ワールド・トレード・センター

あの日、ある港湾警察官に起こった悲劇と奇跡
瓦礫の下に閉じ込められた2人が生き延び、
家族と再会するまでの実話を基にした感動作

  • 2006/09/15
  • イベント
  • シネマ
ワールド・トレード・センター

5年前のNY。約3000人が亡くなった“9.11” によるワールド・トレード・センターの倒壊で、瓦礫の中から奇跡的に生還した20人の人々がいた。本作はそのうちの2人、18番目と19番目に救助された港湾警察官ジョンとウィルの物語。当事者2人の原案を女性新進作家が脚本化し、3度のアカデミー賞受賞歴をもつオリバー・ストーン監督が映画化。最悪の事件に直面した人々が必死で信じ、祈り、支え合った事実を映し出した、感動のヒューマン・ドラマである。

2001年9月11日、午前8時40分すぎ、出社するビジネスマンや道に迷った観光客らでにぎわうNY。世界貿易センター北棟にアメリカン航空11便が、南棟にユナイテッド航空175便が激突した。現場に急行した港湾局警察官はリーダーのジョンの指揮下、ウィルを含む4人の部下とともにビル内に救助へ向かう。2つのビルをつなぐ地下通路で彼らが救助道具の補充を終えたその時、ビルが一気に倒壊した――。

ワールド・トレード・センター

おびただしい瓦礫の下に生き埋めとなり、まったく身動きのできない状態で一命をとりとめたジョンとウィル。周期的に襲ってくる痛みをこらえ、遠のく意識を呼び戻し、彼らはどうやって命をつなぎとめたのか。これまでの暮らしや愛する家族についてたわいもない話をし、“生きる”という強い意志を持ち続ける…。想像を絶する酷い状況と妙にのどかな会話の対比。瓦礫の中、というほとんど動きのないシーンが続いても、逼迫する状況が痛いほど伝わってくるため緊張感が途切れることはない。まるで自分が当事者になったかのような錯覚を起こさせる、ブラックアウトする画面転換など、ストーン監督の熟練の腕前が至るところに発揮されている。

主演はニコラス・ケイジとマイケル・ペーニャ。ケイジはアクションものとは異なり、目と台詞の演技が大半であるジョン役を経て、俳優としての幅が広がったとのこと。『ミリオン・ダラー・ベイビー』『クラッシュ』そして本作と、良作に続けて出演したペーニャは魅力ある俳優として、存在を確立しつつある。ジョンの妻ドナ役は、“9.11”で看護婦である実母とともにNYの病院で実際に救助活動を経験した女優マリア・ベロ。妊娠中のウィルの妻アリソン役は、マギー・ギレンホール(ジェイク・ギレンホールの姉)が好演。またウィル本人の出演、“9.11”の現場で救助に当たった現役の警察官や消防士50人以上が、命懸けの救助活動シーンでエキストラとして登場するなど、ドキュメンタリーに近い臨場感が醸し出されている。

ワールド・トレード・センター

社会派で知られるストーン監督が、「政治的に正しいものを作ろうとしたのではない。最も重要なことは彼らの経験を理解すること。この作品は人間の勇気と生存を描いているのですから」と語る特別な作品。恨みや怒りやプロパガンダではなく、あの瞬間の惨状と人々の感情をそのままに奇跡と希望を伝える、とても貴重な感動作である。

作品データ

ワールド・トレード・センター
公開 2006年10月7日公開予定
日劇1ほか全国超拡大ロードショー
制作年/制作国 2006年 アメリカ
上映時間 2:09
配給 UIP
脚本 アンドレア・バーロフ
原案 ジョン&ドナ・マクローリン
ウィリアム&アリソン・ヒメノ
出演 ニコラス・ケイジ
マイケル・ペーニャ
マリア・ベロ
マギー・ギレンホール
ウィル・ヒメノ
マイケル・シャノン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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