音が導く家族の絆をひたむきに信じる少年は
生き別れた両親と巡り会うことができるのか?
上質なサウンドとともに綴る現代のおとぎ話
生まれてから11年と16日。信じ続けたその先にあるものとは? 出演は『チャーリーとチョコレート工場』『ネバーランド』のフレディ・ハイモア、地味ながら温かい人柄を感じさせるケリー・ラッセル、美形のジョナサン・リース=マイヤーズ、オスカー俳優のロビン・ウィリアムズ。音楽を感じる自分の勘を頼りに、施設で育った少年が両親を探す旅に出る。胸を打つ音楽とともに綴る、現代のおとぎ話である。
ニューヨーク州ウォルデンの男子養護施設で育った11歳の少年エヴァン。風が草木をゆらし、家具がきしみ…生活のあらゆる音が、彼にはリズムや旋律として聴こえてくる。そしてそのメロディは、会ったことのない両親へとつながっている、とエヴァンは信じていた。ある日彼は両親に会いたい一心で、自分だけに聴こえるメロディを頼りに施設を抜け出す。そして果物屋のトラックに乗せてもらい、マンハッタンへとたどり着く。『母をたずねて三千里』、『みにくいアヒルの子』、『ロミオとジュリエット』など、王道のおとぎ話や名作の要素を現代版として上手に昇華させた物語。といっても狙いすぎであざといことはなく、上質な音楽とともに純粋な感動の余韻に酔わせてくれる。
登場人物の心情がさまざまな音楽で鮮やか表現されている本作。劇中では鍵となるヴァン・モリソンの「ムーンダンス」をはじめ、クラシックやゴスペルなど40曲以上の幅広いジャンルの楽曲を使用。映画音楽は通常、作品が完成してから作られることが多いが、本作ではサウンドを先行。音楽に演技を合わせることに苦心したというカーステン・シェリダン監督の努力の甲斐あって、全体のトーンや物語の抑揚にサウンドと一体感があって気持ちいい。ハーレムのインパクト・レパートリー・シアター(アフリカ系の子供たちの芸術的才能を引き出す指導をする非営利組織)が書き下ろした曲「Raise It Up」は、第80回アカデミー賞の主題歌賞にノミネート。12歳のキュートなジャマイア・シモーヌ・ナッシュがソウルフルな熱い歌声で聴かせてくれる。また、エヴァンが初めてギターを練習するシーンでは、独特の技法で知られるギタリスト故マイケル・ヘッジスの演奏テープの研究が使われたとのこと。クライマックスに演奏される「オーガストのラプソディ」や、グラミー・アーティストのジョン・レジェンドが書き下ろしたエンディング曲「Someday」など、上質なサウンドが物語の情感を大きく引き立てている。
天然の愛らしさをふりまくハイモアは、健気で才能あふれるエヴァンをナチュラルに好演。もともとクラリネットを演奏し、楽譜も読めるそうで、堂に入った音楽家ぶりを披露している。驚いたのはロックバンドのヴォーカル、ルイスを演じたマイヤーズ。本物のヴォーカリストさながらの歌声と雰囲気で3曲のオリジナル・ナンバーを吹き替えなしで歌い上げている。チェロ演奏の猛特訓をしたというラッセルは、情熱を秘めた一途なライラを自然に表現。ストリート・キッズのうわまえをハネるウィザード役のウィリアムズは、堕落した大人でありながら憎みきれない人間味を確かな演技力で表している。
音楽との相思相愛、一生に一度の恋、家族との確かな絆。強いエゴをもつ人々に振り回され、失われかけた道を取り戻すまで。偶然が偶然を呼ぶメルヘンな展開もまったく問題ナシ。なぜならこれはおとぎ話だから。流れる涙に心を洗われる、清々しい感動作なのである。
公開 | 2008年6月21日公開 日比谷スカラ座ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 アメリカ |
上映時間 | 1:54 |
配給 | 東宝東和 |
監督 | カーステン・シェリダン |
脚本 | ニック・キャッスル ジェームズ・V・ハート |
原案 | ポール・カストロ ニック・キャッスル |
出演 | フレディ・ハイモア ケリー・ラッセル ジョナサン・リース=マイヤーズ ロビン・ウィリアムズ テレンス・ハワード ウィリアム・サドラー レオン・トマス・3世 ジャマイア・シモーヌ・ナッシュ |
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