リンカーン / 秘密の書

リンカーンは一流のヴァンパイア・ハンターだった!?
バートンお墨付きの新進脚本家ら実力派メンバーによる
史実×ファンタジーの3Dアクション・エンターテインメント!

  • 2012/10/05
  • イベント
  • シネマ
リンカーン / 秘密の書©2012 Twentieth Century Fox

「人民の人民による人民のための政治」。第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーン。その裏の顔は、一流のヴァンパイア・ハンターだった――!? 出演は、『父親たちの星条旗』のベンジャミン・ウォーカー、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のドミニク・クーパー、演技派のイギリス人俳優ルーファス・シーウェル、『ダイ・ハード4.0』のメアリー・エリザベス・ウィンステッドほか舞台経験のある実力派の役者を中心に。製作はティム・バートン、監督は『ウォンテッド』のティムール・ベクマンベトフ。脚本は原作者のセス・グレアム=スミスで、本作の製作総指揮もつとめる。史実をベースにたっぷりのファンタジーで練り上げた、3D仕様のアクション・エンターテインメントである。

貧しい開拓農民の少年リンカーンは、母を死なせた地元の名士ジャック・バーツに復讐を誓う。ジャックがヴァンパイアだと知ったリンカーンは、事情を知る謎の富豪の青年ヘンリーのもと、斧を武器にハンターとしての鍛錬を積む。1837年にリンカーンはイリノイ州スプリングフィールドに移住し、弁護士の勉強をしながら昼は雑貨店に勤め、夜はヴァンパイアを葬るハンターとして暗躍。そのうちに、ヴァンパイアが奴隷制度によって人間の生き血を得ていると気づき、リンカーンは政治家として奴隷解放運動を推進しようと決意。そして第16代アメリカ合衆国大統領に選出されてまもなく、奴隷制度の存続を主張して合衆国を脱退した南部11州と、北部23州との間で南北戦争が勃発。ヴァンパイアが陰で糸を引く南北戦争に、北軍の最高司令官としてリンカーンが立ち向かう。

リンカーンの生い立ちから政治家となり、南北戦争の終結まで。史実を軸にヴァンパイア・ハンターとしての要素がうまく肉付けされ、現代アメリカの重要な歴史と偉人の伝記という硬派な内容が、とてもわかりやすいエンターテインメントに仕上げられている。

マートン・ソーカス、ベンジャミン・ウォーカー

ベクマンベトフ監督は当初、プロデューサーの予定だったものの、バートンの依頼に応じて監督を引き受けたとのこと。バートンは語る。「私はこのストーリーのティムール・バージョンを見たいと思ったんだ。大きな利点となったのは、ティムールがアメリカ出身ではなかったことだ(旧ソ連のカザフスタン出身)。彼は、登場人物や歴史的な出来事に違う見方を提供してくれた」。

リンカーン役はウォーカーが、本人さながらの190cmの長身をいかして好演。大統領に就任後の後年の姿は、リンカーンの実際のデスマスクをもとに仕上げた特殊メイクで本物そっくりの風貌に。有名なデティスバーグの演説シーンの堂々たる存在感はなかなかだ。リンカーンの妻メアリー役はウィンステッドがみずみずしく、ロマンス〜家族愛の様子を演じている。そしてリンカーンをハンターとして鍛える富豪の青年ヘンリー役は、クーパーが陰りをもたせて。最強のヴァンパイアである族長アダム役は、シーウェルが威圧感のある陰険で沈着な貴族風に。またリンカーンの幼馴染で“自由黒人”のウィル役はアンソニー・マッキー、母の敵である残虐なヴァンパイアのバーツ役はマートン・ソーカス、アダムの腹心である冷徹な女ヴァンパイアのヴァドマ役はもとスーパーモデルのエリン・ワッソンが、それぞれ個性的に演じている。

ド派手なアクションの見どころは、クラシックな舞踏会をふくめて3シーン。なかでも全力で駆ける1000頭もの馬の群れをぬって繰り広げられる死闘、疾走する列車の屋根の上での乱闘と、伝統的なスタイルのアクション・シークエンスを最新のデジタル技術と独自のアイデアで、歯切れよく迫りくる感覚に。3Dの醍醐味をたっぷりと堪能できる。

ベンジャミン・ウォーカー

原作者のグレアム=スミスはTVシリーズの脚本家として活躍し、MTVのコメディ『HARD TIMES 〜ボクのナニがアレなんで〜』(2010〜’11)を手がけたとのこと。’09年にジェーン・オースティンの『高慢と偏見』を元にしたパロディ小説『高慢と偏見とゾンビ』を発表。ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストで3位に。この本のプロモーションで全米の書店をまわった’09年がリンカーン生誕200周年だったことから、どこの書店でもリンカーンの伝記本と、当時ヒットしていたヴァンパイアと少女のラブストーリー『トワイライト』が並ぶディスプレイをみて、物語を着想。そして本作の原作である小説『ヴァンパイアハンター・リンカーン』を’10年に発表したそうだ。スミスは語る。「リンカーンは、アメリカが一度も見たことのない本物のスーパーヒーローだ。彼は由緒ある家の出身でもなければ、裕福でもなかった。幼い時に母を亡くし、愛する人を次々と失った。彼は教育もなく、ただ自分の強い心だけを武器に大統領になり、アメリカを救ったんだ」。

ベンジャミン・ウォーカー、ドミニク・クーパー

「深酒をするのは女にキスをするか、人を殺すときだ」。グッとくるキメ台詞がある作品には、映画でも小説でも人を引き込む力がある。グレアム=スミスは王道のモチーフや様式をモダンに、センスとキレよく、ユーモアや風刺をあわせながら描く確かな力量を感じさせる。本作は監督も俳優もそこまでメジャーではない実力派たちであり、“バートン製作”が売りであるため正直どれほどかと思っていたものの、エネルギッシュな勢いと突き抜けた感に驚いた。バートンは、小説の発表前にリンカーン / 秘密の書を聞いただけで映画化の意欲をかきたてられたそうで、「あのリンカーン / 秘密の書は私が見たいと思うような映画だった。あれなら、私の若いころの映画に備わっていたクレイジーなエネルギーを放てるような気がしたんだ」とコメント。グレアム=スミスは映画の脚本家としては、’12年のバートン監督作品『ダーク・シャドウ』でデビュー。次いで本作と、バートンのヴァンパイア映画2本で脚本を続けて担当。バートンから厚い信頼を寄せられ、すでに『ビートルジュース2』(1988年のバートン作品の続編)の脚本と製作を任された、という情報も。ジョニー・デップしかり、バートンが気の合う俳優やスタッフとともに良質な作品を製作する映画作家であることは周知のとおり。スミスとうい新メンバーが加わり、どのような進化となるか。バートン組のさらなる活躍がたのしみである。

作品データ

リンカーン / 秘密の書
公開 2012年11月1日公開
TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 アメリカ
上映時間 1:45
配給 20世紀フォックス映画
原題 ABRAHAM LINCOLN : VAMPIRE HUNTER
製作 ティム・バートン
監督 ティムール・ベクマンベトフ
原作・脚本 セス・グレアム=スミス
出演 ベンジャミン・ウォーカー
ドミニク・クーパー
メアリー・エリザベス・ウィンステッド
アンソニー・マッキー
ルーファス・シーウェル
マートン・ソーカス
エリン・ワッソン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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