ハウルの動く城 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ハウルの動く城

© 2004 二馬力・TGNDDDT
3年ぶりとなる宮崎駿監督の最新作
魔法使いの美青年と90歳にされた少女が出会い
戦火のくすぶる中、ふたりの暮らしが始まった――



 2003年のアカデミー賞長編アニメーション賞に輝いた『千と千尋の神隠し』から3年、日本が世界に誇る作家・宮崎駿の最新作が遂に完成した。原作はイギリスの児童文学作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズが1986年に出版した『魔法使いハウルと火の悪魔』。何はともあれ、11月20日の公開を前にようやく開示され始めた情報とともに本作をご紹介する。


 とある町の帽子屋の娘ソフィーは、地味で真面目な18歳。彼女はある日、美男子の魔法使いハウルと出会い、束の間の楽しいひとときを過ごす。が、その夜、ソフィーのもとへハウルの知り合いらしき“荒地の魔女”が訪れ、ソフィーは強力な魔法によって90歳のお婆さんの姿にされてしまう。そして対立する王国間では、戦争が始まろうとしていた――。

ハウルの動く城

 印象に残ったキーワードは、ファンタジー、ヒューマン、ラブロマンス。まず意外に感じられたのは、思いがけず、ラブロマンスがはっきりと描かれていたこと。運命的な出会いを果たした少年少女の甘酸っぱいやりとり、という漫画的なことより、もう少し突っ込んだ人間同士の感情のやりとりや生活臭などが差し込まれていたことが、かえって心にじーんと染みた。現実では、愛はキレイごとだけじゃすまないし、愛を続けていくことは日々の生活を続けていくことそのもの。体力使うし、億劫だったり頭にきたりするときもあるけれど、簡単にあきらめたりしないで絆を育んでいく。それがエッセンスとして、子供にも大人にも世代を問わず伝わるように取り入れられていたところがよかった。
ビフォア・サンセット
 カッコつけたがりの見た目命主義や、美少年を執念深く追う老女など、ファンタジーの世界にありながら、エピソードや登場人物の個性に俗っぽさがあり、それが笑いや共感を呼び起こす。原作者のジョーンズ氏は、現実にあったことをヒントに物語を書くそうなので、そのためかもしれない。また、ソフィーがおばあちゃんをいたわって、眠る前に「トイレは大丈夫?」とかける言葉などはとてもリアル。世代を超えた共生が求められている社会に対し、もうすぐ64歳を迎える宮崎駿監督の意識もあわせてうかがえる。


 声優陣は、ソフィーに倍賞千恵子、荒地の魔女に美輪明宏の両ベテランに、ハウルは木村拓哉。雰囲気ではなく声の表現力が求められる作品に木村拓哉はどうか……という感想はふんぷんするだろうし、否定もできない。でもベテランと個性派のキャストたち、宮崎アニメの素晴らしい映像世界と久石譲の豊かなサウンドによって、よく守り立てられていた。火の悪魔カルシファーに我修院達也、ハウルの弟子マルクルに子役の神木隆之介と、脇役陣の健闘も光っている。


 結末に至るには、「それはどうしてこうなったの?」とツッコミたくなった点もいくつかある。宮崎駿作品への期待もあり、伏線〜展開〜完結でスッキリするのが好きな身としては少々物足りなさも感じたが、それも狙いどおりとのこと。製作サイドがあえて起承転結以外の要素で見せるべく、そのようにしたようだ。


 今回は宣伝や露出をおさえているという本作。映画館での本予告編はすでにスタートしているので、他の作品を観るときに目にする人もいるだろう。映画は観た人のもの、という考えには心から強く共感。ここでは個人的な視点でさわりを紹介したが、やはりご自分の目と感覚をもって、「まずはスクリーンで」!
『ハウルの動く城』 2004年日本映画
データ
2004年11月更新

2005年11月20日公開
全国東宝洋画系にてロードショー

■2004年 日本映画
■上映時間1:59
■監督・脚本/宮崎駿
■プロデューサー/鈴木敏夫
■音楽/久石譲
■原作/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
■声の出演/倍賞千恵子
木村拓哉
美輪明宏
我修院達也
神木隆之介



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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