ラストキング・オブ・スコットランド

2007年のアカデミー賞主演男優賞受賞作
'70年代のウガンダに君臨した独裁者アミンを
異邦人の視点で描く劇的なサスペンス・スリラー

  • 2007/03/09
  • イベント
  • シネマ
ラストキング・オブ・スコットランド© 2006 TWENTIETH CENTURY FOX

圧倒的な演技により、主演のフォレスト・ウィテカーが2007年のアカデミー賞主演男優賞ほかさまざまな賞を獲得。1971〜1979年にアフリカのウガンダで大統領として君臨し、残虐な悪政をふるったイディ・アミンの姿を側近のスコットランド人医師の眼を通して描く。原作は1998年に発表され、ウィットブレッド処女作賞などを獲得した、イギリス人作家ジャイルズ・フォーデンの処女小説。歴史上の人物や事件にフィクションの人物をからめて、劇的な演出で引き付けるサスペンス・スリラーである。

ラストキング・オブ・スコットランド

1971年、アフリカのウガンダ。軍事クーデターにより、元ヘビー級ボクシングのチャンピオンであり軍隊の英雄であるイディ・アミンが大統領に就任した。冒険心と好奇心からウガンダに赴任した新米の青年医師ニコラスは、ふとしたことからスコットランドびいきのアミンに気に入られ、大統領の主治医に。贅沢な生活を与えられたニコラスは重要な会議への代理出席など、次第に医師以上の側近としてアミンに深く関わっていく。

ラストキング・オブ・スコットランド

5万人以上のアジア人を国外追放し、《粛正》という名目で何百人もの人々を誘拐し、殺害――。権力を手にした後、妄想に取り付かれた独裁者へと変貌するアミン。もともとは善政を目指す意思があり、よき家庭人であり、ユーモアやウィットに富んだ話術と人々を魅了するカリスマ性の持ち主でもある側面との落差が、人間の恐ろしさを際立たせる。クリント・イーストウッド監督の『バード』でも実在の人物を演じて'88年のカンヌ国際映画祭にて主演男優賞を受賞したウィテカーは、多面的で陰陽の幅が極端なパラノイアをリアルに体現。アミンの側近として実在した数人の西洋人をモデルにしたという青年医師ニコラスを演じたのは、『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』のフォーンのタムナスさん役でブレイクしたスコットランド人俳優ジェームズ・マカヴォイ。頭も運も悪くなく、若さゆえの好奇心や自惚れから地獄のような深みに囚われていく愚かな異邦人をブレなく演じている。

監督は1999年に『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を受賞したケヴィン・マクドナルド。部外者を好まないウガンダ政府に製作陣とともに撮影許可を申し込み、大統領との直接対談を経て、政府の全面協力を得たとのこと。そうして映画史上初のウガンダ・ロケを敢行した本作は、'50〜60年代に建てられた国会議事堂やムラゴ病院など実際に当時の現場となった場所で撮影され、重厚な説得力がもたらされている。

ラストキング・オブ・スコットランド

のちの復興により医療や教育、経済などが発展してきたものの、今なおシビアな人道的危機が続いているというウガンダの歴史的背景。劇的なスリラーによって目を背けたくなるような知られざる史実を広く伝える、シリアスな作品である。

作品データ

ラストキング・オブ・スコットランド
公開 2007年3月10日公開
有楽町スバル座ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2006年 アメリカ
上映時間 2:05
配給 20世紀フォックス映画
監督 ケヴィン・マクドナルド
脚本 ジェレミー・ブロック
ピーター・モーガン
原作 ジャイルズ・フォーデン
出演 フォレスト・ウィテカー
ジェームズ・マカヴォイ
ケリー・ワシントン
サイモン・マクバーニー
ジリアン・アンダーソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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