イーストウッド監督による「硫黄島」2部作の第2弾
国際的には理解されがたい当時の日本軍の思想や
生身の兵士たちの心理を丁寧に伝える感動作
『父親たちの星条旗』に次ぐ、クリント・イーストウッド監督による“硫黄島”2部作の第2弾。61年前の太平洋戦争末期、アメリカの圧倒的な戦力で“5日で陥落”と見込まれた硫黄島戦を、36日間に及ぶ死闘でもちこたえた日本軍の物語。出演は渡辺謙、嵐の二宮和也、加瀬亮、伊原剛志、中村獅童。現代的・国際的感覚からは理解されがたい当時の日本軍の思想、そこに準じきれない生身の兵士たちの心理などをイーストウッド監督が丁寧に綴る、深くしみじみと胸を打つ作品である。
1944年6月、硫黄島にアメリカ留学経験のある陸軍中将、栗林が指揮官として派遣される。栗林はこれまでの古い作戦と重い体罰を即とりやめさせ、斬新な戦法や合理的な規則を提案。古参の将校たちは反発するが、重い体罰にあえいでいた兵士の西郷や、ロス五輪の馬術競技の金メダリストである進歩的な「バロン西」らは栗林を歓迎する。食料も足りず、硫黄の臭気が立ち込める過酷な状況下、日本軍は島中をトンネルでつなぎ、硫黄島はさながら地下要塞に。そして1945年2月19日、上陸してきたアメリカ軍に迎撃を開始する。
イーストウッド監督は、どうしてこんなにも人間の本質的な心情を汲み取ることができるのだろう。本作の制作について監督は語る。「彼らがどんな人間だったかを知ることは、日本だけでなく、世界中の人々にとって重要だと思う」。『父親〜』制作時の徹底したリサーチで監督は和書も英訳して読むうちに、栗林中将自身による書簡集『「玉砕総指揮官」の絵手紙』に出会い、この内容をもとに本作を制作。監督はスタッフとともに脚本を東京へ持ち込み、硫黄島に関する専門家たちに史実を確認。また栗林中将やバロン西の血縁者たちや硫黄島協会の会長と会い、詳しい話を直接聞いたとのこと。綿密な調査と取材と確認に裏付けられ、海外の視点で日本人が描かれる場合によくあるズレや勘違いは、重要なシーンにおいて極めて少ない。これは本当に素晴らしく、日本人としてありがたく思う。
親米派でありながら、愛する家族の暮らす国を守るために戦う栗林中将を演じたのは渡辺謙。信念の男としての強さと家族を思う繊細なやさしさの両面をもつ栗林を大きな説得力で演じている。二宮は妊娠中の妻に「必ず戻る」と約束した兵士の西郷役で、伊原は自分の正義に従う明朗なバロン西として、加瀬は理想と現実の間で揺れ動くエリート士官・清水役で、中村は玉砕を旨とする中尉として、それぞれに自然な演技で物語に入り込んでいる。
ひとつの戦争を日米双方の視点から描き出した「硫黄島」2部作。この映画はまさに、当時の彼らから監督の手によって私たちに届けられた手紙のよう。すべては、第二次世界大戦時にティーンエイジャーだった監督の言葉に含まれている。「戦争が終わった時、嬉しかったことを覚えている。世界中の誰もが平和を待ち望んでいた。私は、誰もが人生を平和に送れることを願うだけだ」。
公開 | 2006年12月9日公開 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 アメリカ |
上映時間 | 2:21 |
配給 | ワーナー・ブラザース |
監督・製作・音楽 | クリント・イーストウッド |
脚色 | アイリス・ヤマシタ |
製作総指揮・共同原案 | ポール・ハギス『「玉砕総指揮官」の絵手紙』に基づく |
製作 | スティーブン・スピルバーグ ロバート・ローレンツ |
出演 | 渡辺 謙 二宮和也 伊原剛志 加瀬 亮 中村獅童 裕木奈江 |
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