すべて失ったと思うときこそ本物を見出すとき。
アメリカン・カントリーの人々と生活と音楽が導く
C・クロウ監督、オーランド主演のヒューマン・ドラマ
『ロード・オブ・ザ・リング』で弓の名手レゴラスとしてブレイクした美形の新進俳優オーランド・ブルームが、本格的な現代劇に主演する話題作。脚本・監督・製作は『ザ・エージェント』『あの頃、ペニー・レインと』のキャメロン・クロウ、製作にはトム・クルーズが名を連ねる。ひどい挫折によって人生を見失った青年が、新たなスタートを受け入れ、見出すまでの心の旅。カントリーミュージックとともに味わい深く染みていく、ハートウォームなヒューマン・ドラマである。
8年間、私生活を犠牲にしてまで新製品のプロジェクトに心血を注いできたシューズデザイナーのドリュー。が、社運を賭して発表した自信作は大コケし、会社は約10億ドル(1000億円)の損失に。デザイナーのドリューは成功者から一転、ビジネス誌から失敗作の制作者としてインタビューを受け、会社からは解雇される始末。すべてに絶望したドリューが自殺しようとしたそのとき、携帯が執拗に鳴る。それは、父の死を知らせる姉からの電話だった。
青年の挫折と再スタートを語る人間ドラマでありながら、『アメリ』さながらのかわいらしい恋愛も描かれる美味しいとこどりの感動作。個人的には、ただのハンサムさんとしてではなく、俳優としてのブルームに初めて好感をもった。アーティストらしい繊細さやグズグズと思い悩む姿は、ブルームの雰囲気にぴったり。愛すべきモラトリアム青年を等身大で演じている。また相手役のキルスティン・ダンストは、味のあるキュートなフライト・アテンダントのクレア役をみずみずしく好演。ドリューの母親役にスーザン・サランドンといった大物俳優を配し、作品に適度な落ち着きを与えている。
親戚の家で急逝した父の遺体を引き取りに、洗練された無機質な都市から、ゆったりとした緑豊かな田舎町エリザベスタウンへ。アメリカ南部では、親類縁者からご近所まで皆が顔見知りでおせっかい。とまどいながらもドリューがその温かな騒々しさを心地よく感じるようになっていく様は、都市生活者はしみじみと共感できるところだろう。そして何より、新しい恋。最後にドリューは、クレアに強く惹かれる心と、「この世界から落伍者である自分を消す」という暗い決意、父を亡くした哀しみ、すべての思いと向き合って、父の遺灰とともに車で一人旅に出る。このロードムービー風のシーンがとてもいい。流れていく音楽と景色の中で父と語らい、葛藤に身悶えしながらもドリューは少しずつ心を立て直していくのだ。
13歳で音楽評論からキャリアをスタートさせた、才気あふれるキャメロン・クロウ。彼の映画はこだわりの選曲で知られ、本作でも音楽監督を務めた妻のナンシー・ウィルソンとともに選んだ名曲の数々が流れる。なかでもギターやピアノなど生楽器の音が肌に心地よいカントリーミュージックが印象深く、ブルースやフォークなどのルーツ音楽を中心とした有機的なサウンドが感動を深める。
すべての人生に対する慈愛のメッセージが全編から伝わってくる本作。カントリーライフに包まれて、ゆっくりと満ちてゆく人の心。仕事の挫折、父の死、そして新しい恋。多くの人が経験する転換期の成り行きを鮮やかに繊細に映し出した物語。爽やかに涙する感動作である。
公開 | 2005年11月12日公開 日劇1ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 アメリカ |
上映時間 | 2:03 |
配給 | UIP映画 |
脚本・監督・製作 | キャメロン・クロウ |
製作 | ポーラ・ワグナー トム・クルーズ アンディ・フィッシャー |
音楽 | ナンシー・ウィルソン |
出演 | オーランド・ブルーム キルスティン・ダンスト スーザン・サランドン アレック・ボールドウィン ジェシカ・ビール |
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