ジュリエットからの手紙

1通の古い手紙が呼び起こす50年前の恋
急逝したゲイリー・ウィニック監督の最後のギフトは
みずみずしくアットホームなラブ・ストーリー

  • 2011/04/22
  • イベント
  • シネマ
ジュリエットからの手紙© 2010 Summit Entertainment,LLC.All Rights Reserved.

「もしもあの時…」1通の古い手紙をきっかけに、50年前の想いが生き生きとよみがえる。シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』の舞台であるイタリアのヴェローナの街をめぐる、ロマンティックな恋物語。出演はオスカー女優のヴァネッサ・レッドグレイヴ、2008年の映画『マンマ・ミーア!』のアマンダ・セイフライド、メキシコ出身の人気俳優ガエル・ガルシア・ベルナル、’06年の映画『エラゴン 遺志を継ぐ者』の若手俳優クリストファー・イーガン、ベテランのイタリア人俳優フランコ・ネロほか各国の俳優たちが豪華共演。監督はインディーとメジャー両方の作品づくりで知られるゲイリー・ウィニック。ヴェローナの美しい景色や建造物を背景に、イギリスのシニア女性とアメリカの20代女性の恋を軽妙に描く。爽やかでアットホームな、王道のラブ・ストーリーである。

アメリカのニューヨーク。雑誌『ニューヨーカー』の調査員として働くライター志望のソフィは、レストランのオープンを間近に控えるヴィクターと婚約中。2人はプレ・ハネムーンでイタリアのヴェローナを訪れるものの、ヴィクターはレストランの買い付けや仕入れに忙しく、ソフィは別行動をすることに。人気観光地のひとつ“ジュリエットの家”でジュリエット宛の恋愛相談の手紙に興味を抱いたソフィは、ボランティアで返事を書く手伝いをすることに。そしてある日、50年前に書かれた古い手紙を壁のすき間から発見。その手紙の送り主のイギリス人の女性宛に、ソフィは返事を書き送る。

アマンダ・セイフライド

シンプルにハッピーな気分にしてくれるラブ・ストーリー。メインはソフィを演じるセイフライドのイメージと同じ10〜20代の女性向けの物語であるものの、素敵なシニア女性のクレアが準主役で、彼女の初恋をたどる物語でもあることから、大人の女性にも楽しめる仕上がりだ。男性には多少スウィートすぎる内容だとは思うが、美しいヴェローナの街を車で旅するロードムービーの感覚も多少はあるので、デートムービーとしても人気となりそうだ。

好奇心旺盛なライター志望のソフィ役は、セイフライドがフレッシュに好演。キュートな美人でグラマーな彼女は、ヒロインとしての魅力をキラキラと放っている。50年前の初恋の人を探すという途方もないチャレンジをするモダンな女性クレアは、レッドグレイヴが上品かつチャーミングに演じている。ソフィの婚約者ヴィクター役はベルナルがハイテンションに、クレアの孫で堅物なイギリス人チャーリー役はイーガンがシャイに、ロレンツォ役はネロが情熱とぬくもりのある成熟したイタリア人男性として演じている。劇中でいい雰囲気を醸しているレッドグレイヴとネロは、実生活で正真正銘の夫婦。それも’67年の映画『キャメロット』の初共演をきっかけに付き合い、’69年には息子が誕生。その後、それぞれに別の道を歩んでいたものの、40年後の’06年にイギリスとイタリアという国籍の違いを超えて結婚……と、物語さながらのドラマを経て結ばれたとのこと。そんなリアルな幸せエピソードが背景としてあるところも、なかなか心憎い。

アマンダ・セイフライド、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、クリストファー・イーガン

イタリアの撮影はユネスコの世界遺産として’00年に登録された“ヴェローナ市街”とその近郊にて。ジュリエットのモデルとなったカプレーティ家の娘の邸宅“ジュリエットの家”はもちろん、古代ローマ時代の紀元前1世紀初頭につくられたという円形闘技場アレーナや、14世紀に建てられた城で今は市立美術館となっているカステロ・ヴェッキオなどの歴史的建造物、白ワインで有名なオリーブ林に囲まれた土地ソアヴェ、イタリア最大の湖であるガルダ湖などで撮影。広大な葡萄畑や緑豊かで風光明媚なヴェローナを気ままに旅しているかのような映像も気持ちいい。

アマンダ・セイフライド、ヴァネッサ・レッドグレイヴ

’10年の5月に全米で公開後、その影響で“ジュリエットの家”には通年の約8倍である4万通ものジュリエット・レターが届いたという話題作。ウィニック監督は今年の2月27日に脳腫瘍により急逝し、本作が遺作となった。享年49歳。ウィニック監督は’03年の映画『エイプリルの七面鳥』の製作や’09年の映画『ブライダル・ウォーズ』の監督など、インディーとメジャーの両方でヒューマンドラマやラブコメディを手がけてきた人物。心ある映画作家が早すぎる死を迎えたことが、本当に惜しまれる。監督が最期に遺した本作はかろやかにすがすがしく、私たちを楽しませてくれる作品だ。世界中のロマンチストたちが楽しんでいることを、監督もきっと喜んで見守っているに違いない。この映画は美しい風景とほほえみ、みずみずしい恋する気持ちを届ける、ウィニック監督からの最後のギフトである。

作品データ

ジュリエットからの手紙
公開 2011年5月14日公開
Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
制作年/制作国 2011年 アメリカ
上映時間 1:45
配給 ショウゲート
原題 Letters to Juliet
監督 ゲイリー・ウィニック
脚本 ホセ・リベーラ
ティム・サリヴァン
出演 アマンダ・セイフライド
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ガエル・ガルシア・ベルナル
クリストファー・イーガン
フランコ・ネロ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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