ソーシャル・ネットワーク

世界で5億人以上がつながるFacebook
創始者は25歳で“世界で最も若い億万長者”に。
成功秘話の舞台裏、シビアな人間模様に迫る話題作

  • 2011/01/14
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ソーシャル・ネットワーク

2010年7月、全世界の登録者数が5億人を超えたソーシャル・ネットワーキング・サービスFacebook(フェイスブック)。このサイトの創始者マーク・ザッカーバーグは、アメリカの経済誌『Forbes』が発表した2010年版の世界長者番付にて“世界で最も若い億万長者”に当時25歳で選ばれ、同年の『Time』にて“Person Of The Year”に選出された――。その華々しいエピソードの裏にある、シビアな人間模様を描く。監督は’95年の『セブン』、’08年の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のデヴィッド・フィンチャー、脚本は舞台やテレビシリーズを手がけるアーロン・ソーキン。数年以内に登録者数が10億人超とも言われているフェイスブックの始まりから世界中に広がっていった経緯、その背景などを若き創始者ザッカーバーグをはじめ、3つの視点から映し出す。本国アメリカでいま最も注目を集めているセレブリティのひとりであるザッカーバーグの素顔に迫る、話題の人間ドラマである。

2003年の10月、2時間で22,000アクセスを記録したサイト“フェイスマッシュ”。このハーバード大学の女子学生を比較してランク付けをするサイトを作ったのは、同大学のコンピュータサイエンス専攻2年生のマーク・ザッカーバーグ。高校時代から凄腕のハッカーであるマークは尊大な態度からガールフレンドのエリカとケンカ別れをし、その腹いせに酔った勢いで寮の名簿に次々とハッキングして“フェイスマッシュ”を作成。大学のセキュリティシステムを軽々と突破し、全女子学生の敵となった天才ハッカーとして、マークの名前はハーバード中に知れ渡る。大学の規則違反で半年の観察処分を受けようと気にも留めず、マークは“ネット上に承認制の社交場を作る”という新しいアイディアに夢中になっていた。

2004年2月、キャメロンとタイラー、双子のウィンクルボス兄弟は、マークのアイディア盗用に憤っていた。ウィンクルボス兄弟は、ネット上に学内男女の出会いの場として“ハーバードコネクション” のサイト立ち上げをマークに依頼し、彼はそれを受諾。しかしメールや電話で催促してもサイト作成はいっこうに進まず、気づけばマークは自らが運営するサイトとして“フェイスブック”を立ち上げていたのだ。

そして2004年7月には、マークの数少ない大学の友人であり、“フェイスブック”立ち上げの際の資金1,000ドルを提供して共同創業者&CFOとして活動していたエドゥアルド・サベリンが、マークの思いがけない仕打ちに対して自らの権利を主張していた――。

ジャスティン・ティンバーレイク、ジェシー・アイゼンバーグ

天才的なひらめきと発想、それを実現できる傑出した技術と知力。そして階級や容姿に対するコンプレックス、周囲に自分を認めさせたいという強い欲求。強力なキャラクターであるマークを中心に、フェイスブックの経緯に対する三様の見解が淡々と映し出される本作。“やったもん勝ち”の論理は見ていて気持ちのいいものではないが、ビジネスの現場で日常茶飯事だろうことは誰もが知っていることで。“天才”が社会の刺激となる、画期的で有用なものを生み出し、身近にいる人々が良くも悪くもさまざまなことに巻き込まれていく、ということは想像に難くない。ただ現代の寵児であるザッカーバーグが、自身や組織のマイナスイメージになりかねないことも臆せずこの内容を出しているところ、今を実際に生きている20代の青年たちが巨額の利益や巨大な利権を背景に、自らのプライドや存在意義を賭して本気でやりあう姿には迫力がある。

原作は’08年に映画化された『ラスベガスをぶっつぶせ』の原作者として知られるベン・メズリック(この原作は、マサチューセッツ工科大学の生徒がカジノのブラックジャックで荒稼ぎをした事件をもとにした’06年の小説)。メズリックはフェイスブック創設のノンフィクションを企画し、企画の段階で出版権と映画化権を売りに出したとのこと。ソーキンは映画化権利を持ちかけられた際に企画書を3ページ読んだだけで脚本化を決断し、原作が完成する前に映画化が決定するという異例の展開に。原作者のメズリックはエドゥアルド・サベリンをはじめフェイスブックの創設にかかわった関係者へのインタビューをもとに本を執筆し、脚本家のソーキンと密に連絡を取り合いながら、原作と脚本が同時進行で書き上げたられたそう。そして監督として、製作サイドの第一希望であるフィンチャーに脚本を送ったところ、即答で快諾したという。

マーク役は’09年の映画『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグ、親友のエドゥアルド役は2012年7月公開予定のシリーズ最新作でスパイダーマンに抜擢されたアンドリュー・ガーフィールド、マークの元カノのエリカ役は『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』に主演したルーニー・マーラ、と若手俳優たちが好演。またマークに大きな影響を与えるナップスターの共同創設者ショーン・パーカー役を演じているのは、グラミー賞受賞アーティストのジャスティン・ティンバーレイク。著作権侵害でアメリカレコード協会などから訴えられ敗訴したものの、CDからダウンロードへと音楽流通の変革をひきおこす一端を担った人物を人気ミュージシャンが演じるというのも面白い。

ジェシー・アイゼンバーグ

“Social Network Service(SNS)”とは、日本ではmixiやGREE、海外ではFacebookやMySpaceを中心に、広義ではTwitterも含むといわれる、インターネット上で人と人とのネットワークを結ぶサービスのこと。Facebookの創設で収めた成功は、マークにとって心からの充足となっているのだろうか。監督のフィンチャーと脚本のソーキン、2人には本作についてそれぞれの見解がある。監督は「マークがやっていることは映画を監督することと変わりない。何かを成長させ、さらに良いものにする。それがこの映画の主題でもある。そのために他の人を傷つけなければならないのであれば、そうする。それが責任というものだ」と語り、ソーキンは「マークは創造者と同時に破壊者だ。彼は自分が抱えているすべての(コミュニケーションの)問題が解決するユートピアの実現に夢中になった。でも実際はその理想通りにはならなかった。僕はそのことを書きたかったんだ」とコメントしている。

ルーニー・マーラ、ジェシー・アイゼンバーグ

実在する当事者たち、エドゥアルドもウィンクルボス兄弟もこの作品を試写で観たとのこと。マークは貸切の映画館で会社のスタッフ全員に観せて、その後は彼らと飲みにいったという。またマークは映画の関係者にはユーモアをもって接していたとも。ビジネスの目線で観ると興味深く、ヒューマンドラマの目線で観ると複雑な気持ちにさせられる本作。本国アメリカから数々の受賞ニュースが届いているこの話題作、まずは自身の目で確かめてみてはいかがだろう。

作品データ

ソーシャル・ネットワーク
公開 2011年1月15日公開
丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 2:00
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題 The Social Network
監督 デヴィッド・フィンチャー
脚本 アーロン・ソーキン
原作 ベン・メズリック
出演 ジェシー・アイゼンバーグ
アンドリュー・ガーフィールド
ジャスティン・ティンバーレイク
ルーニー・マーラ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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