ターンレフト ターンライト

台湾の人気絵本作家ジミーの作品を映画化
金城武とジジ・リョンがピュアな演技で魅せる
ハリウッド製、アジア印のラブ・コメディ!

  • 2004/08/30
  • イベント
  • シネマ
ターンレフト ターンライト© 2004 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

金城武とジジ・リョン、アジアの人気俳優の共演によるラブ・コメディ。原作は本国台湾でブレイク後、アメリカやイギリス、韓国や日本など13ヵ国で翻訳出版され人気を博している絵本作家ジミー・リャオの作品で、1999年に発表された絵本『向左走・向右走』。“繊細で叙情的”と評価される原作に、コミカルな部分がプラスされ、ポップな仕上がりに。ラストはもう少し続きを描いてほしかったし、ちょっとチープでシンプルすぎるところもあるものの、「それも味かな」と思わせる、かわいらしい物語である。

同じアパートの隣同士に住むヴァイオリニストのジョンと翻訳家のイブ。2人は別館として壁に隔たれている上、彼は右に、彼女は左に曲がる癖があり、近くにいながらまったく出会うことなく暮らしていた。しかしある日、近所の公園でひょんなことから知り合った2人は、ある思い出を共有していることに気づき、すっかり打ち解ける。再会を約束し、電話番号を交換して別れたものの、急に降りだした雨のせいでメモはすっかりにじみ、電話番号は2人とも読めなくなっていた……。

ターンレフト ターンライト

ジョンもイブも携帯電話世代のはずなのに、彼らは家の電話しかもっていないレトロなタイプ。それらしい番号をかけまくって間違い電話をしまくり、それでも「相手からかかってくるかもしれない」と思って電話から離れられない……、なんてひと昔もふた昔も前のエピソードが平気で展開する。近くにいながらすれ違い続ける2人にイライラやきもきしながら、今か今かと、ひたすら再会を待つのである。観ている途中で思わず「もういいっちゅうねん!」と心の中でツッコミを入れてしまうほどに。……純愛とは、かくもストレスなものなのか。

ターンレフト ターンライト

本作では、新北投公園や台北市政府前広場、台北興安街など、台湾の有名スポットが登場。ハリウッドでよく作られる、NYやロスを舞台に名所や人気スポットを取り入れた映画の台湾版、といったところだ。実は本作の製作は、ハリウッドの超メジャースタジオ、ワーナー・ブラザースが手がけた第1回中国語作品とのこと(表記は香港映画)。でもこうしたミーハーな雰囲気がややある以外は、特にハリウッドくささはなく、資料を読むまで巨大スタジオの製作とは気づかなかった。関係者全員がアジア映画らしさを大切にしているのは、とてもいいことだと思う。

ターンレフト ターンライト

原作者のジミー・リャオは、台北在住の絵本作家。広告会社のアートディレクターだった彼は急性骨髄性白血病を発病し、死と向き合ったことをきっかけに、1998年から絵本の創作を開始。本作の原作『向左走・向右走(邦題/君のいる場所)』をはじめ、1999年に発表された『聴幾米歌』『月亮忘記了(邦題/君といたとき、いないとき)』の3冊は“3部作”と呼ばれ、このブレイクが台湾に絵本ブームを巻き起こしたのだそう。ジミーの絵本は、とてもカラフルでかわいらしい画風でありながら、広い空間にぽつんといる人物の構図や物語の内容など、哀しさや虚しさが常に主人公たちに寄り添っている。彼らがときに別れ、ときに見つけることに、私たちはリアルな共感を覚えるのだろう。ジミーは語る。「夢見ることは寂しい人の生きるための手段なんだ」。

金城武へのミーハー気分で観た本作で、ジミーを知った。今秋は彼の絵本を読んで、その“叙情的な世界”に浸ってみようと思う。

作品データ

ターンレフト ターンライト
公開 2004年10月下旬公開
シネマミラノほかにてロードショー
制作年/制作国 2004年 香港
上映時間 1:39
配給 ワーナー・ブラザース映画
原作 ジミー・リャオ
監督・製作 ジョニー・トー
ワイ・カーファイ
脚本 ワイ・カーファイ、ほか
出演 金城武
ジジ・リョン
エドマンド・チャン
テリー・クワン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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