名優がノンフィクションを深く真摯に表現
“画家”という業を背負った男の愛と人生
2001年の第73回アカデミー賞でエド・ハリスが主演男優賞にノミネート、マーシャ・ゲイ・ハーデンが助演女優賞を受賞した作品が、ようやく日本でも公開されることになった。この映画は「10年近く前から構想を練っていた」と語る名優エド・ハリスが、製作・主演・初監督を手がけた作品。アメリカ初のモダン・アート界のスター、故ジャクソン・ポロックの人生を記し、ピュリッツァー賞を受賞した伝記を映画化した、厚みのある人間ドラマだ。
ほとばしる才能とアルコール依存、情緒不安定を抱える新進画家ポロックは、彼の才能を信じて盛り立てる女性画家リーと出会い、結ばれる。それを機に彼は紆余曲折がありながらも、仕事と生活の双方を徐々に充実させてゆく。そして遂に、床にひいた画布に直接ペンキを滴らせるポーリング(注ぎ手法)、ドリッピング(滴り手法)と呼ばれる技法を独自に確立。各方面から賞賛と物議を浴び、モダン・アート界のスターとして栄光の10年間を迎える。しかしその後、時代が移り新たな才能が認められ始めた頃、彼はアルコールと愛人ルースに溺れて筆も取らず、妻リーとの仲は険悪になっていき……。
線の細い人格に“画家”という業を背負った男の半生は、華々しくも哀しい。最大の理解者である妻リーとは、芸術家同士だからこそ深く結びつき、嫌悪し合うことにもなった。リーもまた、献身的にポロックを支えることにより、自分が成しえることのない社会的成功や才能の開花を彼に依存していた部分もあったのかもしれない。2人の結びつきは恋や愛というよりも重くて因果な宿縁のようで、濃厚な甘みと苦みのコントラストを強く味わった。女の立場で観たためか、つらく感じた面も……。
劇的に脚色しすぎることもなく、ひとりの画家の人生を淡々と映し出しているため、中だるみや2時間の割には長さを感じさせるところもある。しかしやはり、製作側の真摯な姿勢がしっかりと伝わってくる良作だ。素晴らしいのは、ハリスが例の技法でポロックさながらに作品を描くシーン。「彼を心理的に理解するために」10年の間に絵や素描を手がけ、その技法までも体得したというから驚きだ。また本作はポロックをはじめ、さまざまな有名芸術家たちのレプリカ作品が多数登場するのも、見どころのひとつ。本作を鑑賞し、“芸術の秋”の始まりを迎えてみてはいかがだろう。
公開 | 2003年11月上旬公開 日比谷シャンテ シネほか全国順次ロードショー予定 |
---|---|
制作年/制作国 | 2000年 アメリカ |
上映時間 | 2:03 |
配給 | ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |
監督 | エド・ハリス |
出演 | エド・ハリス マーシャ・ゲイ・ハーデン エイミー・マデイガン |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。