国連の親善大使アンジェリーナ・ジョリーが
愛と救済に自らを捧げるヒロインを熱演
世界の現状の追体験をさせてくれる貴重な作品
何を映したいか、何を伝えたいのか。それがとてもはっきりしている明確な作品。エチオピア、カンボジア、チェチェン、イギリスと4ヵ国に及ぶロケを敢行した一大叙事詩。良識ある大人の男女のメロドラマ、というわかりやすい物語で観客の注目を惹きつけて、内戦や飢餓に苦しむ国々の厳しい実情と、現地で援助を続けるスタッフの活動を描いた映画である。
裕福な夫の妻としてはなやかに暮らしていたサラは、さまざまな土地で援助活動を続ける青年医師ニックの訴えに突き動かされ、援助資金を集めて単身エチオピアに赴く。が、そこには思いつきの善意や資金だけではどうすることもできない現地の深刻な惨状があった。
援助物資の輸送車を襲うゲリラ、酒とタバコでゲリラのメンバーを懐柔する援助スタッフ、体力のない者は見捨てるしか選択の余地がない医療現場……私たちは次々と映し出される現地の事情にサラと一緒に驚き、とまどい、実情を知ってゆく。ニュースで情報を聞くことと映画で追体験することでは、迫りくるリアリティがまったくちがう。本作をみていると、現地に足を踏み入れたかのような感覚を一瞬あじわう。また、この映画では感覚の追体験はあっても、キレイごとの押し付けはない。ヒロインのサラを地でいくかのようなアンジェリーナ・ジョリーの存在は物語に説得力を増し、「スターの点稼ぎ」などのうがった気持ちをもたずに素直に観ることができた。
ジョリーは先日、国連から親善大使としての難民救済活動を評価され、“第9回国連記者協会賞”を受賞。この受賞は俳優では史上初の快挙となった。ジョリーの難民救済活動は'00年のキャンプ訪問に始まり、'01年にはカンボジアの孤児を養子に。現在は救済活動資金として100万ドル(約1億1000万円)の寄付を毎年している、というから頭が下がる。彼女の行動は名声狙いということもなく、心のおもむくまま自分にできることをする、という感じ。そのすばらしい意思と行動力は、とてもまぶしい。
日本に暮らす、ごく一般的な都市生活者には、こうした映画に心から入り込むことは難しいかもしれない。私もいくら丁寧に話そうとしても、深部に触れることなどかなわないように思える。だからまずはこうした映画が作られて、私たちはいつでも観ることができる、ということを取り急ぎここにお伝えする。
公開 | 2003年12月20日 日比谷スカラ座1ほか全国東宝洋画系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2003年 アメリカ |
上映時間 | 2:07 |
配給 | 日本ヘラルド映画 |
監督 | マーティン・キャンベル |
音楽 | ジェームズ・ホーナー |
出演 | アンジェリーナ・ジョリー クライヴ・オーウェン テリー・ポロ ライナス・ローチ |
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