ママの遺したラヴソング 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ママの遺したラヴソング

母から少女に遺されたのは一軒家と2人の男
音楽の街ニューオーリンズを舞台に描く
漂うように生きる孤独な人々の再生の物語



 「幸福とは長さの不足を高さであがなうもの」。アメリカの詩人ロバート・フロストをはじめ文人たちの名言がちりばめられた、孤独な人々の再生の物語。主演はコケティッシュな人気女優スカーレット・ヨハンソンと、味のある俳優ジョン・トラヴォルタ、オーディションで選出されたゲイブリエル・マック。音楽の街ニューオーリンズを舞台に、ゆっくりと移り行く時間を描き出す。乾いた心をしっとりと潤すかのような、やさしい作品である。


 音信不通だった母ロレーンの訃報を知ったパーシーは、フロリダ州パナマシティから故郷のルイジアナ州ニューオーリンズへ。が、生家には母の友人というボビーとローソンが暮らし、母の遺言によって家は3人に遺されたという。パーシーは憤慨するも、考え直して一緒に暮らしてみることに。自堕落を愛するボビーはルールを決めようとするパーシーを追い出そうとやっきになり、ボビーを慕い、母を亡くしたパーシーをいたわるローソンが間に立ちつつ3人の奇妙な共同生活が始まった。


 バーで、ライヴハウスで、川原で。どこからともなく人々が寄り集まり、飲み、歌い、よもやま話を語り合う。緑が多く、ビルなどもなく、世捨て人が流れ着くような少しさびれた小さな町は、不思議と郷愁を誘う。じつは元・大学文学部教授というボビーは、なぜこんな生活をしているのか。ボビーの元・助手で作家志望というローソンは、腐れ縁と知りつつなぜ一緒にいるのか。歌手として生きて死んだ母ロレーンの思い、祖母に育てられたパーシーの思いとは。そしてパーシーの父親は誰なのか。コミュニケーションを深めていくことで、だんだんと謎が明かされていく過程がさりげなくて好い。
魔笛
 監督・脚本は原作小説に惚れ込み、本作が長編映画監督デビューとなったシェイニー・ゲイベル。物語を気に入ったヨハンソンとともに4年間練り上げて完成させたとのこと。小悪魔的な役柄が似合うヨハンソンが、不器用で素朴な少女を演じる姿もなかなかだ。本作でもお約束のダンスを披露するトラヴォルタは、53歳になってもやっぱりセクシー。観客の目や心を自然と惹き付ける存在感はさすが。そういう話ではまったくないのだが、どこか「セクシー娘V.S.セクシーおやじ」という顔合わせが可笑しい。マックは挫折した優等生ローソンの繊細であたたかい人柄をよく演じていた。


 ほとんど亜熱帯というアメリカ南部の暑い気候に、ブルースやロックやジャズのサウンドがたっぷりと溶け合う本作。原作は、エンディングテーマなど6曲を書き下ろしたシンガーソングライター、グレイソン・キャップスの父が自らの思い出をもとにした小説なのだそう。監督がこの小説に出会った経緯も面白いが、字数オーバーゆえ、それはまた別の機会に。
『ママの遺したラヴソング』2004年 アメリカ映画
データ
2007年3月更新

魔笛
オフィシャルサイト
『ママの遺したラヴソング』


2007年4月7日公開
シネスイッチ銀座ほか
全国順次ロードショー

■2004年 アメリカ映画
■上映時間2:00
■アスミック・エース配給
■監督・脚本/シェイニー・ゲイベル
■原作/ロナルド・イヴァレット・キャップス
■出演/ジョン・トラヴォルタ
スカーレット・ヨハンソン
ゲイブリエル・マック
デボラ・カー・アンガー
デイン・ローズ



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
あつた美希