王と妹を見返すべく王妃への野望を燃やす姉アン
王も姉も愛しながら、陰謀に巻き込まれる妹メアリー
姉妹の数奇な運命を軸に描く濃厚な人間ドラマ
イングランドに富と繁栄をもたらしたエリザベス一世の生みの親、アン・ブーリンとヘンリー8世。そしてアンの妹メアリーは、ヘンリー王の愛人だった。イギリスの作家フィリッパ・グレゴリーがその史実をもとに、イングランド王ヘンリー8世の寵愛をめぐる美しき姉妹の愛憎劇を描いた同名のベストセラー小説を映画化。出演は知的な閃きをもつナタリー・ポートマン、グラマラスな容姿と確かな実力を備えるスカーレット・ヨハンソン、演技力に定評のあるエリック・バナ。監督は本作が初の劇場用映画であり、これまでイギリスのTV界の活躍でエミー賞やゴールデングローブ賞などの受賞歴を誇るジャスティン・チャドウィック。野心、陰謀、恋愛、嫉妬、家族愛…400年以上前の時代を舞台にしていながら古臭さを感じさせず、人間の普遍的な悲哀や愚かしさ、信念や心の強さに迫るドラマティックな物語である。
16世紀のイギリス。野心家のトーマス・ブーリン卿は、王妃との間に女子しか子がなく、男子の誕生を望むヘンリー8世のもとへ自分の娘を愛人としてさしだすことを画策。ヘンリー王が狩猟でブーリン邸に滞在した日、知的で野心ある長女のアンを差し向けるが、王はすでに結婚している気立てのよい美貌の妹メアリーに惹かれる。王はブーリン家の両親とアンとメアリー、弟ジョージを宮廷に召喚し、メアリーを愛人にしたいと申し出る。派手な暮らしに興味のないメアリーは戸惑い、アンは王に選ばれなかった屈辱感や妹への劣等感に打ちひしがれる。
歴史的に有名なアンとヘンリー8世のドラマを、“王の愛人”ということ以外はほとんど知られていない妹メアリーとアンとの関係性からフォーカス。姉妹だからこその深い確執や愛憎、強い絆が濃厚に描かれている。アンの野望の行方は、ヘンリー王の決断は、巻き込まれていくメアリーの立場は? 次々と展開し、どんどん深みにハマって泥沼化していく関係はどう決着するのか。史実をもとにした歴史サスペンスとしても充実の仕上がりだ。
本作の見どころはなんといっても旬の女優ポートマンとヨハンソンの豪華競演。ポートマンは王妃という立場と、自分を傷つけたヘンリー8世と妹メアリーへの完全勝利に執着するアン役で、ヨハンソンは周囲に翻弄されながらも王や姉、家族を純粋に愛するメアリー役で、ともにそれぞれのコケティッシュな魅力を大いに発揮。つぶし合うことなくどちらかが見劣りすることもなく、互いの魅力を引き立て合う、とても華やかで見ごたえのある共演となっている。ポートマンとヨハンソンはインタビューでも互いのことを認め合い、とても良い信頼関係があったことが伺える。2人は’06年の映画「パリ、ジュテーム」のニューヨーク版であるオムニバス映画『New York, I Love You』にて、ともに監督デビューをするとのこと。
衣装は『恋におちたシェイクスピア』『アビエイター』でアカデミー賞を2度受賞したサンディ・パウエルが担当。役者が映えるようにデザインされた、チューダー朝の華麗な衣装にも注目だ。また「役者が実際の環境に身を置くと、演技にも一層磨きがかかる」というチャドウィック監督の考えから、現存するイギリスの城や邸宅でのロケも多数。イギリスで最も美しい中世の邸宅のひとつといわれるハドン・ホールやペンスハースト・プレイスのマナーハウスなど、意匠がこらされた本物の歴史的建造物が登場するのも楽しい。
人を呪わば穴二つ。アンが生来の明晰な頭脳とフランス仕込みの洗練された社交術で巧みに策動し、見事な手腕で目的を遂げるも策に溺れ、自分も含めて人の心をないがしろにしてきた報いを受けることになる。そのくだりはなんとも物悲しい。正反対の個性をもちながら、自分なりの思想や信念を貫き通す姉妹の強さに、現代の女性たちに通じるものを感じさせる本作。野心に賭けて歴史に名を刻んだ姉アン、ただ王を愛し、家族を愛するだけの平凡な人生を望んだ妹メアリー、果たしてどちらが幸せなのか。「女の幸せって…」と、思わず改めて考えさせられる作品である。
公開 | 2008年10月25日公開 シャンテ シネほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 アメリカ=イギリス合作 |
上映時間 | 1:55 |
配給 | ブロードメディア・スタジオ |
監督 | ジャスティン・チャドウィック |
脚本 | ピーター・モーガン |
原案 | ダン・マクダーモット |
出演 | ナタリー・ポートマン スカーレット・ ヨハンソン エリック・バナ ジム・スタージェス マーク・ライアンス クリスティン・スコット・トーマス デヴィッド・モリッシー |
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