スコット監督×デンゼル×トラボルタ
ハイジャック犯と地下鉄職員のシビアな心理戦!
’74年の佳作を現代的に翻案したサスペンス
’74年の映画『サブウェイ・パニック』をトニー・スコット監督がリメイク。出演は威厳と信頼感を自然にもつオスカー俳優デンゼル・ワシントン、年を重ねて味わい深い存在となったジョン・トラボルタ、実力派のジョン・タトゥーロ。脚本は’97年の『L.A.コンフィデンシャル』でアカデミー賞脚色賞を獲得したブライアン・ヘルゲランド。恫喝するハイジャック犯と解決の糸口を探る地下鉄職員、男2人の緊迫した無線のやりとりで引きつけ、犯人の真の目的や動機がじりじりと明らかに。ニューヨークの地下鉄を舞台にシリアスに展開する、クライム・サスペンスである。
ニューヨークの午後2時。地下鉄“ペラム123号”の列車が4人組の男にハイジャックされる。ライダーと名乗る犯人のひとりからの無線連絡を運行指令室で受けた地下鉄職員ウォルター・ガーバーは、ライダーから交渉役に指名。車内に取り残された19人の乗客は人質となり、ライダーは「市長に電話して、1時間以内に100ドル札で1000万ドル用意させろ。遅れたら1分ごとに一人ずつ殺す」と要求。ガーバーは解決に尽力しようと心を決めるが、人質救出班のカモネッティ警部補から、ライダーに指名されたことや以前にあった収賄疑惑からガーバーは疑われ、運行指令室はかみ合わない雰囲気に。提示された1時間後の期限が刻々と迫る中、市長らが到着する。
犯人はどんな集団なのか、ライダーの狙いや動機とは、ガーバーは最大の危機をどうやって乗り切るか、そして最後の決着へ。ハイジャック事件だけでなく、関わる人物たちの背景やドラマにも触れ、ちょっとしたシーンにも面白さをもたせているところが魅力。交渉のスリルで引きつけるストーリーは地味で観客に飽きられてしまうものも少なくないが、本作はデンゼルとトラボルタら俳優の引力を生かし、ハイジャック以外の要素をテンポよく差し入れる演出で最後まで巧く見せている。スタッフは本作をただのリメイクではなく、現代的な新しい翻案として製作したとのこと。脚本家のヘルゲランドは、原作や’74年の映画ではさほど描かれていなかった地下鉄職員ガーバーと犯人ライダーとの奇妙なつながりをしっかりと作り上げて描写。「もっと互いに心の奥底まで探り合いをするべきだと思ったんだ」とヘルゲランドは語っている。
デンゼルは善良な小市民であるガーバーを好演。不器用ながら実直にスキルを積んできた中年男の“味”を表現している。トラボルタはライダー役を楽しんだとのこと。「悪人役は、道徳レベルを自由に調整できるし、行動範囲も広い。荒れ狂ったり冷静になったり、イカれた感じにもチャーミングにも好きなように演じることができるんだ」とコメント。冷酷に人質を射殺したかと思えば、人なつっこい笑顔でガーバーに語りかけるライダーは、その落差によって不遜な感じが伝わってくるキャラクターとなっている。
原作はアメリカの作家ジョン・ゴーディが’73年に発表したベストセラー小説『The Taking of Pelham One Two Three』。’74年に映画化された『サブウェイ・パニック』は良作として認められ、’98年には『サブウェイ・パニック1:23PM』としてアメリカでTVドラマ化も。現代版にアレンジされた本作では、数台の白バイを護衛に猛スピードで突っ走る身代金輸送車の映像が意味もなく妙にカッコイイところや、緊迫したムードの中でも「尻モデル」という単語にヘラッと笑みを浮かべる市長のだらしない表情をサッと抜くといった、まるで盗み撮りのような臨場感のあるカメラワークなどが好い。
登場する唯一の女性はガーバーの奥さんくらいで最初から最後まで男だらけ、場所は線路か運行指令室、というどこまでも男臭い物語。ドキュメンタリー風で質のいいサスペンスを求めている時におすすめの作品である。
公開 | 2009年9月4日公開 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2009年 アメリカ |
上映時間 | 1:45 |
配給 | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
監督 | トニー・スコット |
脚本 | ブライアン・ヘルゲランド |
原作 | ジョン・ゴーディ |
出演 | デンゼル・ワシントン ジョン・トラボルタ ジョン・タトゥーロ ルイス・ガスマン マイケル・リスポリ ジェームズ・ガンドルフィーニ |
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