グリーン・ホーネット

M・ゴンドリー監督と個性派俳優の魅力がマッチ!
派手なアクションとコミカルな会話劇で惹きつける
3Dアクション大作にして愉快なバディムービー

  • 2011/01/21
  • イベント
  • シネマ
グリーン・ホーネット

ぬくもりのあるストーリーとポップな映像で知られるフランスの映画作家ミシェル・ゴンドリーが、1930年代のアメリカでラジオドラマから誕生したアクションヒーローの物語を3Dアクション大作にリメイク。出演は国民的人気を誇るアメリカのコメディ俳優セス・ローゲン、ミュージシャンや俳優としてアジアで熱く支持されている台湾出身のジェイ・チョウ、’09年の映画『イングロリアス・バスターズ』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツ、そしてスター女優のキャメロン・ディアスほか。派手なアクションやカーチェイス、アクの強い男2人の対抗心や友情、コミカルなやりとりが楽しいバディムービーである。

幼い頃に母を亡くし、新聞社の創業者である父に厳格に育てられたブリット・リードは、毎日パーティをしては騒ぎ立てている放蕩者。が、父が蜂に刺されて他界したため、なんの経験も目標もないまま社長として父の事業を継ぐことに。ひょんなことから解雇した父の運転手カトーを呼びつけ、彼が改造したハイテクカー“ブラック・ビューティ”を知ったブリットは、そのスーパーカーとカトーの天才的な発明の能力に惚れ込む。さらにカトーが武術の達人でもあることを知ったブリットは、街にはびこる悪人を倒すヒーローになろう、とカトーにもちかける。その頃、ジャーナリスト志望で犯罪学に明るいグラマーな美人レノアが、ブリットの秘書に着任。グリーンのスーツとマスクで変装したブリットとカトーは“グリーン・ホーネット(緑の蜂)”と名乗り、ブラック・ビューティを颯爽と駆って悪党たちを懲らしめていく。

ジェイ・チョウ

監督やキャストの降板や変更が相次ぎ、一時は製作中止の噂までささやかれた作品が、ゴンドリー監督というクリエイティブな才を得てあざやかに見参。もともと2D上映のみの予定が3Dにコンバートされることが決定し、大々的な公開に。ほのぼのとした質のいい小品で知られるゴンドリー監督がハリウッドの3Dアクション!? という期待と不安が半々の心持ちで観たものの、独特のとぼけた感覚やユーモラスな会話、アクションもどこかコミカルなニュアンスを含む、監督らしい仕上がりに。監督は本作について、「そういう種類のアクションが私のお気に入りなのです。攻撃的ではあるが同時に可笑しくもあるような、ちょうどよくそれらの要素が響き合うような感覚です」とコメントしている。

ブリット役はローゲンが持ち前のコメディセンスで、わがままなおぼっちゃまぶりを表現。劇中ではダメダメな2代目社長を演じているローゲンだが、本作では主演・共同脚本・製作総指揮を手がけ、アメリカの経済誌『Forbes』が2010年に発表した“過去5年間でもっとも働いた俳優10人”の第1位に選ばれた28歳の実力派。13歳からカナダでスタンダップ・コメディアンとして活動し、'05年に出演し共同製作を手がけた映画『40歳の童貞男』がアメリカでヒット。それから脚本や製作も務めるコメディ俳優として活躍し、プライベートでは’04年より交際していた脚本家で女優のローレン・ミラーと婚約。公私ともに充実している注目の存在だ。そして運転手のカトー役をクールに格好よく演じたのがチョウ。天才的な発明家で武術の達人、カフェをおいしく淹れてピアノを軽やかに弾き……とスマートなイケメンぶりを発揮。'60年代のTVシリーズでは無名時代のブルース・リーが演じ、主役と人気を2分するキャラクターとなったカトーを演じることについて、「チャレンジです」とコメントしている。チョウは'06年のチャン・イーモウ監督作品『王妃の紋章』や'08年のチュー・イェンピン監督作品『カンフー・ダンク!』にて、有名な武術監督チン・シウトンの指導でアクションに挑戦し、『マトリックス』や『キル・ビル』などハリウッド作品も手がける一流の武術監督ユエン・ウーピンの初監督作品『蘇乞児(英題:True Legend)』にも出演。彼はもともと作曲家として台湾でデビューした後、ポップス歌手や俳優、監督や脚本家としても才能を発揮し、日本を含むアジア圏で高い人気を誇っているスターの1人。本作では撮影中、スタントマンによる格闘シーンの振付を1回見ただけで再現できたという逸話もあり、アジアの新たなスターとして今後の活躍も期待できそうだ。また美人秘書レノア役はディアスが明るく華を添え、街を牛耳る敵役チュドノフスキーはヴァルツが冷酷に演じている。監督は当初、カトー役として出演も兼ねて香港のチャウ・シンチー(『少林サッカー』ほか)と発表されたもののシンチーが自ら降板。企画が行き詰まる中、脚本と製作を手がけるローゲンとエヴァン・ゴールドバーグが、「大ファン」であるゴンドリー監督にオファーしたところ快諾。その後カトー役には韓国のクォン・サンウが候補にあがりつつも、チョウに決定。敵役はニコラス・ケイジが辞退したのち、ヴァルツに決定したとのこと。製作が危ぶまれるほど二転三転しながらも、結果的には個性派の監督と旬の俳優たちという充実のメンバーによる製作が実現した、という経緯も面白い。

キャメロン・ディアス、セス・ローゲン

オリジナルの物語はラジオのドラマシリーズとして1930年代に発表され、その後映画やコミック、’60年代にはTVドラマ化され、人気シリーズとして有名に。オリジナルと違うところは、主人公のリードが紳士的な正義漢ではなく、わがままで身勝手な2代目社長であるところ。カトーとの関係も主従関係や対等な相棒ではなく、何かと張り合う年の近い兄弟のような、正反対の生い立ちをもつからこそ支えあえるような、ほのぼのとしたユニークな関係となっている。

ジェイ・チョウ、セス・ローゲン

宇宙人でも突然変異でもないヒーロー願望のある普通の青年が、仲間とともに悪党に立ち向かう。そして主人公が情けなく、準主役がカッコイイ。この概要は’09年の映画『キック・アス』とよく似ている。本作は大人向け、キック〜が若い世代向け、という感覚だろうか。本作のあるシーンでは「それはミドルエイジ・クライシス(中年の危機)ってやつじゃないのか?」と、マスコミがシリアスに取り上げている時事のキーワードを、シニカルな笑いの間(ま)で繰り出したりも。クライスラーを改造したハイテク武装車ブラック・ビューティの派手な装備やカーアクションはもちろん、ゴンドリー監督が引き出す俳優たちの魅力を楽しめる本作。いわゆるハリウッドのアクション大作とはひと味ちがう、ポップに意表をついてくる面白味をお験しあれ。

作品データ

グリーン・ホーネット
公開 2011年1月22日公開
丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
制作年/制作国 2011年 アメリカ
上映時間 1:59
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題 The Green Hornet
監督 ミシェル・ゴンドリー
脚本・製作総指揮 セス・ローゲン
エヴァン・ゴールドバーグ
原案 ジョージ・W・トレンドル
出演 セス・ローゲン
ジェイ・チョウ
キャメロン・ディアス
クリストフ・ヴォルツ
エドワード・ジェームズ・オルモス
トム・ウィルキンソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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