ヘヴィなサウンドとリリックで突き抜ける
メンフィスのストリートに埋もれた愛と夢
アカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞した話題作
2006年第78回アカデミー賞最優秀主演男優賞ノミネート、アカデミー賞最優秀歌曲賞を挿入歌「It's Hard Out Here for a Pimp」が受賞した話題作。アメリカ南部出身のラッパーたちによるヒップホップ・サウンド“ダーティ・サウス”の世界観をそのまま表現したかのような物語。裏稼業の男が音楽を通じて成り上がりの勝負に出るさまを描く、まさにダーティなドラマである。
メンフィスの裏通り、しがないぽん引き(ハッスル)として売春婦数人とその日暮らしをするDジェイ。そうした日々に辟易していた彼は、メンフィス出身の人気ラッパー、スキニー・ブラックが地元のクラブで凱旋公演すると聞き、自分が昔ラッパーになりたいと思っていたことを思い出す。
監督・脚本を手がけた新鋭クレイグ・ブリュワー、製作のジョン・シングルトンとステファニー・アレイン、主要なスタッフやキャストがほぼ全員アフリカン・アメリカンの本作。メンフィスで子供時代を過ごしたという監督がストリートのリアルな現状を描いただけあって、物語はダークな印象だ。本作では資金繰りに苦労したとのこと。『ワイルド・スピード×2』の監督であり、ブリュワー監督の才能を認めて製作として加わったシングルトンは、製作費のほとんどを自己負担。ブリュワー監督は語る。「僕とジョンは映画の中で同じようなものを描こうとしている。<中略>必ずしも美しいものばかりじゃない。僕も彼も問題の多い地域に住んでいて、そのことは登場人物の日常にも反映されているんだ」。
本作の一番のポイントはやはりサントラ。アカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞した「It's Hard Out 〜」のどこかメランコリックなメロディは耳に残る。実際にメンフィスを拠点に活躍中のスリー・6・マフィアが本作のために書き下ろしたこの曲やアル・カポネのトラックが、物語の個性を強力に打ち出している。
Dジェイ役は、有名なラッパーでなくテレンス・ハワードを、というブリュワー監督の強い希望で決定したとのこと。自らの人生を取り戻そうと打って出る男の姿を赤裸々に演じ、抑圧を打ち破るかのような押しの強いラップを吹き替えなしで披露したハワードは、アカデミー賞主演男優賞にノミネート。実力派の脇役から、その名を一気に知らしめた。共演はアンソニー・アンダーソンやタリン・マニング、そして映画でも現実と同じくサウス系ヒップホップの超人気ラッパーを演じたのはクリス・"ルダクリス"・ブリッジス。
監督2作目にして、気鋭の映画作家としてハリウッドに認められたブリュワー監督。次回作『Black Snake Moan』では、サミュエル・L・ジャクソン、クリスティーナ・リッチなど人気俳優が多数出演。今後のブリュワー監督の活躍はますます期待大 !! である。
公開 | 2006年8月12公開 テアトルタイムズスクエアにてレイトショー |
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制作年/制作国 | 2005年 アメリカ |
上映時間 | 1:56 |
配給 | UIP映画 |
脚本・監督 | クレイグ・ブリュワー |
製作 | ジョン・シングルトン ステファニー・アレイン |
出演 | テレンス・ハワード アンソニー・アンダーソン タリン・マニング タラジ・P・ヘンソン D.J.クオールズ クリス・"ルダクリス"・ブリッジス |
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