と嫌悪を同時に引き起こすような強い作品を前に、あなたは何を思うだろう。ここは自伝的映画と絵画作品、双方観ることを強くおすすめしたい。

作品データ

フリーダ
公開 2003年8月上旬公開
シネスイッチ銀座ほかにて公開
制作年/制作国 2002年 アメリカ
上映時間 2:03
配給 アスミック・エースエンタテインメント
監督 ジュリー・テイモア
製作 サラ・グリーン
サルマ・ハエック
原作 ヘイデン・エレーラ『フリーダ・カーロ 生涯と芸術』
出演 サルマ・ハエック
アルフレッド・モリーナ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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