ベッソン監督6年ぶり、10作目のオリジナル作品
謎の美女と三流詐欺師の出会いから始まる
パリで1千万人を動員したストーリーとは?
「観ていて幸せを感じる映画、それが撮りたかった」。リュック・ベッソン監督が6年ぶりにオリジナルの脚本で製作した最新作。さえない詐欺師と謎の美女、奇妙な出会いから始まる物語である。出演はフランスの人気コメディアンであり俳優のジャメル・ドゥブーズ、グッチの専属モデルであり女優として映像クリエイターとして活動中のリー・ラスムッセン。パリを舞台に全編モノクロ映像で綴る新たなベッソン・ワールドである。
ギャングやチンピラなどに借金をしてきた三流詐欺師のアンドレは、48時間以内に借金を全額返済できなければ殺す、と方々から脅されている。絶望した彼はセーヌ河へ身投げしようとアレクサンドル三世橋のへりに立つと、隣のへりに長身の美女が。彼女は「あなたと同じことをする」というと、セーヌ川へ身を投げた。
ありのままの自分を愛することができず、嘘に嘘を重ねて借金まみれ、前科もちのアルジェリア系アメリカ人。ギャングに狙われてあと48時間の命……というアンドレほどきわどい状況でなくとも、都市には絶望やむなしさを抱えて思いつめている人間がたくさんいる。そうした現代人に捧げられたストーリーだ。劇中に「街の分析医と何が変わらない?」という台詞があるが、観ていると時々、自己啓発のカウンセリングを受けているかのような気分になる。ユニークな演出だ。
本作について、「憧れてやまないパリへ、愛の告白をした」とフランス人らしいロマンティックなコメントをしたベッソン。撮影は朝5〜10時と夕刻のみ、と時間帯を決めて行われ、特殊な“曙光”を追いかけたとのこと。全編モノクローム、光と影の陰影で魅せるパリの美しい風景が印象的だ。また、スイッチで切り替えるようにアップの表情を差し入れるところなど、昔ながらの名画の手法を彷彿とさせ、普遍性を目指す思いが伝わってきた。
ベッソンの新たな女神といわれる身長180cmのリー・ラスムッセンは、美しい肢体を生かして個性的なヒロインを好演。ドゥブーズとの味のある掛け合いは見どころだろう。
この作品は、本国フランスでは2005年12月21日の公開当日まで作品の内容、出演者、映像から写真に至るまで、すべてがトップシークレット。ベッソンは作品についての取材を一切受けず、試写会もナシ、という試みをしたとのこと。日本の完成披露試写で渡されたプレス向けリリースでも物語についての表記はほとんどなく、ベッソンから「エンディングの秘密を明かさないでください」というメッセージが添えられている。そこで今回の記事では、ジャンルや内容の詳細を示さず、ネタバレ一切なしでご紹介することにした。
傷ついた人々の心を慰め、明日への希望や活力をイメージさせる本作。何かスウィートなことを信じたくなるストーリーである。
公開 | 2006年5月公開予定 丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 フランス |
上映時間 | 1:30 |
配給 | アスミック・エース |
監督・脚本 | リュック・ベッソン |
オリジナル音楽 | アンニャ・ガルバレク |
出演 | ジャメル・ドゥブーズ リー・ラスムッセン |
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