ちょっとシニカルでけっこうロマンティック
頑固な2人の一筋縄ではいかない恋の行方は?
情熱や意地を絶妙なテンポで描くハートフルな社交喜劇
今も昔も変わらない、女たちの幸せ願望や男たちの迷い、そして男女の誤解や行き違い。1813年に発表されたイギリスの古典文学、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』の映画化である。18世紀末のイギリスを舞台に、大富豪の青年ダーシーと知的で気の強い娘エリザベスとの成り行きをテンポ良く描く。ちょっとシニカルでロマンティック、シェイクスピアやオスカー・ワイルドを髣髴とさせる、見ごたえのある社交喜劇である。
田舎町で両親と仲良く暮らす、ベネット一家の5人姉妹。ある日の舞踏会で姉妹は、町に引っ越してきた快活な富豪ビングリーと、その親友であるお堅い大富豪ダーシーと知り合う。美人の長女ジェーンはビングリーに見初められ、知的な次女エリザベスはダーシーから視線を受けるものの、ダーシーは親友との会話で彼女を否定。その会話をたまたま聞いたエリザベスは、ダーシーの態度に反感を抱く。
富豪の青年が引っ越してくれば「彼って独身!?」と浮き足立ち、青年将校たちが町にやってくれば「将校さーん」と黄色い声をあげる。ほぼ200年前であっても、娘たちが玉の輿や素敵な恋を夢見る様子は普遍的でほほえましい。ましてや当時は男女間に地位の差があり、女性には財産の相続権もなく、女性が経済的に自立することは難しい時代。結婚が女性の人生を大きく左右するため、母親が娘の婿探しに躍起になるのも納得だ。身分や家柄の違い、家族や周囲の思惑、そして男のプライドと女の偏見……いろいろな要素が入り乱れ、さまざまな恋路が錯綜し、物語はコミカルにハートウォームに展開していく。
本作の監督は、これが長編デビューとなる34歳の気鋭ジョー・ライト。イギリスのミニTVシリーズ『チャールズ2世』を手がけ、英国映画テレビ芸術協会(BAFTA)賞を受賞した人物だ。本作では物語の魅力を引き出し、個性的な人物像をくっきりと際立たせ、笑いとシリアスを上品に歯切れよくまとめ上げ、初の長編とは思えないほどの実力を披露。ライト監督の今後の活動も楽しみだ。
エリザベスを演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でブレイクしたキーラ・ナイトレイ。主張のない女性が主流だった当時にありながら、どんな尊大な相手にもひるまずに意思を伝える先進的な女性を痛快に演じている。イギリスの舞台俳優として知られるマシュー・マクファディンは、生真面目なダーシーの雰囲気にぴったり。印象的だったのは、コミカルで憎めない母役のブレンダ・ブレッシンと、娘たちを思う父役の個性派俳優ドナルド・サザーランド。脇を固める名優たちにより、あたたかい家族愛もよく表現されている。また、16世紀半ばに建てられたイギリス屈指の壮麗なマナーハウス“チャッツワース”などで撮影されており、伝統ある瀟洒な建造物も見どころのひとつだ。
わかりやすいだけが恋じゃない。認めたくないと思いながらも、相手の存在がいつのまにか大きくなっていくこともある。頑固な2人が恋の始まりに行き着くまでの紆余曲折を丁寧に描いた本作。ただ甘いだけじゃなく、笑いや皮肉や社会背景などの現実をピリッと効かせたロマンティックな恋愛ドラマである。
公開 | 2005年1月14日公開 有楽座ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 イギリス |
上映時間 | 2:07 |
配給 | UIP映画 |
監督 | ジョー・ライト |
脚本 | デボラ・モガー |
出演 | キーラ・ナイトレイ マシュー・マクファディン ロザムンド・パイク ドナルド・サザーランド ブレンダ・ブレッシン サイモン・ウッズ ジュディ・デンチ |
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