トゥルー・グリット

コーエン兄弟×ジェフ・ブリッジス×マット・デイモン
父の敵を討つため、14歳の少女は復讐の旅に出る
確固たる信念と絆、“真の勇気”を描く冒険活劇

  • 2011/03/04
  • イベント
  • シネマ
トゥルー・グリット© 2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

ジョエル&イーサン・コーエンが監督・脚色・製作、出演はオスカー®俳優のジェフ・ブリッジス、実力・人気ともにトップクラスのマット・デイモン、そして主人公には1500人のオーディションから選ばれ今回が映画初出演の新人女優ヘイリー・スタインフェルドほか。製作総指揮にはコーエン兄弟と初コンビとなるスティーブン・スピルバーグが名を連ねる。西部開拓時代のアメリカを舞台に、父親を殺された少女が復讐の旅へ――。少女と老年の男と青年という年齢や性別を超えた結びつき、強靭な意志と信念をもつ3人が、それぞれの思惑でひとつの目的を目指して進む、普遍性を感じさせる冒険活劇である。

1878年のアメリカ、アーカンソー州のフォートスミス。文明化された最西端の町と呼ばれ、州境のすぐ向こう側には逃亡中の犯罪者たちが潜伏する場所に、14歳の少女マティが到着する。雇い人のトム・チェイニーに撃ち殺された父親の遺体を確認するためだ。そして復讐を心に固く誓ったマティは、“トゥルー・グリット(真の勇気)”をもつというアイパッチの連邦保安官ルースター・コグバーンに犯人の追跡を依頼。コグバーンは子供のたわごとと最初は相手にしなかったものの、現金の報酬とマティの少女らしからぬ執念と根性を目の当たりにして依頼を引き受ける。そこへ別の容疑でチェイニーを追ってきたテキサス・レンジャーのラビーフも加わり、3人は緩衝地帯という名の無法地帯へ追跡の旅に出る。

ヘイリー・スタインフェルド、マット・デイモン、ジェフ・ブリッジス

悲惨でも絶体絶命でも、復讐に燃えていても殺し合いをしていても、どんな状況にもユーモアは必ずあり、オフビートの“間(ま)”が刻まれる。逃げる側と追う側、捕まえる側と捕まる側、助ける側と助けられる側……登場人物の立場や状況、主導権が絶えずあちこちへいったりきたり、物語全体がくんづほぐれつ混戦する大格闘のようになっているところが面白い。バイオレンスありヒューマンあり、コーエン兄弟の濃い旨味がこれでもかと味わえる作品だ。スピルバーグが製作総指揮に参加しようといつもと同様、もしかしたらそれ以上にコーエン兄弟は腕を揮っている。意外にも相性がいいのだろうか。

隻眼のコグバーンを演じたブリッジスは、アルコール漬けでだらしないながらも、本能的な判断力と長年の経験で立ち回る老練な保安官を好演。性格や生活が破綻していても仕事はデキる、という役が本当によく似合う。テキサス・レンジャーのラビーフを演じたデイモンは、実力はあれど経験が浅く土地勘のない若輩をコミカルに演じている。命がけの旅の最中、ソリの合わないコグバーンとラビーフが何かと張り合うところが可笑しい。主人公の少女マティを演じたスタインフェルドは、ブリッジスに「掘り出し物」、デイモンに「見事な演技」、イーサンに「動じたり怖気づいたりすることがまったくない」と言わしめた驚異の14歳。本作で数々の賞を受賞し、大きな注目を集めている。スタインフェルドは「あれほど素晴らしい俳優の方たちと一緒に自分が映画を作っていることが、なかなか信じられませんでした。自分の望みどおりの場所にいられることにとても感謝しています」と落ち着いたコメントをしている。劇中のマティとコグバーンとラビーフの奇妙な結びつきは家族のようで、ほのぼのとするシーンも。そして殺人犯チェイニー役は、2007年のコーエン兄弟監督作『ノー・カントリー』でブレイクしたジョシュ・ブローリンが姑息に、ならず者をまとめるラッキー・ネッド役はカナダ出身のバリー・ペッパーが、悪党なりの筋と面子(めんつ)を重んじる男を印象的に演じている。

ヘイリー・スタインフェルド、ジェフ・ブリッジス

コーエン兄弟が「僕らが作るのは映画のリメイクではない。チャールズ・ポーティスが書いた原作の新たなバージョンを作るんだ」と語ったという本作。原作は存命するアメリカの作家チャールズ・ポーティスが1968年に発表し、多くの作家が最高傑作と称える同名の小説。自由の精神と不屈のアメリカン・スピリットを伝える文学として学校の教材に使われ、世界で何百万部超のベストセラーに。1969年には『True Grit(邦題:勇気ある追跡)』として映画化され、主演のジョン・ウェインがオスカー®を獲得したことでもよく知られている。コーエン兄弟も多くのアメリカ人と同様にポーティス作品のファンとのことで、イーサンは「僕らが読んだチャールズ・ポーティスの本の中で、これが特に映画化に適したものに思えた」とコメントしている。

ジェフ・ブリッジス、ヘイリー・スタインフェルド

本国アメリカでは興行収入1億ドルを突破し、コーエン兄弟の歴代作品で No.1ヒットとなった本作。2011年の第83回アカデミー賞では作品・監督・主演男優・助演女優・脚色賞など主要5部門を含む10部門にノミネートされながら無冠に終わったが、この作品の真の価値は、世界中の観客には伝わるはずだ。彼らの物語には勇気と人情と根性と、血と涙と笑いと、ゆるぎない信念と絆とがくっきりと焼き付けられている。人の生命力を揺さぶり、ダイレクトに訴えかけてくる力強い何かが。

作品データ

トゥルー・グリット
公開 2011年3月18日公開
TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 1:43
配給 パラマウント ピクチャーズ ジャパン
原題 True Grit
脚本・監督 脚本・監督
原作 チャールズ・ポーティス
監督・製作・脚色 ジョエル&イーサン・コーエン
製作総指揮 スティーブン・スピルバーグほか
出演 ジェフ・ブリッジス
マット・デイモン
ヘイリー・スタインフェルド
ジョシュ・ブローリン
バリー・ペッパー
ブルース・グリーン
マイク・ワトソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。