ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー

いま全米で爆発的人気を誇るポップスターの素顔とは?
JB少年の成長を描くサクセス・ストーリーにして、
ポジティブな気分をあげる音楽ドキュメンタリー

  • 2011/04/28
  • イベント
  • シネマ
ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー© 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

カナダに暮らす12歳の少年の家族がYouTubeにアップした映像をきっかけに、全米でトップクラスのポップスターに。17歳となった今この時も成長し続けているジャスティン・ビーバーの活動秘話をとらえたキュートなドキュメンタリー。全米で2011年2月11日に公開され、マイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』のアメリカ国内における最終興行収益を公開から40日で上回り、音楽ドキュメンタリー映画として歴代1位を獲得した話題作である。生来の才能以外は何の後ろ盾もない、ひとりのカナダ人少年が思春期を迎え、周囲も本人も予想していなかったほどの爆発的な人気を誇るスターとなった経緯と、彼の素顔、家族や友人との交流、スタッフと一丸となって作り上げていく音楽活動の現場を映し出す。JB少年が主人公のリアルな成長物語にしてサクセス・ストーリー、有名アーティストが多数登場するコンサートシーン満載のポジティブな音楽ドキュメンタリーである。

「一生懸命育てただけ。特別なレッスンは何も受けさせていません」。おだやかな笑顔で語るのは、10代でジャスティンを生んだシングル・マザーのパティー。両親はJBが生後10ヶ月の時に離婚し、彼は母と祖父母に見守られてカナダで育つ。子供の頃におもちゃとして買い与えられた打楽器(ジャンベのような)を、ハッとするような良いリズム感で叩く当時の映像が流れる。周囲のすすめもあって2歳で子供用のドラムを叩きはじめると、数年後には通常のドラムセットを使い、アマチュアバンドのステージでジャズの演奏に参加するほどの腕前に。またシアターの前で自分の体と同サイズくらいのアコースティックギターで弾き語りをし、地元で評判に。12歳で地元の音楽コンテストで2位を取り、親戚や友だちに見せる目的でYouTubeに投稿した映像が評判となり、So So Defのマーケティング部門の重役スクーター・ブラウンからスカウトの連絡が入る。

ジャスティン・ビーバー

家族や友だち、スタッフの証言やオフショット、幼い頃の映像を交え、JB16年間の生い立ちとサクセスを紹介。2歳の子供がドラムを操り、数年後にはマイケル・ジャクソンのデビュー当時を彷彿とさせるキレイなハイトーンヴォイスでギターを弾き語り、12歳でアッシャー、スティービー・ワンダー、Ne-Yo、MJなどさまざまな曲を歌い上げ……。JBのプロフィールにある「独学でドラム、ギター、ピアノ、トランペットを習得したR&Bシンガー・ソングライター」という音楽的才能も、実際に当時の映像で観ると改めて驚かされる。JBといえばトントン拍子でスターダム、というイメージだったが、現在のマネージャーのスクーターがスカウトするも何の後ろ盾もないことから、レコード会社の契約が決まらず、人気R&Bアーティストのアッシャーに面会して才能を認められ、レコード会社と契約したと思ったら今度はアルバム制作がなかなか始まらず……とつまづきはいろいろあったことも、本作で語られている。

個人的にアルバムとプロフィールだけだと、才能とチャンスに恵まれた苦労知らずのティーンアイドル、というさもない印象だったが、この映画を観たらすっかりJBを見守るファンの目線に。そもそもJBの面白いところは、デビューのきっかけとなった動画サービスのYouTubeに始まり、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・メディアを使いこなし、現代アメリカ音楽シーンの寵児となったところ。JBのファン“ビリーバー”たちはそれぞれに、「私が彼を見つけたの」「彼と結婚するわ」と私的なつながりを主張してとても熱心であることは、本作からもよく伝わってくる。全米のジャスティン・フィーバーについて、CDのリリース資料などで数字や評判は知っていたものの、その様子を実際に見るとJB人気の凄まじさがよくわかる。このあたりはアメリカの最新音楽シーンにおける現象のひとつとして興味深い。日本ではまだそこまでの人気はないものの、当初は東京と大阪の2館限定公開だったところファンの要望によって公開館数をじりじりと増やし、現時点では14館で公開が決定。今年は5月4日に本作のサウンドトラック『ネヴァー・セイ・ネヴァー〜映画公開記念盤』が発売され、初のジャパンツアーで5月に来日。17日に大阪、19日には日本武道館でコンサート(洋楽アーティストで最年少の武道館公演)と、日本でもさらなる注目を集めそうだ。

ジャスティン・ビーバー、ジェイデン・スミス

出演はJB、実母のパティー・リン・マレット、祖父母、マネージャーのスクーター、音楽とショービジネスの師として彼をサポートするアッシャー、思春期のやんちゃな少年を時には叱り、時には諭し、ふざけてじゃれ合うなど家族のように彼を支えるスタッフたち、目をハートにしてJBを語るファンの女の子たち。彼に寄せるコメントはとてもあたたかい。コンサートシーンでは、アッシャーや全米トップアイドルのマイリー・サイラス、俳優ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミスの息子ジェイデン・スミスらが登場。本作のメインテーマ曲であり、’10年のリメイク作品でジェイデンの主演映画『ベスト・キッド』のエンディングテーマ曲である「ネヴァー・セイ・ネヴァー feat. ジェイデン・スミス」をステージで熱唱している。また3D作品として一番の見どころは、コンサートシーンでJBが観客に向かって手を差し伸べるところ。この臨場感がたまらない、というファンがいるだろうことは納得だ。

ジャスティン・ビーバー、アッシャー

シングル「ベイビー feat. リュダクリス」はYouTubeで2010年に最も再生されたNo.1映像であり現在は10億ビュー超、ツイッターのフォロワー数は現時点で920万人超、レディー・ガガに次いで世界第2位。音楽シーンではデビューアルバムの発売前に4曲を全米チャートTOP 40 に送り込んだ史上初のソロ・アーティストであることをはじめ、さまざまな“最年少記録”が飛び交う。彼がこんなにも全米で愛される理由とは? 彼氏にしたい、結婚したい、お兄ちゃんにしたい、弟にしたい、息子にしたい……と、まるで本当に手が届きそうな身近なイメージがあること。ソーシャル・メディアを通じてファンとやりとりをしているところも大きい。もともとスター願望があったわけではない、とJBは語る。「僕は普通の子供として故郷でスポーツをしていたって、十分満足だったと思うんだ。ただ今、すばらしい経験をしていることは確かだね」。そしていちアーティストとしてのメッセージとは。「僕はほかの人たちにポジティブな刺激を与えたいんだよ。僕が伝えたいメッセージは、“誰だって本気になればどんなことでもできる”ってこと。僕は大学にも行きたいし、とにかくひとりの人間として、もっと向上していきたいんだ」。この前向きなパワーこそ人気の源。このパワーを音楽にパフォーマンスに転化して表現し続けていく。人気者の常としてアンチ派からバッシングの対象になっているようだが、それも軽くハネ返していけるだろう。「Never say never!(できないなんて言うな!)」と高らかに歌いながら。

作品データ

ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー
公開 2011年5月7日公開
TOHOシネマズ六本木ヒルズほか3D限定公開
制作年/制作国 2011年 アメリカ
上映時間 1:45
配給 パラマウント ピクチャーズ ジャパン
原題 JUSTIN BIEBER NEVER SAY NEVER
監督 ジョン・M・チュウ
出演 ジャスティン・ビーバー
アッシャー
スヌープ・ドッグ
ボーイズUメン
マイリー・サイラス
ジェイデン・スミス
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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