G.I.ジョー

“ハムナプトラ”のスティーブン・ソマーズ監督が
米国で40年以上親しまれてきた有名キャラを実写化。
多国籍なスターと実力派俳優で魅せるアクション映画劇

  • 2009/07/31
  • イベント
  • シネマ
G.I.ジョー© 2009 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

アメリカで人形やアニメーションとして親しまれてきたG.I.ジョーを、『トランスフォーマー』の製作陣と“ハムナプトラ”シリーズのスティーブン・ソマーズ監督が実写で映画化。出演はデューク役に抜擢された若手俳優チャニング・テイタム、デザイナーとしても活動しているシエナ・ミラー、韓国スターのイ・ビョンホン、モデル出身のレイチェル・ニコルズ、TVドラマの製作や脚本執筆も手がけるマーロン・ウェイアンズ、ベテランのデニス・クエイド 、そして映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のダースモール役で知られる武芸の達人レイ・パーク。キャストにスターや実力派を織り交ぜて、ストーリーには王道の愛憎劇や派手な見せ場をたっぷりと。何も考えずにカラッと楽しむ、夏休み向けのアクション映画である。

最新技術によって開発された化学物質ナノマイトをアメリカ軍が運搬中、悪の組織コブラが急襲。軍隊とコブラは激しく衝突するも、コブラの圧倒的な攻撃によってナノマイトを強奪されてしまう。ナノマイトはコブラによって金属を食い尽くす化学兵器と化し、コブラの主要メンバーのバロネスとストームシャドーは大規模なテロを仕掛けるべくパリへ。そのテロを未然に防ぎ、ナノマイトを奪取すべく世界最強のエリート機密チームG.I.ジョーのメンバー、デュークとリップコード、スネークアイズとスカーレットが出動する。

チャニング・テイタム

スターたちのコスプレ、友情や家族愛、男女の愛憎劇や戦争に絡む心の傷などの人間ドラマ、VFXを駆使した派手な戦闘シーン、生身の肉体勝負の格闘シーン、近未来の兵器や戦闘機の数々と、見どころをこれでもかとたっぷり詰め込んだ幕の内弁当のような仕上がり。ただ“金属を食い尽くす兵器”の映像は’08年のリメイク版『地球が静止する日』の焼き直しのようでインパクトはなく、先ほど公開された『スター・トレック』のように壮大なドラマや感動があるわけではないが、多様な仕掛けや派手なアクションを気軽に楽しめるエンタテインメント作品だ。

数々のアクションの中で個人的に面白かったのは、最新のパワースーツを纏ったデュークとリップコードが自らの足で走ってコブラの車をしぶとく追跡し続けるチェイスシーン。ドキドキハラハラの場面でありながら、画的にはアナログでコミカルなニュアンスがあり、“ハムナプトラ”のソマーズ監督らしいテイストが感じられる。

シャーリー・マクレーン

テイタムは暗い過去を秘めたデューク役を熱演。相棒リップコード役のウェイアンズとのかけあいも楽しい。ミラーは敵対するバロネス役として、スレンダー&グラマラスな肢体を誇張するコスチュームでセクシーにキメている。アクションのキレNo.1はやはりパークが演じるスネークアイズ。今回は忍者がベースの役のためダースモールのようなアクロバティックな派手さはないが、鍛え抜かれた武道家としての動きは天晴れだ。そしてストームシャドー役は、メジャーなハリウッド作品に初出演というビョンホンが健闘。パーク=スネークアイズに対峙するキャラクターとしてはアクションの力量に差が出てしまうものの、クライマックスではマスクをとり、スタントではなく本人が闘っていることがアピールされている。海外の資料をそのまま訳した風のリリースにて、ビョンホンが“韓国のマーシャル・アーツのスター”とされていることや、脚本家が忍者についてまったくの誤解をして“彼らには掟や規則は何もない”と語っていることは少々ナゾに思った。

レイ・パーク、レイチェル・ニコルズ、マーロン・ウェイアンズ

そもそもG.I.ジョーは、アメリカの玩具メーカーのハズブロが’64年にベトナム戦争で活躍する米兵をモチーフにした人形として発売し、’84年に新シリーズとして発売した変身サイボーグ人形のコンバット・ジョーが大ヒットしたというキャラクター。’85年にはTVアニメ『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』が放送され、話題となった作品。今回の映画では、TVアニメの物語をベースにドラマをふくらませたそうだ。ハズブロは日本の玩具メーカーのタカラと提携して“TRANSFORMERS”を北米でヒットさせたことでも知られる会社。本作は映画『トランスフォーマー』ほどのヒットは難しいとして、観客動員数をどこまで伸ばせるか。そして続編は本当に製作されるのか。日米同時公開後の展開に注目したい。

作品データ

タイトル
公開 2009年8月7日公開
丸の内ルーブルほか全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 1:57
配給 パラマウント・ピクチャーズ ジャパン
監督 スティーブン・ソマーズ
脚本 スチュアート・ビーティー
デビッド・エリオット
ポール・ラベット
出演 チャニング・テイタム
シエナ・ミラー
イ・ビョンホン
レイチェル・ニコルズ
マーロン・ウェイアンズ
デニス・クエイド
レイ・パーク
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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