HERO

アジアの精鋭スター&スタッフが大結集!
中国をはじめアジア各国で爆発的人気を呼んだ本作は
良くも悪くも、壮大で華やかで印象的

  • 2003/07/28
  • イベント
  • シネマ
HERO© 2002 Elite Group Enterprises Inc.

本国・中国にて観客動員数・興収歴代第1位の記録をはじめ、韓国や台湾、香港やシンガポールなどのアジア各国でメガヒット。ベルリン国際映画祭で特別賞を受賞し、2003年の第75回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネート……と、話題騒然のアクション・ムービー。『紅いコーリャン』『初恋のきた道』の巨匠チャン・イーモウが監督、ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーと錚々たるアジアの人気俳優たちが出演し、旬の実力派スタッフが結集した注目作だ。

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舞台は紀元前200年、戦乱期の中国。のちの始皇帝となる秦王のもと、王の命を狙う3人の名だたる刺客すべてを倒した、と1人の男が名乗り出る。男は剣術の達人・無名(ウーミン/ジェット・リー)。その功績を称えられた男は、刺客を避けるため100歩以内に人を寄せ付けなかった王に30歩まで近づくことを許され、自らの武勇伝を語り始める。だが長槍の使い手(ドニー・イェン)、剣の使い手ら(トニー・レオン、マギー・チャン)との活劇談には、もうひとつの強い意志が秘められていた。

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とにかく大仕掛けなワイヤーアクションと壮大な大自然との融合、そしてもちろんジェット・リーの本格アクションはインパクト大。決闘シーンでは山間の静謐な湖面や黄金色の葉が舞う銀杏林、どこまでも続く広大な砂漠など、劇的かつ情緒あるアジア的景観を背景に、1対1の激しいバトルが斬新なアクションで展開。ただワイヤーアクションでは1シーン毎の印象は強いものの、滞空時間が長すぎて優雅というより間延びした感もしばしば。あえて敵役を作らず、戦時下で真理を掴もうとする人心の行方を描く、というイーモウ監督による“武侠”のコンセプトは素晴らしいが、ドラマとしては共感しにくい点も感じられた。また監督の持ち味である心の交流や人々の絆を繊細にとらえた表現が派手な映像や武術の影に隠れてしまっている点も残念。強力スタッフ陣は『少林サッカー』の武術監督トニー・チン・シウトン、『マトリックス』のCGチーム、ウォン・カーウァイ作品の撮影でおなじみのクリストファー・ドイル、衣装デザイナーのワダエミら。アクション初挑戦のイーモウ監督にとって、すべてが手探りだったであろう本作。強烈な個性を放つ面々と自らの主張とのバランスをとることは、容易なことではなかったに違いない。

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来日会見で「下降気味の中国映画界を盛り上げるため、精鋭を集めて興行的に成功する作品を作り、市場の活性化を図った」と語ったイーモウ監督。確かにカンフル剤としての役割は大いに果たした。彼が幼い頃から憧れてきたという“武侠”へのアプローチは始まったばかり。いずれまた彼なりのHEROを求めて、新たな“武侠”の世界を切り拓いてゆくのかもしれない。

作品データ

HERO
公開 2003年8月16日公開
丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
制作年/制作国 2003年 中国
上映時間 1:39
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 チャン・イーモウ
脚本 リー・フェン
チャン・イ−モウ
ワン・ビン
衣装デザイナー ワダエミ
作曲・指揮 タン・ドゥン
出演 ジェット・リー
トニー・レオン
マギー・チャン
チャン・ツィイー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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