俳優にスタッフ、オスカー受賞者が揃い踏み
国連を舞台に繰り広げられる陰謀を追う
硬派な社会派サスペンス・ムービー
ハリウッドのトップ俳優ニコール・キッドマンとショーン・ペンが初共演、シドニー・ポラックが監督。俳優から監督、脚本、製作まで、オスカー受賞者たちが名を連ねた硬派な社会派サスペンス。国連本部を舞台に、某国の大統領暗殺計画を巡る顛末を描いたシリアスなドラマである。
国連通訳シルヴィアは、自らの故郷であるアフリカのマトボ共和国の大統領暗殺計画を偶然耳にする。その直後から彼女は何者かにつけ狙われ、シークレット・サービス(SS)の警護を受けるが、その捜査官ケラーから疑惑の目を向けられる。
シルヴィアは被害者なのか容疑者なのか。水面下でうごめく暗殺計画の黒幕は――? ほぼ全編にストイックな雰囲気と張り詰めた緊張感が漂うこの物語。抑制された演技、必要最小限に保たれたBGMや効果音など、派手さはない。意味ありげな状況やアイテムなど、其処此処に張られた伏線がじわじわとつながってくる、昔ながらの推理モノとしての展開が楽しめるだろう。
本作にはキャストもスタッフも、アカデミー賞受賞者が揃い踏み。キッドマンは2003年に『めぐりあう時間たち』でアカデミー主演女優賞、ペンは2004年に『ミスティック・リバー』でアカデミー主演男優賞を獲得。そしてポラック監督は1985年に『愛と哀しみの果て』で作品賞と監督賞を含む7部門を、脚本のスティーヴン・ザイリアンは1993年に『シンドラーのリスト』で脚本賞を、製作総指揮のアンソニー・ミンゲラは原作小説を自ら脚色・監督した『イングリッシュ・ペイシェント』で1996年に作品賞や監督賞を含む9部門を受賞している。とはいえ本作は、俳優たちの演技や凝りに凝った演出などでみせる愛と感動の大作ではなく、とても淡々とした物語。観客を感動させるよりなにより、ほかの意図があるのではないか、と思わせるほど。
安全保障理事会の常任理事国入りを目指すドイツ、インド、ブラジル、そして日本のこと、安保理そのものの改革など、おりしも国連が新たな局面にさしかかっている今。まともにいったら叶うはずもない大国の権威に対抗する手段のひとつには、大衆文化やマスコミが牽引する世論の高まりがある。社会派で知られるポラック監督のこと、本作をきっかけに国際情勢に疎い層を含む幅広い世代の人々の注目を国連の動向に集める意図もあったのかもしれない。
ちなみにこの映画では史上初、本物の国際連合本部の建物内でロケが行われている。ポラック監督がコネを駆使してアナン事務総長と面談し、直接申し入れて許可を得たのだそう。またドキュメンタリー風にならないよう、国名は実名にせず、架空の国マトボを設定。言葉は言語学者の協力により、スワヒリ語とショナ語に似た言語“クー” が作り出されたとのことだ。
国際的な社会情勢をしっかりと理解していることが前提で展開される本作。個人的にはついていくのが精一杯で、試写を観ながら自分の勉強不足を反省した。社会派の方には、些細な台詞や設定の背景までも関心をそそることだろうこの作品。政治関連はあまり得意ではないけれど名優の初共演が観たい、という方は、本作を観る前に国連の基本内容と現状、アフリカ諸国の社会情勢とその問題などについておさらいしていくことをおすすめする。
公開 | 2005年5月21日公開 有楽座ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 アメリカ |
上映時間 | 2:09 |
配給 | UIP映画 |
監督 | シドニー・ポラック |
脚本 | チャールズ・ランドルフ スコット・フランク スティーヴン・ザイリアン |
出演 | ニコール・キッドマン ショーン・ペン キャサリン・キーナー ジェスパー・クリステンセン |
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