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かの古典文学を充実のスタッフとキャストでモダンに映画化。出演は2010年の映画『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の主演に抜擢された19歳のローガン・ラーマン、初の悪役を演じる美形俳優のオーランド・ブルーム、すっかりアクション女優としていくつもの代表作を誇るミラ・ジョヴォヴィッチ、’09年の映画『イングロリアス・バスターズ』の怪演でアカデミー賞助演男優賞を受賞したクリストフ・ヴァルツほか。監督・製作は’10年の映画『バイオハザード�W アフターライフ』のヒットが記憶に新しいポール・W・S・アンダーソン。これまで映画や舞台などで何度も描かれてきた世界を一新し、当時の科学や芸術をもとにアイディアをふんだんに織り交ぜ、ストーリーを大胆にアレンジ。陰謀に格闘、恋あり友情あり。歯切れよくスカッと楽しめる、華麗なるアクション・アドベンシャーである。

17世紀のフランス。若いルイ13世が王位を継承し、狡猾なリシュリュー枢機卿が全権を掌握しようと目論む不穏な時世。フランスの三銃士に憧れる青年ダルタニアンが、フランス南部の田舎からパリに上京。成り行きで銃士に加わったダルタニアンは、陰謀によって奪われたフランス王妃の首飾りを取り返すべく、三銃士のアトス、ポルトス、アラミスとともにイギリスへ向かう。ロンドンでは目的のためには手段を選ばないバッキンガム公爵と、過去に三銃士を裏切った謎の美女ミレディが彼らを待ち受けていた。

人気俳優たちがはなやかに活躍するエンタテインメント大作。細かいストーリー性うんぬんよりも、それぞれのキャラクターがくっきりとしているところがポイント。仲間内のテンポのいいやりとりや恋の駆け引き、腹に一物ある者同士の探りあいなど、人々の思惑が絡みあって状況が動く、という流れで観る者を物語に引き込んでゆく。

夢見る青年ダルタニアン役は、ラーマンが初々しくさわやかに表現。本作の撮影時、ラーマンはダルタニアンと同じく18歳。ダルタニアン役を18歳の俳優が演じるのは史上初だそうで、アンダーソン監督は「ダルタニアンを正しい年齢の俳優が演じるのに100年かかった」と誇らしげにコメントしている。気分次第で誰にでも寝返る美女ミレディ役はジョヴォヴィッチが生き生きと。キレのいい動きが鮮やかで年齢不詳、非道な仕打ちをしても憎まれないキャラクターは、『ルパン三世』の峰不二子さながらで痛快だ。自信家で行動力のあるバッキンガム公爵役はブルームが堂々と。『パイレーツ・オブ・カリビアン』ほか数々のオファーを退けて本作を選んだそうで、現在34歳の彼はジョニー・デップのような大人の演技派もしくは個性派俳優にシフトしたい、というところだろうか。つい個人的には“紅顔の美少年”から美青年→ 美中年でよいのでは、と思ったり。いずれにしても、きっとあるだろう続編での活躍に期待したい。スパイを雇い軍人を動かすリシュリュー枢機卿役はヴァルツが飄々と。そぎ落とした“静”に際立つ異様な緊張感、という例の持ち味はさほど引き出されていないものの、確かな演技力で作品に安定感を与えている。もちろん三銃士を演じた、真面目な頭脳派アトス役のマシュー・マクファデイン、女性にモテるアラミス役のルーク・エヴァンス、身ひとつで敵を蹴散らすポルトス役のレイ・スティーヴンソンも活躍。やや地味ながらもストーリーの基盤を支えている。またダルタニアンが一目惚れする王妃の侍女コンスタンス役は若手女優のガブリエラ・ワイルドがコケティッシュに演じ、若い2人の恋もかわいらしい。

本作の監督・製作を手がけたアンダーソンは、“バイオハザード”シリーズの第1作の監督・脚本・製作、続編の第2、第3作目で製作と脚本のみを担当し、第4作目の『バイオハザード�W アフターライフ』で再び監督・脚本・製作を手がけて大ヒットとなり、現在シリーズ5作目を準備中という人物。監督は語る。「私はこれまで、ゾンビや怪物など邪悪な力で動かされるものを多く撮影してきました。今回初めて普遍的な古典をあつかうことになりましたが、古典でありつつも、まったく新しく、ユーモア、愛、友情、強い忠誠心を融合させた物語にすることに注力してきたのです。本作には、飛行船での格闘シーン、剣のアクションシーンなどが数多く登場します」。また日本製のゲームソフトが原案の映画“バイオ〜”が自身の代表作であり、親日家である監督は本作について、「（アクションシーン製作）その過程で、日本の『キャプテン・ハーロック』『宇宙戦艦ヤマト』『オーディーン 光子帆船スターライト』などを参考にみました。劇場でご覧になる皆さんには、これまで誰も見たことがない3Dでの歴史の断片を見ることができます。そして、それはまるで自分がおとぎ話の中に入っているような感覚でご覧いただけると思います」とコメントしている。またアンダーソン監督はプライベートではジョヴォヴィッチの夫（夫妻にはひとり娘がいる）であり、彼女の見せ方をよく心得ているところも好い。

製作サイドおすすめの見どころは、飛行船同士の空中戦。17世紀当時、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた飛行船の設計図が完成したという設定で、クラシックなインテリアに砲弾などを搭載した実戦的な船となっている。クライマックスに繰り広げられる激戦はなかなかのものだ。また劇中では建造物やファッションが豪華。大理石や真鍮などを用いた当時の優美なデザインに、戦闘や諜報向けにモダンなアレンジが施されたからくり式のトラップやミレディのドレスなどが楽しい。

物語の舞台はイタリア、フランス、イギリスであるものの、撮影は理想的な場所があったドイツを中心に行われたとのこと。劇中には、映画撮影は初となる世界遺産“ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場”より壮麗なレジデンツが登場。ドイツの建築家バルタザール・ノイマンによってヴェルサイユ宮殿をモデルにバロック様式で設計された宮殿は、本作ではルイ十三世や王妃たちの住まいとして映されている。またルーヴルの庭園やロンドン塔、ノートルダム寺院などが映し出され、ヨーロッパの伝統的な名所の数々を眺められることも特徴だ。

3Ｄと2Ｄの同時公開である本作。アンダーソン監督は『アバター』のジェームズ・キャメロン監督から3Dの魅力を伝授され、初めて3Dで撮影した『バイオハザードIVアフターライフ』は日本だけでも興行収入47億円の大ヒットに。本作ではバイオ〜撮影時よりも技術が進化したことから、重量の軽いステディカムを含むARRI ALEXAの3Dカメラを同時に8台使用。監督は1シーンの撮影ごとに出演者と一緒に3D変換した映像を、3Dメガネをかけてその場で確認しながら撮影を進めていったそうだ。

「ALL FOR ONE,ONE FOR ALL（みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために）」とは、誰もが知る三銃士の合言葉。親日家の監督は俳優たちから了承を得て、東日本大震災の復興を支援する『All for one, One for all　34（サンジュウシ） for JAPANチャリティプロジェクト』を提案。三銃士（サンジュウシ＝34）にちなんでオリジナルステッカー付き前売券の売上1枚につき34円を義援金として日本赤十字社に寄付するキャンペーンを実施したことも話題に（限定30,000枚、2011年7月29日〜9月30日の期間限定販売）。そして第24回 東京国際映画祭では公式オープニング作品として出品され、日本公開日前の10月22日に特別上映も。映画祭の盛り上がりの中、注目作品をいち早く観に行くのも楽しいだろう。