匠のもと、アジアの精鋭メンバーが大集結
伝統的な衣裳や迫力のワイヤーアクションなど
アジアン・パワーをぎっしりと詰め込んだ意欲作
中国の名匠チャン・イーモウ監督が『HERO』に続き、武侠アクションを再び製作。キャストに人気俳優の金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウ、スタッフには『HERO』を手がけたアクション監督のトニー・チン・シウトンや衣装のワダエミなど、一流どころが参加。アジアを代表するメンバーが顔を揃えた。この作品は、本国の中国にて公開から約10日間で1億1千万元(約15億4000万円)の興行収入をマークし、カンヌ映画祭には特別招待作品として上映され、会場で絶賛されたとのこと。その魅力は、どこにあるのだろうか。
政治の腐敗していく王朝に対し、反政府勢力が台頭していた唐の時代。国に仕える捕史である金(ジン/金城)と劉(リウ/ラウ)は、遊郭一の踊り子である小妹(シャオメイ/ツイィー)が、強大な反政府組織の重要メンバーであるという情報を得る。小妹に接触し、確かな手ごたえを得た金と劉は彼女を連行。小妹を使い、反政府組織のアジトを一気に仕留めるべく、一案を企てる。
武侠アクションに始まり、ラブストーリーに終わる。謀略と背中合わせの愛の行方が、物語の主体となっている。ストーリーだけで考えると、腑に落ちないところや前振りだけでオチがないように思える部分もしばしばあり、やや消化不良に思えたものの、娯楽作と考えればそれはそれで納得できる。俳優たちの魅力や派手なアクション、粋を凝らした衣装やセットなどの雰囲気を楽しめばいいのだ。
一番の見どころは、伝統的な衣裳を纏ったツイィー演じる小妹が、3メートルもの長い袖を振りながら舞い踊るシーン。フロアをぐるりと取り囲む太鼓を袖で打ちながら舞う姿は、勇ましくも麗しい。11歳から6年間、舞踏学校で中国の民族舞踏を学んでいた舞踏のプロでもあるツイィーが2ヶ月の特訓を積み、アクション監督のシウトンが演出しただけあって、美しさとスリルの双方をあわせもつ惚れ惚れするシーンだ。また、金城武はどこまでも感覚的で色っぽく、チャン・ツイィーは可憐で一本気、アンディ・ラウは実直かつ剛健で頼もしい……と、俳優それぞれの持ち味が、余すことなく生かされている。
こうした作品を作ることについて、中国の映画産業をさらに盛り上げていきたい、というイーモウ監督の思想はわかるし、『HERO』『LOVERS』は本国で興行的に大成功を収めている。でもどことなく、2001年に第73回アカデミー賞にて4部門を受賞した『グリーン・デスティニー』を意識して、それに似せることで世界にアピールしているようにも感じられ、少しさみしい。既存の作品の2番煎じでは、ある程度はウケたところで、世界で観継がれる作品として残ることは難しい。それにイーモウ監督は本来、派手なセットやアクションに頼らずとも、人の心や自然の風景などをとても繊細に温かく表現できる、人間味あふれる作品づくりに定評がある。例えば『初恋のきた道』では、人情や純情を直球で表し、わかりやすいドラマとして上手に描いていた。イーモウ監督はこれからも、世界市場を目指した娯楽作を製作していくだろう。できればそれと平行して、監督ならではの心温まる人情モノも観たい、と思っているのは、きっと私だけではないはずだ。
公開 | 丸の内ルーブルほか 全国松竹・東急系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 中国 |
上映時間 | 2:00 |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
監督 | チャン・イーモウ |
原案・脚本・製作 | チャン・イーモウほか |
アクション監督 | トニー・チン・シウトン |
衣裳 | ワダエミ |
出演 | 金城武 アンディ・ラウ チャン・ツィイー ソン・タンタン |
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