NYの公立小学校がダンスに燃える!
社交ダンス・プログラムを受ける子供たちの
ぬくもりある青春ドキュメンタリー・フィルム
「ダンスって楽しい!」というシンプルな想いが伝わってくるドキュメンタリー・フィルム。社交ダンス・プログラムを導入しているNYの3つの公立小学校をフィーチャーし、子供たちがダンスに取り組む姿を追う。ただのかわいいエピソード集にとどまらず、社会的な視点からダンス・プログラムの意義を紹介する、ほどよい見ごたえのある仕上がり。都会に暮らす早熟な子供たちのちょっとした青春ドラマでもある、爽やかな作品である。
1994年に情操教育の一環として始まり、現在60以上のNYの公立小学校で導入されている社交ダンス・プログラム。世慣れた生徒たちが通うトライベッカの第150校、イタリアやアジアなど多民族の移民の子供が集まるブルックリン、ベンソンハーストの第112校、ドミニカからの移民が多く、97%が貧困家庭というワシントンハイツの第115校。各校の生徒たちは、10週間のプログラム終了後にNY市が主催する社交ダンス・コンテストの優勝を目指し、本気でレッスンを開始する。
ダンス、将来の夢、異性、社会について。子供たちの“語り”はみな個性的でユーモラス。ほほえましいことが大半だが、妙に現実的でしっかりしている言葉からは、労働者階級や移民として裕福とはいえない生活から、幼いながらも受け止めている世知辛い現実、世の不公平や不条理などの背景が感じられてせつない。
社交ダンス・プログラムで非行の道から立ち直った子供も多いのだそう。まず、踊るときの礼儀やマナーを学ぶことで品位が身につく。あとは“コンテスト優勝”という目的を与え、子供たちの記憶と感覚の双方に“努力すれば勝てる”ことを実地で刷り込むのだ。手のつけられない反抗娘も犯罪者になりかけた少年も、正道に戻った姿がスクリーンに凛々しく映し出される。周囲に導く人間がいない少年たちの環境について、こう語られている。「兄や父親のような年上の男性から教わって、勝つことを学ぶのは大事なことだ」。
純粋なドキュメンタリーのため主役は生徒たちであり、脇を固めるのはダンス教師や学校関係者などの一般人。それでもなかなか魅せてくれるのは、子供たちや周囲の味のある言葉や表情を細やかにとらえ、巧く編集したスタッフの尽力の賜物だろう。監督はインディペンデント映画製作を中心に活動し、本作が初の長編となるキューバ出身のマリリン・アグレロ。脚本はTVシリーズや書籍などを手がけ、ジャーナリストであり抽象表現派の画家でもあるエイミー・スウェル。2人の女性らしいセンスや愛情が、作品の個性としてよく生かされている。
メレンゲ、ルンバ、スウィング、タンゴなど、各ダンス向けの超ポピュラーな王道サウンドも楽しい本作。観るだけで、子供たちと一緒にバーチャルなダンス入門が体験できる……かもしれない!
公開 | 2006年3月11日公開 VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 アメリカ |
上映時間 | 1:46 |
配給 | コムストック |
監督・製作 | マリリン・アグレロ |
製作・脚本 | エイミー・スウェル |
出演 | ロドニー・ロペス ヨマイラ・レイノソ アレックス・シャソヴ アリソン・シアニク ケルビン エルサメリー サイラス エマ マイケル |
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