事実に基づくエピソードのみで構成された
革命家ゲバラの半生を2部作で綴る。
ソダーバーグ×デル・トロ渾身の英雄伝
没後40年以上たった今も変わらず、世界が称え続ける革命家チェ・ゲバラ。彼の人生における2つの大きな岐路、キューバ革命の成立までと、ボリビアでの失敗を描く2部作が完成した。監督はスティーヴン・ソダーバーグ、主演はベニチオ・デル・トロ、’00年の映画『トラフィック』でアカデミー賞監督賞と助演男優賞をそれぞれに受賞した2人が再タッグ。医者から革命家となった28歳と、革命家としての道を貫き通す39歳。有名な逸話から知られざるエピソードまで、緻密なリサーチに基づいてゲバラの濃密な生き様を再現する、熱い英雄伝である。
’55年、メキシコ。27歳のアルゼンチン人の青年医師エルネスト・ゲバラは、29歳のフィデル・カストロと出会う。独裁政権下にある故国キューバの革命を目指す、カストロの高い志に共感したゲバラは革命軍に軍医として参加し、優れた統率力によって司令官として部隊を率いるように。ゲバラの部隊はカストロ率いる革命軍に奇跡的な勝利をもたらし、’59年にキューバ革命が成立。英雄としてキューバはもちろん世界的に認められた36歳のゲバラは、’64年に国連総会でスピーチを行う。
’65年、ゲバラはキューバの政治家としての立場を捨てて、再び革命家としてコンゴへ。コンゴで失敗し、キューバに秘密帰国してボリビア遠征を計画。’66年に圧政下にあるボリビアに入国し、ゲリラ戦を開始するが…。
ゲバラの半生をどこか夢の英雄伝のように描く本作。ナレーションやモノローグがあまりないドキュメンタリー仕立てのため、ある程度キューバ革命の流れや当時のボリビアの背景、ゲバラやカストロの半生などを予習していった方がより楽しめるだろう。キューバ革命後、ゲバラはキューバで政治家として活動するものの、独裁政権下にあった国がいきなり理想の社会を実現できるはずもなく、現実にそぐわない理想を固持するゲバラは政府内で徐々に孤立していく。ダメ押しはキューバの重要な貿易国であるソ連を演説中に批判したこと。それにより、ソ連からキューバ政府へゲバラを首脳陣からはずすよう圧力がかけられる……。ゲバラがキューバから身を引き、再び革命家になるには使命感だけでなく、政治的な流れもあった。彼には非現実的で極端な偏りがあり、だからこそとても立派で清廉な理想主義者として命を全うした、という葛藤の部分がほとんど示されないところは、個人的に少し物足りなくも感じる。
ソダーバーグは“チェと共に革命を体験する”ことに徹底的にこだわり、リサーチに7年かけて作り上げたとのこと。「細部もすべてリサーチやインタビューに基づいている。僕らが作り出した内容はひとつもないよ」。25kgの減量をして撮影に臨み、在りし日のゲバラを演じきったプロデューサー兼主演のベニチオ・デル・トロは、2008年度カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞。彼もまた7年間、「彼の話をしてくれる人がいればどこへでも駆けつけた」と語っている。なかでもキューバ革命、ボリビア遠征とゲバラと行動をともにした、現存する3人の仲間から直接聞いた実話は、とても参考になったそう。「彼らの言葉にはチェ・ゲバラを身近で見知った人にしか表せない力強さがあった。この映画に具体的な戦術の情報を提供し、絶大なエネルギーを与えてくれたよ」。
ゲバラがジョン・レノンや哲学者のサルトルから手放しで賞賛され、21世紀の現在もアイコンとして敬愛される理由について、プロデューサーのローラ・ビックフォードは語る。「彼は青年たちにとっての反逆と理想の象徴。その2つは永遠に不変的なものだから」。キューバ革命成立50周年を迎える2009年、総上映時間4時間22分の2部作で綴られるゲバラの革命の道行き。ゆるぎない理想を掲げて人々に身を捧げる――。現代社会に生きる私たちに、ゲバラの生き方はあまりにもシンプルでまぶしい。こういう生き方もある、と胸に留め置くだけで心が強くなれそうな。そんな気がしてくるのである。
公開 | 『チェ 28歳の革命』2009年1月10日公開 『チェ 39歳 別れの手紙』2009年1月31日公開 ともに日劇3ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 スペイン・フランス・アメリカ合作 |
上映時間 | 『チェ 28歳の革命』 2:12 『チェ 39歳 別れの手紙』 2:13 |
配給 | ギャガ・コミュニケーションズ×日活共同 |
監督 | スティーヴン・ソダーバーグ |
脚本 | ピーター・バックマン |
出演 | ベニチオ・デル・トロ デミアン・ビチル ジュリア・オーモンド カタリーナ・サンディノ・モレノ ロドリゴ・サントロ |
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