スタンドアップ

本物の感動と高揚がここにある!
3人のオスカー女優と気鋭の女流監督が紡ぐ
事実を基にした重厚なヒューマンドラマ

  • 2006/01/06
  • イベント
  • シネマ
スタンドアップ© 2005 Warner Bros.Entertainment Inc.

たった16年前。そのときに、こんな前時代的な悪行が横行していたなんて! 実際にあった“アメリカ初の集団セクハラ訴訟”を基に、男と女、親と子、現在と過去……複雑な人間関係や地域社会におけるさまざまな対立と和解を丁寧に描いた物語。キャストはシャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、シシー・スペイセクというオスカー女優3人をはじめとする演技派ぞろい。監督は2003年の『クジラの島の少女』が高く評価された新進のニキ・カーロ。俳優たちの確かな演技と監督の力量によって綴られる、とても厚みのある良質な感動作である。

1989年アメリカ北部、ミネソタ州。鉱山で初の女性労働者が雇用され、その数が増え始めた頃。暴力夫から逃れ、2人の子供を自力で養う決意をしたシングルマザーのジョージーは、給料のいい鉱山に就職。しかし現場では景気が悪い中、“男の職場”である鉱山に入り、高給をとる女性たちは一部の男性労働者からひどい迫害を受ける、という現実があった。自立のためにこの仕事を死守したいジョージーは、誰もが見ないふりをしてきた女性に対する労働環境のひどさ、エスカレートしていく嫌がらせに正面から立ち向かっていく。

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中盤までは怒り心頭、はらわたどころか身体中が煮えくり返った! そう憤慨するほど、最悪のセクシャルハラスメントの実態、女性たちが鉱山で受けた性的迫害が赤裸々に描かれる。そして物語が法廷の場に移ると、ジョージーの秘められた過去やそこにつながる家族とのわだかまりが露呈。そしてラスト、状況は一気に動き出し、すべての動機や原因が明かされていく。ぎゅーっと押し込めて、ふわっと開放する見せ方が非常にうまい。クライマックスに向けて一気に高揚していくあの感覚は鳥肌モノだ。これはやっぱり、本作がハリウッドの初仕事である新進の女流監督ニキ・カーロの手腕だろう。登場人物ひとりひとりの性格や背景がしっかりと描かれ、善悪で割り切れるはずもないリアルな人間心理、その弱さや強さ、人と人との交流からときにじわじわと、ときに爆発的に生じる大きなうねりが見事に表現されている。カーロ監督の次回作が今からたまらなく楽しみだ。

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さて、本作はアカデミー賞主演女優賞や助演女優賞のノミネートは必至だが、こうした声にジョージー役のセロンはとても冷静に語っている。「そういってもらえるのは嬉しいけれど、こんな早い時期にそんなことを考えるなんてクレイジーよ。私はオスカー欲しさにこの作品に出演したわけではないのだから」。

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強い信念や想像を超える底力、どんな人間でも受け入れざるを得ない真実の瞬間。ここでは書ききれないほど、掛け値なしの感動が詰まっている本作。今年は中盤までの地に落ちる重さに臆さず、本物の感動を体感することからスタートしてみてはいかがだろう。

作品データ

スタンドアップ
公開 2006年1月14日公開
サロンパス ルーブル丸の内ほかにてロードショー
制作年/制作国 2005年 アメリカ
上映時間 2:04
配給 ワーナーブラザース映画
監督 ニキ・カーロ
脚本 マイケル・サイツマン
原作 クララ・ビンガーム、ローラ・リーディー・ガンスラー共著『CLASS ACTION: THE LANDMARK CASE THAT CHANGED SEXUAL HARASSMENT LAW』より着想
出演 シャーリーズ・セロン
フランシス・マクドーマンド
ショーン・ビーン
ウディ・ハレルソン
リチャード・ジェンキンズ
ジェレミー・レナー
シシー・スペイセク
ミシェル・モナハン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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