いつか眠りにつく前に

大物オスカー女優の共演で人気小説を映画化。
死を前にした母が自らの人生を振り返り
その娘へと人生の示唆を与える感動作

  • 2008/02/22
  • イベント
  • シネマ
いつか眠りにつく前に

ヴァネッサ・レッドグレイヴ、メリル・ストリープら大物オスカー女優、クレア・デインズやトニ・コレットなど実力派俳優が出演するヒューマンドラマ。アメリカの作家スーザン・マイノットによるベストセラー小説の映画化にあたり、作家自身が脚本に参加。共同脚本は『めぐりあう時間たち』の原作でピューリッツァー賞を受賞した作家マイケル・カニンガム。母から娘へ、人生を歩むための思いを伝える静かな感動作である。

メリル・ストリープ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ

重病を患って自宅のベッドに横たわる老婦人アン。死を前に混濁した意識のまま、アンは「ハリスと私がバディを殺したの」と口走る。初めて聞く母の言葉に2人の娘が戸惑う中、アンの心は青春を過ごした’50年代の頃へとさかのぼっていく。そこは親友ライラの結婚式で訪れたロードアイランドの海辺の町。アンはそこで運命的な恋に落ち、思いがけない結末を迎えたのだった。

幸福な家庭の主婦であるアンの長女コンスタンス、恋人との結婚に悩む次女のニナ。死の床に横たわる母の言葉により、2人の娘は人生の示唆を得る。派手さはないが、しみじみとした感動を伝える佳作だ。

パトリック・ウィルソン、クレア・デインズ

映画の舞台は原作に描かれているメイン州ではなく、ニューイングランド沿岸のロードアイランド州。ライラの結婚式が行われる別荘は、1865年にニューポートで最も歴史的なストリートの端に建てられた実在の家とのこと。蒼い海と空を背景に佇む上質な別荘は、アンの記憶に輝く思い出の地としてとても美しく映し出されている。また歌手志望のアン役を演じたデインズは、本作で歌に初挑戦。劇中でジャズソングを披露しているところも見どころのひとつだ。

レッドグレイヴがアン役を、ストリープがライラ役を確かな存在感でそれぞれに表現。自身の愛と存在にゆれるニナをコレットが繊細に演じ、若き日のアンをデインズが快活に好演。注目は、大物オスカー女優たちのW母娘共演。レッドグレイヴの長女役に、実際に彼女の長女であるナターシャ・リチャードソン、若き日のライラ役をストリープの娘であるメイミー・ガマーが演じ、話題となっている。またデインズは本作をきっかけに、ライラの弟バディを演じたヒュー・ダンシーと交際。舞台で活躍するダンシーの影響によって舞台『ピグマリオン』でブロードウェイデビューを果たした、というのも爽やかなエピソードだ。

クレア・デインズ、パトリック・ウィルソン

「この物語を読んだすべての人が、自分の人生で何が一番大切か、何を最も大切にしたか、そして、過ぎゆく人生をどのように生きたいのかを考えてくれたらいい」。マイノットはそう願って原作を執筆したとのこと。劇中のアンの言葉に、その思いは集約されている。「幸せになろうと努力して。なぜなら、人生に過ちなんてないのだから」。

若さゆえの激しい情熱と感情、分かれてしまった道、変わらない友情と和解、そして母娘の絆。本作とは根底のテーマが異なるものの、今冬に公開された吉永小百合主演の映画『母べえ』を思い出した。母から2人の娘へ、その生き様から伝わっていくことの大切さ。こうした作品の公開が相次ぐのは、世界中の作家たちに共通する思いがあるからに違いない。次の世代へ継ぐべき思い、伝えておくべきことがあると。

作品データ

いつか眠りにつく前に
公開 2008年2月23日公開
日比谷みゆき座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 アメリカ
上映時間 1:57
配給 ショウゲート
監督 ラホス・コルタイ
原作・脚本・製作総指揮 スーザン・マイノット
脚本・製作総指揮 マイケル・カニンガム
出演 クレア・デインズ
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
メリル・ストリープ
グレン・クローズ
トニ・コレット
ナターシャ・リチャードソン
パトリック・ウィルソン
ヒュー・ダンシー
メイミー・ガマー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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