あるスキャンダルの覚え書き 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
あるスキャンダルの覚え書き

デンチとブランシェットが女優対決!
現代のタブーや皮肉をサスペンスフルに描く
実際の事件にヒントを得たベストセラーを映画化



 ベテランのジュディ・デンチと中堅のケイト・ブランシェット、演技派女優の競演で注目の話題作。アカデミー賞狙いの2006年12月に全米で公開され、主演女優賞をはじめ4部門に見事ノミネートされながら、本国では興行的にいまひとつふるわなかった本作。一体どのような内容なのだろうか。


 ロンドン郊外の中学校に勤務する初老の歴史教師バーバラは、持ち前の厳格で融通のきかない性格によって常に周囲から浮いている。彼女は学校に赴任してきた美しい美術教師シーバに魅力を感じ、友人として親しくなりたいという思いを募らせ、日記にその思いをしたためていく。そんな中、バーバラはシーバが男子生徒と密会している現場を目撃する。


 人が何年も書き溜めてきた日記、女教師と15歳の男子生徒とのスキャンダル。見てはいけないものを覗き見る感覚や、それぞれの思惑から成り立つサスペンスフルな人間関係の行方。現代社会に潜むタブーや皮肉をグイグイと見せつけ、シビアな展開で牽引する。この手の内容が好きな方にはおすすめだ。
あるスキャンダルの覚え書き
 個人的に思うこの作品の難しいところは、主にバーバラの一人称で語られるところ。彼女の心情や言動は共感も理解もし難く、観ているうちにこちらの気持ちがキャラクターや物語からどんどん遠ざかっていくこと。バーバラの思惑がすべてシーバに露見するシーンなど、どこかブラックユーモア的なニュアンスもあれど、やはり虚しく、やるせない


 見どころは、オスカー女優2人が役者としてキャラクターとして火花を散らす女優対決。「ケイトはまれに見る女優で、一緒に仕事をするのは最高だった」とデンチが称え、「お互いの演技が作用して、すごくパワフルな芝居を作り出すの」とブランシェットが語り、互いを尊重する良い現場だったことが伺える。


 原作はイギリスの作家ゾーイ・ヘラーのベストセラー『あるスキャンダルについての覚え書き』。実在するシーバのモデルは、1997年の「ルトノー事件」で、児童強姦罪で逮捕されたシアトルの小学校教師メアリー=ケイ・ルトノー。4人の子供をもつ35歳の母親でありながら13歳の生徒と性的関係をもち、彼の子を妊娠・出産。その後、仮釈放中に2人目の彼の子を出産したことから実刑を受けるも、2人は愛を貫いて2005年に結婚したという。フィクションより、現実の方が夢物語のようであるとはユニークだ。


 デンチについて、製作のスコット・ルーディンは語る。 「王族や貴族を圧倒的な威厳をもって何度も演じてきた彼女が“辛辣で厳しく、不寛容な女性”を演じるのは、ファンにとって刺激的で楽しいショックだと思う」。 デンチは個人的にとても好きな俳優のひとりで、彼女が今回で2年連続アカデミー主演女優賞にノミネートされたのは喜ばしいが、どうも消化不良の感覚が残る。ここはやはり、デンチが魅力的な役柄で出演する新作を楽しみにしていようと思う。
『あるスキャンダルの覚え書き』2006年 アメリカ映画
データ
2007年5月更新

オフィシャルサイト
『あるスキャンダルの覚え書き』


2007年6月2日公開
シャンテ シネほか
全国順次ロードショー

■2006年 アメリカ映画
■上映時間1:32
■20世紀フォックス映画配
■監督/リチャード・エアー
■脚本/パトリック・マーバー
■製作/スコット・ルーディン
ロバート・フォックス
■原作/ゾーイ・ヘラー
■出演/ジュディ・デンチ
ケイト・ブランシェット
ビル・ナイ
アンドリュー・シンプソン



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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