魍魎の匣

京極夏彦のベストセラーを原田監督が脚色
妖しくも哀しい魍魎どもがいざなう
愛憎にまみれた濃密な猟奇サスペンス

  • 2007/11/30
  • イベント
  • シネマ
魍魎の匣© 2007「魍魎の匣」製作委員会

京極夏彦による500万部超の人気シリーズ映画化第2弾。古本屋の店主にして神社の宮司、副業で“憑物落とし”をしている京極堂こと中禅寺、私立探偵の榎木津、小説家の関口、記者の敦子、刑事の木場が難事件に挑む。出演は堤真一、阿部寛、椎名桔平、田中麗奈、宮迫博之、黒木瞳、監督・脚本は『突入せよ!あさま山荘事件』の原田眞人。新たな監督やスタッフのもと豪華キャストが集結し、前作より格段に洗練された仕上がりに。複数の事件やエピソード、独特のフェティシズムが蔦のように絡み合う、濃厚な愛憎奇譚である。

戦後間もない1952年の東京。美少女連続バラバラ殺人事件が世間を騒がせている最中、引退した元女優・陽子の娘が行方不明に。陽子の依頼により榎木津がその行方を追っている頃、関口と敦子は“不幸をハコに封じる”という謎の教団を調べていた。木場は謹慎中でありながらも個人的な理由から捜査に関わることに。事件の謎が深まってくると、膨大な資料や知識にもとづいた助言を得るため、榎木津や関口たちは中禅寺のもとを訪れる。

魍魎の匣

関口役のみ体調不良で降板した永瀬正敏から椎名桔平に代わり、あとは前作『姑獲鳥の夏』と同様の面々が登場。今回は第二作だけあって、原作のイメージを具現化するというより俳優が演じることを前提に、動きや衣装や台詞でキャラクターが肉付けされているところが面白い。そのためか堤真一をはじめとする主要キャストは以前よりもキャラクターにハマり、堂に入っている。陰陽道のテクニカルアドバイザーから指導を受けたという、京極堂が某シーンで踏む足運びはとてもユニーク。身体能力の高い堤真一が演じる京極堂の場合、祝詞をあげるよりも動きと長台詞のコンビネーションで観客を惹きつけるのは大正解だ。またワケありの女性・陽子役を黒木瞳が好演し、柄本明や宮藤官九郎、マギーや荒川良々、笹野高史など味のある俳優たちが脇を固めているため、ちょっとしたシーンにも見ごたえがあって飽きさせない。

魍魎の匣

本作を“マイベスト作品”と語るのは、監督・脚本を手がけた原田眞人。自分で脚本を担当することを条件に監督を快諾し、映画に向けて内容を原作から大幅に脚色。第1稿で京極夏彦氏の賛同も得て、確認をとりつつ半年間スタッフとセッションを繰り返して練り上げた結果、第23稿でようやく脚本が完成したのだそう。撮影は「僕が子供の頃に見た1950〜60年代の景色に似ている」という監督の提案により、上海ロケを敢行。1300年以上の歴史をもつ古都・烏鎮では古い民家を、水郷の町である西塘では橋のシーンを撮影。ゲリラ的に撮影したという朱家角の田舎道や、300人の中国人エキストラが参加した冒頭のシーンなど、当時の雰囲気がよく再現されている。

魍魎の匣

“別物であり、原作に忠実でもある”。京極夏彦氏がさまざまな言葉で、“原作ファンにも映画ファンにも楽しんでほしい”と語っている本作。美術セットを作りこみ、最新VFXを駆使した2300ものカットが物語を濃密に織り成す2時間。魍魎のようにうごめくさまざまな人物の思惑が、怒涛のクライマックスへと導く猟奇サスペンスの世界へぜひ。

作品データ

魍魎の匣
公開 2007年12月22日公開
渋谷東急ほか松竹・東急系にて全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 日本
上映時間 2:13
配給 ショウゲート
監督・脚本 原田眞人
出演 堤真一
阿部寛
椎名桔平
宮迫博之
田中麗奈
黒木瞳
宮藤 官九郎
柄本明
マギー
堀部圭亮
荒川良々
笹野高史
大沢樹生
右近健一
寺島咲
谷村美月
清水美砂
篠原涼子
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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