テイキング・ライブス

キレのいい字幕により、面白味が3割増
米仏の豪華キャストの共演で贈る
スカッと騙されるサスペンス・ムービー

  • 2004/07/05
  • イベント
  • シネマ
テイキング・ライブス© 2004 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved
© 2004 Village Roadshow Films (BVI) Limited

真実は一体どこに? 犯人は? そしてその狙いとは? アンジェリーナ・ジョリーとイーサン・ホーク、オリビエ・マルティネスとジャン=ユーグ・アングラードら、米仏の豪華キャストの顔合わせによるサスペンス・ムービー。 気候も気分も落ち着きを取り戻す、夏の終わり〜秋口に向けた、大人のための作品である。

カナダで起こった断続的な猟奇殺人を解決すべく、地元警察の要請により現場へと赴いたFBIの特別捜査官イリアナ。優秀なプロファイラーである彼女は、唯一の目撃者であるコスタの協力を受け、緻密な調査を続けるうちに、その殺人が異様な目的にあることを突き止める。犯人は殺人をして被害者になりすましては、飽きるとまた次の殺人を犯して別の人格へとシフトする。“テイキング・ライブス(人生を乗っ取る)”を20年間続けてきた、というのだ。そして、犯人は追い詰められ……。

テイキング・ライブス

効果音やBGMで過剰に演出したりせず、真実ににじり寄っていく感覚や、何をしでかすかわからない犯人の異常な思考にハラハラドキドキ。サスペンス好きの方には少々物足りないかもしれないが、個人的には「ヤラれた!」と気持ちよく騙される感覚が楽しかった。それにしても、脇にまであれだけいい俳優を揃えられると、俳優からの犯人予測は難しくなる。映画をいろいろ観ていると、「メインキャラの中ではあの人が性格俳優だから、犯人はあいつかな」みたいな、現実的な予測をしてしまうこともある。でも今回は、力ある俳優陣それぞれのいい演技に引き込まれ、「これもあり得る。いや、こっちも……」などと考えているうちに場面が展開。いい意味で気が散ったことが、面白かった。

テイキング・ライブス

また本作では、洋画の重要な存在である“字幕”のセンスにグッときた。事件ものだと、深刻な中にも軽妙なやりとりがあったり、下品なスラングや感情的な短いフレーズがたくさんでてきたりする。だからこそ字幕次第で、世界観の広がりや面白味はがぜん変わってくる。特にラスト近いシーンの「F*ck you」の訳にはシビれた。あの時のあの一言は、ただの悪態なんかじゃない。「まさに!」と、にんまり笑ってひざを打った。本作の字幕を手がけたのは、『マトリックス レボリューションズ』『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』などなど、さまざまなヒット作で知られる林完治氏。シリアスとジョークのメリハリが心地よく効いている感覚が『ミスティック・リバー』に似ている、と思い調べてみると、林氏は『ミスティック〜』を手がけた字幕翻訳家・菊地浩司氏に師事していたとのこと。深く納得したとともに、「良い翻訳技術が受け継がれるって、素晴らしい」と、いち観客として嬉しくなった。

テイキング・ライブス

充実のキャストに良い字幕と、日本の観客を惹きつける仕上がりの本作。キャストから台詞から映像から、気持ちよく騙されてみては?

作品データ

テイキング・ライブス
公開 2004年夏公開
渋谷東急ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2004年 アメリカ
上映時間 1:43
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 D.J.カルーソー
出演 アンジェリーナ・ジョリー
イーサン・ホーク
オリビエ・マルティネス
ジャン=ユーグ・アングラード
キーファー・サザーランド
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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