007 スカイフォール

シリーズ生誕50周年、初のオスカー監督による007最新作
王道のスタイルに加え、新たな時代へ復活と再生を打ち出す
ドラマ性を高めた、映画史上最長シリーズのスパイ・アクション

  • 2012/11/27
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007 スカイフォールSkyfall © 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

IT時代に諜報機関や現場エージェントは必要なのか?今年にシリーズ生誕50周年を迎えた007最新作。出演は6代目ボンドとして3作品目となるダニエル・クレイグ、イギリスの大御所女優ジュディ・デンチ、オスカー俳優のハビエル・バルデム、ボンドガールにイギリスの女優ナオミ・ハリスとフランスの女優ベレニス・マーロウ、イギリスの演技派俳優であるレイフ・ファインズ、アルバート・フィニーほか。監督は第72回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門を受賞した映画『アメリカン・ビューティ』のサム・メンデス。MI6(英国情報局秘密情報部)のエージェント、ジェームズ・ボンドは、トルコで重要な機密情報を持ち去った男を追い詰めるが……。カーチェイスにアクション、美しい女性たちとの駆け引き、さまざまなガジェットという007らしさに加え、ドラマ性がより高められた、映画史上最長シリーズのスパイ・アクションである。

トルコのイスタンブール。各地で潜入捜査をしているNATOの秘密諜報部員の情報が入ったハードディスクドライブが盗まれ、MI6の諜報員ジェームズ・ボンドが持ち去った男を車で追跡。激しいカーチェイスをしながらモスクとグランドバザールを疾走し、さらにバイクでの逃走劇の果てに、犯人は走る列車の屋根へ。どこまでも追うボンドと激しいもみあいが続くなか、ロンドンの本部にいる上司Mの指令により、アシスタントエージェントのイヴが遠方から犯人を狙撃。が、ボンドが被弾し、橋の上を走る列車から90m下の川に転落する。エージェント007の死亡、超極秘HDDが盗まれた責任を追及され、Mは引退勧告を受ける。そしてロンドンで爆発テロが発生する。

ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム

盗まれたHDDの行方、その犯行目的とは、英国政府から問われる諜報機関と現場エージェントの存在意義、MI6組織内における上司や同僚との信頼関係、そしてボンドの生い立ちまで。敵との対立とバトルというスパイ・アクションの定番ストーリーのみならず、社会とのかかわりや人間模様なども描かれ、観る側をドラマに引き込む仕上がりとなっている。

00(ダブルオー、殺しのライセンス)を得たばかりの前2作から、本作では年を経てベテラン諜報員となったボンド役をクレイグが好演。トム・フォードのスーツでハードなアクションやスタントをこなし、堂々たるボンドぶりを焼き付けている。敵対するシルヴァ役はバルデムが得体の知れない不気味さを漂わせて怪演。緻密かつ派手に仕掛け、真意を煙にまくキャラクターとして演じている。ボンドの上司「M」役はデンチが演じ、英国政府にMI6の意義を断固として主張。デンチは5代目ボント、ピアース・ブロスナン主演による1995年の『ゴールデンアイ』で初めて女性のMを演じて以来、7度目の007シリーズ出演となる。ボンドガールは、アシスタントエージェントのイヴ役をハリスが知的に歯切れよく、ボンドが中国で出会う謎の美女セヴリン役はマーロウが深い憂いを帯びて妖艶に。Mに引退をすすめる情報国防委員会委員長マロリー役をファインズ、ボンドの幼年時代を知るキンケイド役をフィニーが演じるなど、舞台でキャリアを積んだメンデス監督のもと、舞台でも活躍する実力派俳優たちが結集していることも注目だ。また007シリーズの名物キャラクターであるMI6武器開発担当者「Q」が本作で再登場。4代目Q役は『パフューム ある人殺しの物語』のベン・ウィショーが演じ、あけすけな物言いをするITの申し子の青年にボンドが面食らうシーンもなかなか。もうひとり再登場となるキャラクターについては、みてのおたのしみで。007シリーズのファンならラストまで待たずとも、劇中の某シーンですぐにわかるだろう。

ベレニス・マーロウ、ダニエル・クレイグ

アクションの見どころはオープニングから。イスタンブールの街中でランドローバーが黒のアウディを追い、バイクに乗り換えて建物の屋根まで追跡し、走る列車の屋根の上での格闘シーンへ。この冒頭13分のアクション・シークエンスは、完成までに3か月の入念なリハーサルと2か月の撮影を要したとのこと。メンデス監督とスタント・コーディネーターのゲイリー・パウェルは、CGIはあくまでも補助としてリアルなアクションを限界まで追及。プロのアスリート並のトレーニングで体を鍛え上げたというクレイグ本人が、時速50qで走る列車の屋根の上で実際に格闘シーンを演じている。また終盤ではボンドカーとしてアストン・マーティンDB5が登場。DB5は1960年代に生産され、『007/ゴールドフィンガー』でボンドが初めて乗ったボンドカーであり、シリーズを象徴するヴィンテージカーとして知られている。DB5がスコットランドの一本道を走り抜けてゆくさまは、どこか詩的な物語性を感じさせる。

ジュディ・デンチ

2012年に007シリーズ生誕50周年を迎え、1962年にショーン・コネリー主演の第1作『007/ドクター・ノオ(Dr. No)』から第23作目にあたる本作。今夏にはロンドンオリンピックの開会式で、クレイグがボンドとしてエリザベス女王をバッキンガム宮殿から会場までエスコートするショート・フィルム「Happy and Glorious」が上映されたことも話題に。そして10月24日(日本時間)にロンドンの「ロイヤル・アルバート・ホール」で開催されたロイヤル・プレミアには、『007/カジノ・ロワイヤル』でのエリザベス女王、『007/慰めの報酬』でのウィリアム、ヘンリー両王子に続いて、今回はチャールズ皇太子とカミラ夫人が出席。メンデス監督をはじめ製作スタッフ、クレイグと妻のレイチェル・ワイズ、デンチやバルデムら本作の出演者たち、クリストファー・リーほか過去の出演者たちも登場。今回は皇太子が後援する複数の諜報機関へのチャリティ試写として、収益金は「the Secret Intelligence Service」「the Security Service」「GCHQ」など現役・退役のメンバーをサポートする3つの機関に寄付されたそうだ。ストイックで女性の心や意思を尊重し、007でありつつも人間味を感じさせるクレイグ=ボンド。新メンバーたちとのチームも含め、次回も大いに楽しみである。

作品データ

007 スカイフォール
公開 2012年12月1日公開
TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2012年 アメリカ・イギリス共同
上映時間 2:23
配給 ソニー・ピクチャーズ
原題 SKYFALL
監督 サム・メンデス
脚本 ニール・パーヴィス
ロバート・ウェイド
ジョン・ローガン
プロデューサー マイケル・G・ウィルソン
バーバラ・ブロッコリ
出演 ダニエル・クレイグ
ハビエル・バルデム
ジュディ・デンチ
ベレニス・マーロウ
ナオミ・ハリス
レイフ・ファインズ
ベン・ウィショー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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