ヘンダーソン夫人の贈り物

イギリス初のヌード・レビューの誕生秘話
大富豪のマダムと辣腕支配人の強力タッグで
戦時下も陽気なショウを披露し続けた信念に拍手!

  • 2006/11/10
  • イベント
  • シネマ
ヘンダーソン夫人の贈り物

1930年代のイギリス。ヴィクトリア朝時代の厳しい道徳観が根強く残るその時、イギリスで初めての女性のヌード・レビューが登場した。その劇場のオーナーは女性であり、大富豪の未亡人ヘンダーソン夫人。彼女と仲間たちはどのように劇場を守り、盛り立てていったのか。第二次世界大戦中にオープンし続けた唯一の劇場として人々に愛された、ウィンドミル劇場にまつわる実話に基づく物語。大人の友情や戦中のエピソードをコミカルかつあたたかい視点で描く、粋なヒューマン・ドラマである。

莫大な遺産を継いだ未亡人ヘンダーソン夫人は、ロンドンのソーホーの中心にある古い劇場を購入。ユダヤ人のやり手の支配人ヴァンダムと組み、ショービズ界に打って出る。大入り満員でスタートするも次第にライバルに真似をされて業績不振に陥り、夫人は起死回生の策としてヌード・レビューを提案する。

ヘンダーソン夫人の贈り物

ベニー・グッドマンの名曲「グッディ・グッディ」をはじめ、カラフルなステージ衣裳で当時の人気曲を歌って踊るミュージカルシーンがきらきらと輝く。劇中では“人魚たち”“赤いインディアン”など、実際にヴァンダムが制作したという代表的なヌード・レビューを美しく再現。本作が映画デビューとなる歌手ウィル・ヤングの美声は、舞台向けの楽曲にぴったりだ。

ヘンダーソン夫人の贈り物

主演はイギリスの名女優ジュディ・デンチ。オスカー女優であり、もともと舞台女優として多くのシェイクスピア劇で高評され、近年では“007シリーズ”史上初、女性の上司“M”役を好演。シリアスもコミカルも強くも弱くも幸福も不幸も、情感豊かにどんな役でもくっきりと演じる技量はさすが。本作ではタフで世間知らず、どこか憎めないキュートな夫人役がとてもよく似合っている。ヴァンダム役は製作総指揮も行っているボブ・ホスキンス、劇場の花形スター役は若手のケリー・ライリーなど、気鋭からベテランまでイギリス人俳優たちの顔合わせが楽しめる。ヌード・レビューでは女優たちの見事な脱ぎっぷりが天晴れ! 当時と同様、決して下品になることなく、耽美的に陽気に明るくカラッと映し出されている。

ヘンダーソン夫人の贈り物

ミュージカルと人間ドラマのバランスの妙は、スティーヴン・フリアーズ監督の腕と、戯曲作家であり映画の脚本も出がけるマーティン・シャーマンの脚本によるところだろう。衣裳は『恋におちたシェイクスピア』『アビエイター』でアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞したサンディ・パウエルが担当。きらびやかな世界に酔わせてくれる。

“We never closed!”をモットーに激戦下でもひとときの夢を贈り続けた、ウィンドミル劇場より愛を込めて。許し合い、生かし合うこと、友情を超えた同志愛。思いがやさしく沁みてゆく、しみじみとした感動作である。

作品データ

ヘンダーソン夫人の贈り物
公開 2006年12月公開
Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
制作年/制作国 2006年 日本
上映時間 1:43
配給 東宝
監督 スティーヴン・フリアーズ
脚本 マーティン・シャーマン
衣裳 サンディ・パウエル
出演 ジュディ・デンチ
ボブ・ホスキンス
ケリー・ライリー
ウィル・ヤング
クリストファー・ゲスト
セルマ・バーロウ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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