アメリア 永遠の翼

女性として初めて大西洋横断飛行に成功した
実在の女性飛行士の成功と苦悩、恋愛、
夢を追い続けた姿を描くヒューマンドラマ

  • 2010/11/05
  • イベント
  • シネマ
アメリア 永遠の翼© 2009 Twentieth Century Fox

女性として初めての大西洋横断飛行に成功し、数々の記録により“史上最も有名なアメリカ人10人”に数えられるアイコンとなった実在の女性飛行士アメリア・イヤハートの物語を映画化。出演はオスカー女優のヒラリー・スワンク、ベテランのリチャード・ギア、実力派のユアン・マクレガーほか。監督はインド出身のミーラー・ナーイル。第一次世界大戦の終結から間もない20世紀初頭のアメリカで、男性優位の社会にありながら女性飛行士として活躍し、自由な生き方を選択したアメリアの半生を描く。颯爽とした生き様で惹きつける、事実を基にしたヒューマンドラマである。

1928年、乗客として大西洋を横断した初の女性となったアメリア・イヤハートは、アメリカで時の人に。リンドバーグの本を出版したやり手のジョージ・パットナムがアメリアの広報を担当することになり、初の著書も出版。アメリアとジョージは結婚する。そして1932年にアメリアは飛行士として単独の大西洋横断に成功し、大きな賞賛を得る。が、アメリアに広告をからませて商業的にも大成功させたジョージの手腕が裏目となり、誹謗中傷の的にも。そして1937年、アメリアは飛行士としての名誉をとりもどすべく世界一周飛行という大きなリスクを伴うチャレンジを決行する。

ヒラリー・スワンク

『レオニー』に続き、20世紀初頭に自由に恋愛し、自立した生き方を選択した女性の物語。アメリアは自身がスター的な存在で、レオニーは高名な芸術家の母でありながら知られざる存在であり、2人の生き方にたくさんの相違はあれど、ほぼ同時代に自分らしく生きた実在の女性の物語が続いて映画化されていることも興味深い。アメリカで1年前に公開された作品のようやくの日本上映ながら、時流からさほどはずれていない感覚だ。混沌とした現代において、過去の厳しい時代をくっきりと生きた先人たちの姿に注目するという視点が感じられる。

アメリアを熱演したスワンクは、姿形や歩き方、とりわけスピーチの仕方など、役作りに1ヶ月集中してアメリア本人になりきったとのこと。アメリアとスワンクはもともとの骨格や顔つき、雰囲気に近いものがあり、映画の最後に映し出されるアメリア本人の写真や映像とよく似ていることに驚かされる。スワンクは本作で製作総指揮も担当し、アメリアの理念に共感したとも語っている。ギアはアメリアを愛し、そのすべてを寛大に受け入れて支えるパートナーのジョーを好演。相変わらず理想的なジェントルマンがよく似合う。アメリアと親密になるパイロットのジーン・ヴィダル役はマクレガーが演じ、彼女を支えたもう一人の男性として印象的に登場している。

ヒラリー・スワンク

アメリアが最も愛し、最後のフライトに選んだ飛行機は、アール・デコのデザインでオレンジとシルバーのカラーが空に映えるロッキードL‐10エレクトラ。劇中では世界に現存しているおよそ10機の中から選ばれた、フランス人ジャーナリストでベテランのパイロットであるベルナール・チャベル所有の機“ヘイジー・リリー”を使用。撮影のために新しいエンジン2基を見つけてプロペラを作り、実際に飛行できるように一新したそう。“ヘイジー・リリー”は総計170時間の飛行を優雅にこなし、作品に本物がもつ力強さと説得力を与えている。

「自分もがんばろう」という前向きな自己実現の気持ちを引き出され、命を散らす前に身の丈の幸せを慈しむ大切さを痛感して。筆者は単純なので、製作側の意図のままシンプルに励まされた。個人的にタフな女性を描く作品はいつも楽しい。普通なら到底できないことを心のままにやり遂げる人たちの姿は痛快だから。あらゆるリスクを負うことをいとわず、自分の描く夢や理想、情動に忠実に生きる。はた迷惑なところも多々あれど、彼女たちの生き様は時代を経ても宝石のようにキラキラと輝く。だからその手の物語はつい観てしまうのだ。彼らの輝きに目を細めながら、ほのかな寂寥をリアルに身に感じながら。

作品データ

アメリア 永遠の翼
公開 2010年11月27日公開
TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 1:51
配給 ショウゲート
監督 ミーラー・ナーイル
脚本 ロン・バス
アンナ・ハミルトン=フェラン
出演 ヒラリー・スワンク
リチャード・ギア
ユアン・マクレガー
クリストファー・エクルストン
ミア・ワシコウスカ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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