元工作員のパパが誘拐された愛娘奪還にGO!
ニーソンが暴走キャラという意外な配役で大成功。
ベッソンのストイックで激しいクライム・サスペンス
リュック・ベッソン率いる製作会社ヨーロッパ・コープが製作し、ベッソンが製作総指揮と共同脚本を手がけたクライム・サスペンス。出演はこれまでにない激しいキャラクターを演じるリーアム・ニーソン、ボンドガールの経験もあるファムケ・ヤンセン、監督は撮影監督としてヨーロッパ・コープで活躍し、本作が‘04年の『アルティメイテット』に次ぐ監督第2作目となるピエール・モレル、脚本は’94年の『レオン』をはじめ、ベッソンとのコラボで知られるロバート・マーク・ケイマン。全米で予想を超える大ヒットとなった、ハードで男臭いアクション・サスペンスである。
仕事人間だったブライアンは仕事を辞めて、別居している17歳の愛娘キムとの絆を深めようと模索中。離婚した妻はキムを連れて資産家と結婚し、別世界の人間に。ブライアンはたまに会える愛娘との時間を楽しみに日々を過ごしている。が、キムが初めての海外旅行でパリに到着し、カリフォルニアにいるブライアンと電話で話している最中、キムは何者かに誘拐されてしまう。米国政府の元工作員であるブライアンがコネと能力を総動員して調べたところ、事件発生後96時間が過ぎると被害者は救出不可能という絶望的な事例であることが判明。ブライアンは愛娘奪還のためにパリへと乗り込む。
パパ=ニーソンの独壇場。キャストの人選の勝利。彼のストイックな存在感と確かな演技力によって子を思う親の心情と切迫感が伝わり、シンプルな物語を際立たせている。冴えないパパが特殊能力を全開にして孤軍奮闘し、男として父としての威厳と誇り、自信を取り戻すストーリーは、年齢性別を問わず、特に子供をもつ男性にはドーンと響く内容だろう。
愛娘を救うとあらば敵をバンバン殺しまくり、非道な脅しも辞さない。最近の映画の風潮として、敵役でも命はとらずに裁きは法に任せてなるべく人は殺さない、という流れもある中で、極端に直球の勧善懲悪を踏襲。フランス人であるベッソンがパリのアンダーグラウンドにまつわる腐敗を描き、アメリカ男がパリに乗り込んでキレまくる物語を作ったことも興味深い。そもそもこのアイディアは、実際にパリの暗黒街で起こっている本作の真相そのものについて、ベッソンがパリの警官から聞いた実話が基になっているとのこと。そして脚本家のケイメンは以前に資料で本物のスパイの実情を知った時から、秘密工作員たち特有の異様なほどの独立独行ぶりと特殊なスキルに魅力を感じていたのだそう。本作では元工作員ブライアンのキャラクターと、彼が巻き込まれていくパリの裏社会の実態がくっきりと描かれているためか、手段を選ばずイケイケドンドンなブライアンの猪突猛進ぶりも不思議と観客に受け入れられやすくなっている。
ブライアン役のニーソンは、ファイト・シーンはすべて自分で演じたとのこと。見せるバトルというより、一撃必殺の実用的で無駄のない動きは、いかにも元工作員という潔さがすがすがしい。彼自身は「もともと暴力には反対で、ブライアンの見せるタイプの暴力には特に反対」と思いながらも、我が子を守るためならできる限りのことをする、と感じたそう。撮影前に厳しいトレーニングを積んだ今回のアクションについて、「殴り合いのシーンを撮影する時は、いつも自分の中にいる少年の部分が出てきます。特にすばらしいスタントマンが相手の場合は、その闘いはまるでダンスのように楽しめるものです」と語っている。ニーソンは’93年の『シンドラーのリスト』や’99年の『スターウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』の出演で知られる人物。北アイルランド出身の俳優ながら、’99年にはイギリス王室より大英帝国勲章(OBE)を授与されており、職人的で地味ながら、知性や思慮深さを感じさせる雰囲気が魅力的な俳優だ。
ある意味、実験的なキャスティングで大成功を収めた本作。ベッソンをはじめスタッフ陣のセンスの賜物である。さて、ニーソン先生も57歳。この作品は完結しているからいいのであって、シリーズ化はしてほしくない気もするが、ネタ不足のハリウッドがほっといてくれるかどうか。ともあれ新進監督のモレルは本作の全米での成功により、東京を舞台にしたサスペンス・アクションの企画が進行中とのこと。まずはこちらが楽しみである。
公開 | 2009年8月22日公開 TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2008年 仏=米 |
上映時間 | 1:33 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
監督 | ピエール・モレル |
製作・脚本 | リュック・ベッソン |
脚本 | ロバート・マーク・ケイメン |
出演 | リーアム・ニーソン ファムケ・ヤンセン マギー・グレイス リーランド・オーサー ホリー・ヴァランス |
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