イーモウ監督×コン・リー×チョウ・ユンファ
豪華な衣装と美術セットによる映像が圧巻
唐王朝の愛憎劇を耽美的に描くスペクタクル大作
北京オリンピックの総合ディレクターに指名された、中国を代表する映画作家チャン・イーモウ監督の最新作。出演は演技派としてハリウッドでも活躍するアジアの二大スター、コン・リーとチョウ・ユンファ、マンダリン歌曲のアーティストとして国内外で評価されているジェイ・チョウ、さりげない存在感で良作に出演しているリウ・イェ、本作で監督に新たに見出された新人女優リー・マン。千年以上前、中国史上最も栄華を極めたという唐王朝を舞台に繰り広げられる愛憎劇を描く。どこまでも豪華絢爛でデカダンス。豪奢な映像美で惹きつける大掛かりなアクション映画である。
長寿や繁栄を願う9月9日の重陽節を控え、遠征していた王と外地に赴いていた第二王子の傑が王宮に帰ってくる。実直で武人として長けている傑は、その能力を改めて王に評価される。王妃は継子である皇太子の祥を愛して不倫関係となり、皇太子は王妃との関係を断ち切って恋人である宮廷医の娘・蒋嬋と王宮から脱出したいと考えている。久しぶりに一家が顔をそろえる頃、王妃は密偵を使い、王から直々に処方されている薬に新たに調合された成分を知る。
18金や瑠璃(中国のアートガラス)を多用した壮麗な美術セット、東洋の伝統的なスタイルに西洋のニュアンスを取り入れた豪華な衣裳、お約束の派手なワイヤーアクションとCGを超えるほどの人海戦術による戦闘シーン。これでもかと見せ場が用意されているスペクタクル大作である。なかでも刺繍職人が一針一針手縫いで18金の金片を打ち込み、金糸で縫い合わせたという黄金色に輝く王と王妃の衣裳は相当なもの。各重量が40〜50kgというから、役者魂で着こなしていた俳優たちの苦労がしのばれる。
コン・リーは愛憎劇から厳しい選択をする王妃を熱演。母として王妃として女として痛いほどの悲しい性(さが)を表現している。ユンファは温かみのあるダンディな個性を封印して冷徹な王を、監督としても’07年にデビューしたポップスターのチョウは一本気な傑を、イェは繊細な雰囲気で陰と色気のある皇太子の祥を、それぞれにいいバランスで演じている。皇太子の若い恋人・蒋嬋を演じた20歳のリー・マンは、北京の名門・中央戯劇学院に在学中にイーモウ監督に見出されて本作に抜擢。監督はコン・リーやチャン・ツィイーをスターとして送り出してきたため、香港や中国のマスコミから次世代の“イーモウ・ガール”と呼ばれ、大いに注目されているそう。
アン・リー監督による’00年の『グリーン・デスティニー』の世界的な成功以降、アジアで類似作品が製作され続けるなか、中国で史上最高の興行収入をマークしたという本作。’02年の『HERO』、’04年の『LOVERS』と3作目のアクション作品となる本作について、「私はどんな映画でもストーリーが最重要と考えている」とイーモウ監督は語っている。が、個人的には、監督ならヒューマンな部分をもっと深く掘り下げられるのでは、と感じてしまった。派手で壮大なアクション作品もいいけれど、人情や愛情をほのぼのと描き、人のぬくもりが伝わってくるイーモウ監督の作品をもっと観たいと思っているのは、筆者だけではないはずだ。
公開 | 2008年4月12日公開 東劇ほかにて全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2007年 中国 |
上映時間 | 1:54 |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
監督・脚本 | チャン・イーモウ |
共同脚本 | ウー・ナン ビエン・ジーホン |
アクション監督 | チン・シウトン |
衣装デザイン | イー・チョンマン |
撮影 | チャオ・シャオティン |
出演 | チョウ・ユンファ コン・リー ジェイ・チョウ リウ・イェ リー・マン ニー・ターホン チェン・ジン チン・ジュンジエ |
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