ラブ&ドラッグ

ジェイク・ギレンホール×アン・ハサウェイ
製薬会社のセールスマンが美人の難病患者をナンパして…
コメディ→シリアスへと転調する実験的な恋愛ドラマ

  • 2011/11/18
  • イベント
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ラブ&ドラッグ© 2011 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

人気俳優の共演によるシンプルなロマンティック・コメディのようでありながら、シリアスな要素を含んでいる物語。2005年の映画『ブロークバック・マウンテン』で夫婦役を演じたジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイが再共演し、恋人同士を演じる。監督は映画『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック。大手製薬会社に勤めるセールスマンのジェイミーは、難病を患いながらもタフでセクシーなマギーと出会い、互いに軽いノリでベッドをともにするが……。恋愛の高揚を軽快に、病を患うパートナーとの関わりについてシリアスに描く、ある意味で実験的なドラマである。

女性を口説くことが得意でモテるジェイミーは、身近な女性たちと楽しむ気楽な日々を過ごしている。医学部を中退して医者の両親を失望させて以来、家族の中で微妙な立ち位置になっていた彼はある日、事業を成功させた弟の紹介で、世界最大の製薬会社ファイザー製薬のセールスマンとして就職。そして営業先の病院で、パーキンソン病患者の美人マギーと出会い、話の流れで体の関係に。2人とも割り切った関係を楽しんでいたが、ジェイミーが次第にマギーにのめりこんでいく。が、マギーは難病を患う自分が相手の負担になることや、いつか気持ちが離れていくかもしれないことを恐れ、ジェイミーの気持ちを頑なに拒んでいた。その頃、ファイザー製薬でED治療薬バイアグラが開発され、販売許可を得たジェイミーは得意ジャンルの薬をイキイキと売りさばいていく。

アメリカでも日本でも、ただのラブ・コメディというイメージで宣伝されている本作。実際は難病と関わっていくことについて、真面目に描かれている側面もある。この映画は人気俳優の共演により20世紀フォックスで製作された作品だが、日本では小規模の公開に。難病患者である大人の女性の恋愛をコミカルに描いているあたりが、“不謹慎”と受け取られる可能性があるからだろうか。

アン・ハサウェイ、ジェイク・ギレンホール

原作はファイザー製薬の元セールスマンであるジェイミー・レイディが自らのエピソードを執筆し、2005年に発表した『Hard Sell: The Evolution of a Viagra Salesman(邦題:全米セールスNo.1に輝いた〈バイアグラ〉セールスマン 涙と笑いの奮闘記)』。あくまでも原作はジェイミーの話であるが、映画化にあたりラブ・ストーリーを盛り込むことが決まり、マギーという架空のキャラクターを登場させてロマンティック・コメディにしたとのこと。映画ではセールスマンとしてのエピソードは3〜4割で、基本的には恋愛ドラマであり、後半にかけてコメディ→シリアスへ転調していく展開となっている。

ジェイミー役はギレンホールがチャーミングに演じ、軽薄な青年が恋愛と仕事に真剣に向き合うことで成長していく姿を人間臭く表現。パーキンソン病を発症しながら明るくタフに生きるマギー役はハサウェイが丁寧に、希望と絶望、喜びと恐れ、受容と拒絶、怒りと哀しみ、愛と憎しみなどさまざまな矛盾を抱えるアーティストとして演じている。劇中では2人とも陽気に裸になり、ベッドシーンも繰り返しある。そのことについてギレンホールは、「はじめはすごく居心地の悪い感じだったけど、僕たちの場合は『ブロークバック〜』でも演じていたので、比較的やりやすかったです」と語り、ハサウェイも「結果的にすべてのラブシーンが自然な仕上がりで、登場人物らしさをだせたと思います」と語っている。

ジェイク・ギレンホール

ズウィック監督は音楽誌『ローリング・ストーン』の記者を経て、’76年からテレビ業界でプロデューサー、作家、監督としてキャリアをスタートした人物。映画監督としては’86年にロブ・ロウとデミ・ムーア共演のロマンティック・コメディ『きのうの夜は…』でデビューし、近年は’03年のトム・クルーズ主演作『ラストサムライ』や’06年のレオナルド・ディカプリオ主演作『ブラッド・ダイヤモンド』など歴史モノや社会派ドラマが続いた中、久しぶりのラブ・コメディの製作となった。監督は語る。「私はテレビのための身近で自然な物語からキャリアをスタートした。しかし、長いこと映画でこうした物語を手がけていなかったので、今回実現する機会を得て引き込まれたよ。小さな苦悩が高い障害より大きなものとなったりする、そんな個人的なエピックに興味があるんだ」。

アン・ハサウェイ

ありがちなラブ・コメディと見せかけて、バイアグラでひと山あてた青年セールスマンの成長物語であり、難病と向き合うパートナーとの人間ドラマである本作。容易ではないテーマを含みつつ、気軽なデート・ムービー風の体裁にしてあるため、シリアスなテーマを苦手とする人にも届けられる可能性があるようにも。どことなくズウィック監督や製作サイドの温情や意思を感じさせるような、さまざまな要素を練り込んだ恋愛ドラマである。

作品データ

ラブ&ドラッグ
公開 2011年11月19日公開
シネマート新宿ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 1:53
配給 エスピーオー映画
原題 Love & Other Drugs
監督・脚本 エドワード・ズウィック
脚本 チャールズ・ランドルフ
マーシャル・ハースコヴィッツ
原作 ジェイミーレイディ
出演 ジェイク・ギレンホール
アン・ハサウェイ
オリバー・プラット
ハンク・アザリア
ジョシュ・ギャット
ガブリエル・マクト
ジュディ・グリア
ジョージ・シーガル
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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