今回のトムはトレードマークの笑顔を封印!
冷酷な殺し屋v.s.良心のタクシードライバー
ロスの一夜の悪夢を描くハードボイルドスリラー
笑顔のまぶしいヒーロー型ハリウッドスター、トム・クルーズが冷徹な殺し屋に挑んだ話題作。派手なアクション、激しくせめぎあう心理的な駆け引き、裏社会に君臨する組織の陰謀など、スリリングな展開で観る者を引き込むハードボイルド・サスペンス。『ヒート』『インサイダー』などで知られるマイケル・マン監督が、ロサンゼルスのある一夜を舞台に描いた物語である。
平凡なタクシードライバーとして勤続12年のマックスは、いつものように仕事をこなしている。夜になり、金払いのいい白髪の紳士ヴィンセントを乗せた彼は、「一晩で5ヶ所を回ってほしい」という依頼を承諾。が、実はヴィンセントは、一晩で5人の殺害を請け負った殺し屋だった……。
わかりやすい見どころはやはり、トムのハードなアクションと本格的な銃さばき。今回は元英国空軍特殊部隊所属にして、マーシャル・アーツと武器の専門家グールドの指導のもと、数々のトレーニングを積んだのだそう。これまでの映画でもトムは持ち前の高い運動能力でアクションをカッコよく決めていたが、今回はいつもに増して切れ味が鋭い。一打必殺、とでもいうか、人を確実に倒していくための実践的な動きと獰猛な殺気には、鬼気迫るものがあった。今回の訓練にて、実弾を込めた練習を警察の射撃場で初めて受けたトムは、銃の扱いや撃つ時の感触を会得し、銃の扱いに自信をもって臨んだとのこと。そのせいか、銃撃戦でも格好だけじゃない、重みと迫力がしっかりと伝わってきた。
また、殺しを遂行しようとする冷酷なヴィンセントと殺人を阻止したいと思っている良心のマックス、2人の激しい心理戦や張りつめた緊張感がとてもよく描かれている。時間がたつにつれ、2人の思いが微妙に変化していく様子にはとても説得力があり、重厚な人間ドラマとしても見ごたえあり。当初、マックス役はアダム・サンドラーも候補にあったらしいが、今回のジェイミー・フォックスのほうが間違いなく正解。ゆきすぎにならず、人間的な喜怒哀楽、苦悩や葛藤を上手に表現していた。
このダークな物語が展開するのは、ロスの夜。リアルな夜の街並をとらえるため、撮影方法にこだわったマン監督は撮影監督とともに、特殊なデジタル・カメラを改良してほぼ全編に使用。これだけ撮影にデジタルを採用するのは、メジャー・スタジオの映画としては異例であるものの、通常のカメラでは不可能といわれている“人が裸眼で夜間にとらえる風景”などを画面にとらえることに成功。そのため観ていると、不穏なロスの夜にスッと入り込み、彼らの傍で見ているかのような臨場感が味わえる。
本作の全米興行収入は公開4週間で8000万ドル超と、トムの主演作としてはふるわなかった、ともいわれている。彼のファンにとっては、笑顔のヒーローでなければトムじゃない、ということなのだろうか。しかしマン監督にとって本作は、『ラスト・オブ・モヒカン』を超える過去最大のヒットになったとのこと。現在、マン監督が製作準備を開始した第2次世界大戦中の人間ドラマを描く映画「ザ・フュー」では、再びトムが主演予定。次回のトム×マン監督の作品は、ファンや製作スタジオの期待する結果となるか。こちらも楽しみである。
公開 | 2004年秋公開 日劇1ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 2:00 |
配給 | UIP映画 |
原題 | 原題 |
監督・製作 | マイケル・マン |
脚本 | スチュアート・ビューティー |
出演 | トム・クルーズ ジェイミー・フォックス ジェイダ・ピンケット=スミス |
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