アンダルシア 女神の報復

外交官・黒田康作がスペインを舞台に国際犯罪に挑む
日本人投資家殺害事件を機に露見する真実とは?
美しい風光や街並を背景に映すアクション・サスペンス

  • 2011/06/24
  • イベント
  • シネマ
アンダルシア 女神の報復© 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー/FNS27社

織田裕二主演の外交官・黒田康作シリーズ、映画第2弾が公開。2009年の映画『アマルフィ 女神の報酬』ではローマ〜ナポリ、’11年のTVドラマ『外交官 黒田康作』ではサンフランシスコ〜メキシコ〜東京、そして今回はフランスのパリ〜アンドラ公国〜スペインのバルセロナ〜アンダルシアを黒田が駆ける。共演は伊藤英明、黒木メイサ、谷原章介、鹿賀丈史、福山雅治、戸田恵梨香ほか。監督は前作に続き、TVドラマのディレクターであり映画監督としても活躍する西谷弘。ヨーロッパの自然や街並を背景に、ダイナミックなカースタントや銃撃戦などのアクションで魅せる、シリアスなサスペンス・ドラマである。

パリで開催される国際会議の仕事をしている黒田のもと、日本人投資家の川島が殺害されたと連絡が入る。その調査を命じられた黒田は、フランスとスペインの国境にあるアンドラ公国の現場へ。スキーリゾートにあるホテルの部屋では、遺体の第一発見者でありビクトル銀行行員で通訳をつとめる新藤結花が立ち会い、インターポール捜査官の神足誠が警察官とともに現場検証を行っていた。事件についてどこか納得しきれない感覚を黒田が抱く中、新藤結花が何者かに襲われる。

邦人を守るべく、スーパー外交官の黒田康作が活躍するシリーズ最新作。前作同様、洋画さながらのロケーションやアクションが盛り込まれたはなやかな仕上がりだ。ストーリー展開が読めるところもあれど、ヨーロッパの風光や文化、建築や音楽などが取り入れられ、映画としてわかりやすい魅力がある。

織田裕二、伊藤英明

黒田康作役は織田がストイックな雰囲気で。過去の事件からトラウマを負う新藤結花役の黒木メイサ、インターポール捜査官の神足誠役の伊藤英明とともに事件の真相に迫ってゆく。今回は脅える新藤結花のケアと、組織の立場にとらわれる神足誠との対立から、黒田がクールなスタンスを守りきれない場面も多々あり、見どころのひとつになっている。ジャーナリストの佐伯役の福山雅治、新米外交官となった安達役の戸田恵梨香、黒田の上司である邦人テロ対策室室長の安藤役の鹿賀丈史とシリーズでおなじみの面々、そして投資家の川島役に谷原章介、財務大臣の村上役に夏八木勲と充実のキャストで。今回は『アマルフィ〜』の天海祐希や佐藤浩市、『外交官 黒田康作』の香川照之のように、存在感や重みのある演技派がメインキャストにいないため、人間ドラマの面がやや弱いものの、ストレートなアクションやサスペンスでより若い世代に共感を得るイメージだ。

原作者の真保裕一は、アニメーションディレクターを経て、’91年に『連鎖』で第37回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビューをした人物。黒田康作シリーズは’09年に『アマルフィ』、’10年に『天使の報酬』、そして’11年6月に『アンダルシア』を発表している。また西谷弘監督はドラマディレクターとして’03年の『白い巨塔』、’07年の『ガリレオ』、’09年の『任侠ヘルパー』など多数の作品を手がけ、’05年に映画『県庁の星』で映画監督デビューをしてからは’08年『容疑者Xの献身』など映画も手がけ、細部のディテールまでこだわる丁寧な演出で知られている。

主題歌は、『アマルフィ〜』でサラ・ブライトマンが歌っていた「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を、クラシカル・クロスオーバーのジャンルで人気の4人組の男性ヴォーカル・ユニットIL DIVO(イル・ディーヴォ)が歌うヴァージョンになり、TVドラマと同じ流れに。6月8日に行われた本作の完成披露試写会には彼らが来日し、オーケストラをバックに「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を歌い上げ、彼らが世界で始めてこの曲をライヴパフォーマンスしたことも話題となった。

黒木メイサ、織田裕二

大規模な海外ロケにより、美しい景色や建物が楽しめるのも黒田康作シリーズの特徴のひとつ。今回はパリの路地裏のカフェに始まり、タックス・ヘイヴンとして知られるアンドラ公国ではスキーリゾートのシーンを、スペインの首都マドリードに次ぐ第2の都市バルセロナでは大がかりなアクションシーンを、イスラム教徒に支配されていた時代の伝統的な建物や文化が色濃く残るアンダルシア地方では、クライマックスのシーンを撮影。特にアンダルシアではいくつかの街でロケが行われ、草原のシーンはヘレスで、フラメンコや闘牛場のシーンはセビリアで、そしてロンダの旧市街と新市街を結ぶヌエボ橋の空撮シーンは、郷愁と孤高の趣をもつ独特の佇まいを美しくとらえている。

伊藤英明、黒木メイサ

タックス・ヘイヴンにおける資金洗浄をはじめ、現代のダーティな社会問題をテーマにドラマが展開する本作。黒田は真実にたどり着くことができるのか? 製作は『踊る大走査線』シリーズの亀山千広ほか。フジテレビにのせられているとか観光映画なんてとか思う向きもあるだろうが、幅広い世代の人々に期待されている作品であることも確か。興行収入ランキングにおける、今夏の本命映画のひとつであることは間違いない。

作品データ

アンダルシア 女神の報復
公開 2011年6月25日公開
全国東宝系にて全国ロードショー
制作年/制作国 2011年 日本
上映時間 2:05
配給 東宝
監督 西谷 弘
原作 真保裕一
脚本 池上純哉
音楽 菅野祐悟
製作 亀山千広ほか
出演 織田裕二
黒木メイサ
戸田恵梨香
福山雅治
伊藤英明
鹿賀丈史
谷原章介
夏八木 勲
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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