アウトレイジ ビヨンド

東西の巨大暴力団組織の抗争と壊滅を悪徳刑事が仕掛ける
野心、裏切り、飛び交う怒号、男どもが命を賭して渡り合う
北野式バイオレンス・エンターテインメント完結編!

  • 2012/09/18
  • イベント
  • シネマ
アウトレイジ ビヨンド © 2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会

北野武監督初の続編プロジェクト、2010年の映画『アウトレイジ』の完結編。出演は前作に引き続きビートたけし、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、小日向文世、本作で新たに西田敏行、高橋克典、塩見三省、桐谷健太、新井浩文ほか。あれから5年、“死んだ”はずの大友はヤクザに戻る気もなく仮出所をするが……。野心、裏切り、金、意地、刃傷沙汰に飛び交う怒号。悪辣な男どもが命(タマ)を賭して渡り合うバイオレンス作品である。

関東一円を仕切る巨大暴力団【山王会】の組長が殺されて5年。山王会の内部は大きく変動し、若頭だった加藤(三浦)が会長に、大友組の金庫番だった石原(加瀬)が若頭に、古参の幹部である富田(中尾彬)、白山(名高達男)、五味(光石研)は鬱憤を募らせていた。政治家を裏から操るほどに力をつけた山王会に危機をおぼえた警察は、暴力団壊滅に向けて動き出す。警視庁の組織犯罪対策部(通称“マル暴”)の刑事片岡(小日向)は、関西を代表する暴力団【花菱会】を巻き込み、東西の巨大暴力団の抗争による双方の壊滅を目論む。片岡はその口火を切るため、大学の先輩で服役中のもと大友組組長、大友(ビートたけし)を仮釈放させる。

冒頭から加瀬亮のキレキャラで野蛮な世界へつきおとす。やりすぎ感ギリギリのきわどいキレっぷりには、なぜかうすい笑いがこみあげてくるから不思議だ。殺人事件の犯人として差し出された若手の構成員を片岡が取り調べる際、ろくな供述もできない人のよさそうな“容疑者”に、本来は正義の立場にあるはずの悪徳刑事が殺人の自供をゴリ押しするくだりなどは、試写室でも笑いが。

三浦友和、小日向文世

北野監督にとって初の続編である本作について、「“なんとか2”という言葉が嫌いで、1本目があってその続編って言われるのが非常に嫌いで。2本目は2本目なんだけど、『アウトレイジ』の2本目は、それ自体がひとつの作品であり流れがある。後編のストーリーになっているけれども、非常に独立した映画なんです」と自らの思いをコメント。冗談交じりに、「これはシリーズものじゃない予定だったんですけど、珍しく『アウトレイジ』が当たっちゃって、1回見た奴は2回見るんじゃないか?という図々しい根性で“2”を作ろうってことになったんです。俺はそういうの(続編)をやったことがないんで、ましてや(前作で)俺は死んでますんで、どうしようって言ったら、いろいろと考えまして良い手があったという(笑)」とも。演技派のベテラン勢の共演については、コテコテの芝居の応酬をおさえるのが大変だったとしながらも、「面白くてしょうがない」と語っている。

大友役は本作の監督・脚本・編集を手がけた北野武。堅気になろうとしてもヤクザの道に引き戻される因果な役回りを、大きな存在感と気迫、持ち前の軽妙さをかけあわせて表現している。山王会の構成員には、会長となった加藤役で三浦友和が成り上がりの焦燥感を、大友を裏切って山王会の若頭に抜擢された石原役は加瀬亮が勢いと気合で、会長のもとボディガードから幹部に成り上がった舟木役は田中哲司が淡々と、古参の幹部として中尾彬、名高達男、光石研ら演技派が前作から引き続き顔をそろえ、金で暴力団に便宜をはかる悪徳刑事の片岡役は小日向文世がしゃあしゃあと、片岡のやり方に反感をもつ刑事の繁田役は松重豊が実直に演じている。そして関西の花菱会の会長・布施役に神山繁、若頭の西野役に西田敏行、幹部の中田役に塩見三省、花菱会の暗殺メンバー城役に高橋克典、そして前作で大友に一矢を報いた木村役に中野英雄、木村の手下役に桐谷健太、新井浩文ほかベテランから若手まで充実のメンバーが集結。本作では善良な役を演じることの多い俳優たちも凶悪な男を演じていて、暗く濃いドーランでドス黒い顔色になり、険しい表情と攻撃的な口調で極道らしさをだしている。桐谷と新井はアニキを慕う若いチンピラのうぶな雰囲気がよくハマり、観客の気持ちを怒涛のストーリー展開へうまく引き込んでいる。

西田敏行、塩見三省

見どころはビートたけし、西田、塩見の激烈な怒号の応酬。大友が花菱会の幹部らと対面した場で、キツい関西弁で挑発され、一歩も引かずに押し切るシーン。本作への出演を自ら監督に申し出たという西田はこの場面について、「まるでスポーツを終えた後のような爽快感がある!おかげですっかり体調いいよ!」とコメント。このシーンは公式HPのメイキング映像“怒号シーン”でその片鱗を味わえる。

加瀬亮

2012年の第69回ベネチア国際映画祭コンペティション部門にて、本作は日本から唯一の正式上映作品に。現地時間の9月3日、北野監督が公式記者会見で本作について語った。「暴力描写を褒めてくれるマニアックな人々がいるのは嬉しいことだけれども、今回の映画はエンターテイメントだと割りきって自分なりのエンターテイメント性を追求した。そうすると、自分にとっては家庭、女、女房、子供とかは排除する結果になり、馬鹿な男の話になった。かなり割り切った作り方をしたが、エンターテインメント性を追求するとこんな感じになる。その方が楽しんでもらえるかなと思った。また、『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』に関しては、自分が撮りたい映画というよりも、観客のことを考えて作った。けれども、いつでもお客さんの入らない映画を作る準備もしているよ(笑)」。北野武映画史上最大、全国200スクリーン以上での公開が決定しているという本作。北野式バイオレンス・エンターテインメント、続編の威力やいかに。

作品データ

アウトレイジ ビヨンド
公開 2012年10月6日公開
新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 日本
上映時間 1:52
配給 ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
監督・脚本・編集 北野武
音楽 鈴木慶一
衣裳 黒澤和子
大友衣裳 山本耀司
出演 ビートたけし
西田敏行
三浦友和
加瀬亮
中野英雄
松重豊
小日向文世
高橋克典
桐谷健太
新井浩文
塩見三省
中尾彬
神山繁
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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