超紳士的なダンス教師V.S.スラム街の落ちこぼれ。
NYに実在するダンサーの活動をモデルにした
軽やかでシンプルな青春ダンス・ムービー
ダンスは青少年を救う!? イギリスのブラック・プールで4年連続優勝をはじめ、数々の名だたる社交ダンスコンテストにて受賞歴を誇り、独自の理論で子供たちや後進を育てているピエール・デュレイン氏の活動に着想を得た物語。主演はスペイン出身のホットな俳優アントニオ・バンデラス、監督は本作が初の長編映画であり、U2やセリーヌ・ディオンなど人気アーティストのPV制作を手がける映像作家として活躍しているリズ・フリードランダー。すさんだ高校生をダンスによって正道へと導く、ダンス教師のチャレンジを描く。音楽と映像の妙で軽やかに見せる、青春ダンス・ムービーである。
NYのスラム街。社交ダンス教室を経営するピエールは、すさんだ子供たちの更正に貢献したいと思い、問題児の多い高校に社交ダンスの講師を申し出る。その熱意により、彼は生徒の中でもひときわ問題のある居残り組を担当することに。最初、生徒たちはクラシックな様式の音楽やダンスをバカにするが、細やかに心をくだくピエールに徐々に心を開き、官能的なスタイルのタンゴに触発され、社交ダンスの楽しさに目覚めていく。
大胆なアングルや音楽のビートにあわせた軽快なカメラワーク。全体の流れはミュージック・クリップとしても楽しめる軽いノリだ。映画化のフィクションとして、古きよきジャズなどのクラシックな音楽とヒップホップとをMIXして踊るエピソードがあり、サントラではガーシュインの名曲「I’m got rhythm」でシンガーのレナ・ホーンとラッパーのQ-Tipがコラボするなど、ブラック・アイド・ピーズら旬のアーティストたちが参加。ストリート感あふれるエネルギッシュなサウンドもポイントだ。
貧困や家庭の事情から夢も希望もない、反抗期の少年少女たちが少しずつ立ち直っていく様。生徒たちを導いていくダンス講師のひたむきな姿勢。この展開、2006年3月に日本で公開された『ステップ!ステップ!ステップ!』に妙に似ている…と思ったら、あのドキュメンタリー映画は、デュレイン氏が創設し、芸術監督を務める非営利団体アメリカン・ボールルーム・シアターが、NYの60校以上の小学校で行っている児童育成プログラムを追ったものとのこと。精神的な内容の深さやメッセージ性に触れたい場合は『ステップ!〜』、ダンスと青春を軽いノリで気楽に楽しむなら本作がおすすめだ。
デュレイン氏の指導はなぜ特別なのか。それは社交ダンスをただのスポーツではなく、正しいマナーを身に付け、互いを尊重し、相手を受け入れる気持ちを育む、という精神面をとても大切にしているから。本作はいいテーマを扱っている割には内容が軽すぎる感があるものの、バンデラスのセクシーな仕草やダンスなどラテン男の魅力で惹きつけつつ、デュレイン氏のような人物がいて、子供たちを現実的に導いていくためのモデルケースがあることを広く知らしめているのかもしれない…と考えると、これはこれで意味のある作品だな、と思うのである。
公開 | 2007年7月14日公開 シネマGAGA! ほか全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 アメリカ |
上映時間 | 1:57 |
配給 | ギャガ・コミュニケーションズ |
監督 | リズ・フリードランダー |
脚本 | ダイアン・ヒューストン |
出演 | アントニオ・バンデラス ロブ・ブラウン ヤヤ・ダコスタ アルフレ・ウッダード カティア・ヴァーシラス |
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