ボーン・レガシー

監督と主演俳優を新たに、同じ背景で別のエピソードを描く
遺伝子操作と人格改造がなされた一流の暗殺者が
国家権力に立ち向かうシリアスなアクション・サスペンス

  • 2012/08/24
  • イベント
  • シネマ
ボーン・レガシー© 2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

マット・デイモン主演により大ヒットし、2007年の『ボーン・アルティメイタム』で完結した“ボーン”シリーズ3部作。監督と主演俳優を新たに迎え、そのほかの前シリーズのスタッフとキャストが再集結。同じ背景をもつ別の人間のエピソードを描く。出演は映画『ハート・ロッカー』『ザ・タウン』で実力が広く認められたジェレミー・レナー、『ナイロビの蜂』でオスカーを受賞したレイチェル・ワイズ、演技派のエドワード・ノートンほか。監督・脚本は前3部作で脚本をつとめ、映画『フィクサー』などで監督をつとめたトニー・ギルロイ。“ボーン”シリーズ3部作と「同じ世界・同じ時系列で展開されていた別の物語」として、遺伝子操作された暗殺者アーロン・クロスの激しい逃亡劇を描く。アメリカのアラスカ、ワシントンDC、そしてフィリピンのマニラを舞台に、大がかりでキレのいいアクションが派手に展開。組織の陰謀と国家権力に立ち向かう男を追うシリアスなサスペンスである。

記憶を失くした最強のもと暗殺者ジェイソン・ボーンにより、CIAによる暗殺者養成の極秘プログラム<トレッドストーン計画>は社会に露見し、国家の陰謀は転覆。プロジェクトの影の指揮官である国家調査研究所のリック・バイヤーは、この機密漏洩によってCIA長官に危機が及ぶ事態を回避するため、プログラムの存在そのものの「抹消」を決定。育成した暗殺者たちと関わった人物が次々と抹殺されていくなか、<アウトカム計画>の遺伝子操作と人格改造による“最高傑作”であるアーロン・クロスは、連続する集中攻撃をからくも回避。遺伝子操作の研究者である女性医師マルタが捜査官たちに抹殺されかけたとき、アーロンはある目的のために彼女を助け出す。

レイチェル・ワイズ 、ジェレミー・レナー

体内から発信機を取り出し、アジアの町の屋根を駆け、美人を連れて逃亡し……ところどころで現在日本公開中の映画『トータル・リコール』を思い出すシーンも。作りこまれた背景のもと王道のストーリーが展開し、凝ったアクション・シークエンスや俳優本人たちによるスタント、繊細な感情表現などディテールでひきつける仕上がりとなっている。

アーロン役のレナーは、遺伝子操作による心身の負担に苦しみながら、自由を獲得すべく逃亡する強靭な男を熱演。アラスカの凍った河に半裸で入り、マニラでの別プロジェクトの暗殺者との闘いでは、ダンスかアクロバットかというアクションやバトルも。レナーはもともと世界最速のバイクを含む10台を所有するライダーだそうで、バイクのきわどいチェイスシーンでは、レナーもワイズもノーヘルメットで本人が演じている。遺伝子操作の研究者マルタ役はワイズがひたむきに、アーロンとマルタの抹殺を指令する国家調査研究所のリック役はノートンが執拗に表現。そしてCIAのメンバーとして、内部調査局長パメラ役のジョアン・アレン、対テロ極秘調査局長ノア役のデヴィッド・ストラザーン、長官エズラ役のスコット・グレン、<トレッドストーン計画>の生みの親であるアルバート・ハーシュ博士役のアルバート・フィニーら、ボーン・シリーズのキャストたちも出演している。

ジェレミー・レナー

本作の製作にあたり、脚本も手がけたギルロイ監督は徹底的なリサーチをしたとのこと。それによると、物語で描かれている科学的な肉体改造は、アメリカですでに実際に行われているそうだ。監督は兵士について研究しているアメリカ政府の秘密組織DARPA(国防総省国防高等研究事業局)を調査。DARPAと情報部門において同等の機関IARPA(情報高等研究プロジェクト)は、アメリカの兵士やスパイの知力や体力を増強する目的で数々の研究プロジェクトに出資。製薬業界、医学研究者、シリコン・バレーなどとともに、人を強い兵士にする方法を模索しているとのこと。9.11以降、生物学と軍事が急激に融合し、アメリカ政府の出資により大企業に雇われた科学者たちの極秘計画が進行。それがあまりにも大きくなりすぎて、政府の1部門が監視することは不可能となっているとも。ギルロイ監督は語る。「戦争において薬物検査はない。エネルギーを増強させ、より強い痛みに耐え、より少ない睡眠で戦える兵士を必要としている。すぐに回復し、情報をいち早く認知し、処理できる兵士は、全ての指揮官の夢なんだよ。我々は、科学者たちが予期できない恐ろしい方法で、その夢を現実にしようとしている時代にいるんだ」。

エドワード・ノートン

“人間兵器”というSFで昔から描かれてきた世界が、すでにリアルになっているという今。現実離れした現実をフィクションとして描いた本作は、これから新シリーズとして続編の製作となるか。今後の流れにも注目したい。

作品データ

ボーン・レガシー
公開 2012年9月28日公開
TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 アメリカ
上映時間 2:15
配給 東宝東和
原題 THE BOURNE LEGACY
監督・脚本・原案 トニー・ギルロイ
脚本 ダン・ギルロイ
シリーズ原作 ロバート・ラドラム
出演 ジェレミー・レナー
レイチェル・ワイズ
エドワード・ノートン
ジョアン・アレン
アルバート・フィニー
デヴィッド・ストラザーン
スコット・グレン
ジョアン・アレン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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