ウディ・アレン×ヨハンソン×ジャックマン
米国人にわか探偵コンビが英国の殺人事件に挑む
アレン風味たっぷりのコメディ・サスペンス
ウディ・アレンがロンドンを舞台に、セクシー&キュートなスカーレット・ヨハンソンを主演に迎えた2作目。出演はヨハンソン、自らの映画に3年ぶりに出演したアレン、『X-メン』のヒュー・ジャックマン。アメリカ人のにわか探偵コンビが、ロンドンを震撼させている連続殺人事件を追う。洗練された前作『マッチポイント』よりもかなりゆる〜い感覚で、アレン流の皮肉と哀愁、脱力系ユーモアをたっぷりと含んだ“コメディ・サスペンス”である。
娼婦が殺され、現場にタロットカードが残される“タロットカード殺人事件”がロンドンで扇情的に報道される中、敏腕記者ストロンベルが急死。彼岸に向かう船の中、彼は「殺人事件の犯人は青年貴族のライモンではないか」という重大な証言を聞く。ストロンベルは幽霊となり、その真相追究をジャーナリスト志望の学生サンドラに託す。サンドラは幽霊と遭遇した時にそばにいた老年マジシャンのスプレンディーニを巻き込み、殺人事件の調査を開始。サンドラとスプレンディーニはにわかセレブ父娘として偽名を名乗り、ライモンと知り合うものの、彼の魅力的な英国紳士ぶりにサンドラは本気で恋をしてしまう。
コケティッシュな小悪魔風の役柄が多いヨハンソンは、本作でコメディエンヌとしての快活な魅力を披露。いわゆるアレン流の早口でまくしたてる台詞の掛け合いも見事にこなし、アレンに「(2人で掛け合っても)最後には必ず彼女に完璧に打ち負かされる。本当に尊敬に値するよ」と言わしめた。アレンはスカーレットについて「宝くじに当たったような気分」と称し、自分と演技の相性が良く、自分を上回るペースをもつ完璧な俳優、とベタ褒めしている。ヨハンソンもまた、「彼と仕事をするのは無条件に大好き。普段もあんな感じでふざけあっているの」と答えている。ジャックマンはミステリアスな貴族の青年役をエレガントに表現。イギリスの空のようにグレーなニュアンスを纏い、物語の謎を深めている。またジョン・スタンディングを始め、イギリスの名優たちが端役で登場しているというのも贅沢だ。
今年で72歳を迎え、近年は“死との直面に取り憑かれている”ともいわれるアレンだが、本作のエンディングが好い。死について、真っ当なメッセージがコミカルにさらりと織り込まれている。
チャイコフスキーの「白鳥の湖」にのせて、上流階級のリッチなライフスタイルを優雅にシニカルに映し、殺人事件の真相を追う。そして合間には土臭いユーモアや十八番の掛け合いが差し込まれ、クスッと笑い、脱力させる。アレンが楽しんで奔放に作ったことがひしひしと伝わってくる本作。’08年の公開作として、ヨハンソンと3回目のコラボとなる『Woody Allen Spanish Project』が確定しているとのこと。スペインで撮影し、ペネロペ・クルスやハビエル・バルデムらスペイン出身の俳優が出演するというこの映画は、どのようなアプローチになるのだろう。アレンとヨハンソン、2人の蜜月はまだまだ続きそうだ。
公開 | 2007年10月27日公開 シャンテ シネほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2006年 イギリス |
上映時間 | 1:35 |
配給 | ワイズポリシー |
監督・脚本 | ウディ・アレン |
出演 | ウディ・アレン スカーレット・ヨハンソン ヒュー・ジャックマン イアン・マクシェーン |
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