アウトロー 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
アウトロー

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トム・クルーズが孤高のヒーロー“ジャック・リーチャー”に
きわどいカーチェイスも激しい格闘シーンも差し替えナシ
世界的なベストセラーを映画化したアクション大作

 トム・クルーズがなにものにも縛られない強靭なヒーロー“ジャック・リーチャー”を打ち出す最新作。出演は製作もつとめるクルーズ、『007/ダイ・アナザー・デイ』のロザムンド・パイク、演技派のリチャード・ジェンキンス、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のデヴィッド・オイェロウォ、ベテランのオスカー俳優ロバート・デュヴァル、ドイツの監督で俳優でもあるヴェルナー・ヘルツォークほか。監督・脚本は『ユージュアル・サスペクツ』で第68回アカデミー賞脚本賞を受賞したクリストファー・マッカリー。スタントマンによる差し替えなし、クルーズ本人による本格的なカーチェイスと格闘シーンでひきつけるアクション大作である。

 ピッツバーグ近郊。おだやかな晴れた昼間、運河沿いの歩道で狙撃事件が起こる。銃弾は6発、死んだ犠牲者は5人。狙撃現場と事件現場に残された証拠品から犯人を特定し、容疑者として元軍人の狙撃兵ジェームズ・バーが逮捕される。エマーソン刑事とロディン検事の取り調べでバーは容疑を否認し、「ジャック・リーチャーをよべ」と要求。ジャックはロディン検事の娘でバーの弁護士であるヘレンから協力を求められ、自身でも事件の真相に疑問を抱いたことから、事件の調査にのりだす。

トム・クルーズ

 本作は95カ国で出版、40言語に翻訳され、世界で6000万冊の売り上げを誇るイギリスの作家リー・チャイルドによる世界的なベストセラー“JACK REACHER”シリーズより、9作目の「ONE SHOT」を映画化。ジャック・リーチャーはもと米軍の秘密捜査官であり、今はどこにも属さず存在の痕跡をも残さないため“ゴースト”とよばれる謎の男。流浪の旅のなか、迫りくる暗殺者や巨大な陰謀に、独自の倫理感と判断により情け容赦なく正義を執行する、というキャラクターだ。

 クルーズはいつもより抑えめに、ジャック役をストイックなイメージで表現。危険なシーンも差し替えなしで演じるため、カースタントと格闘技の特訓を受けたそうだ。ジャックに調査を依頼する女性弁護士ヘレン役は、パイクが落ち着いた雰囲気で。弁護士としての正義感、ジャックに惹かれる様子を演じている。負けなしのロディン検事役はジェンキンス、事件を追うエマーソン刑事役はオイェロウォ、影の黒幕ゼック役はヘルツォーク、その配下のチャーリー役はジェイ・コートニーがそれぞれにくっきりと表現。射撃場を経営するもと海兵のキャッシュ役は名優デュヴァルがいい味わいで演じ、1990年の映画『デイズ・オブ・サンダー』以来のクルーズとの共演となっている。すこし気になることは、登場人物たちの関係性や動機があいまいでわかりにくいところ。個人的には検事と弁護士の父娘関係の変化、ある人物が裏切った理由など人物の心理描写がもうすこしあると感情移入しやすいように思える。

トム・クルーズ、ロザムンド・パイク

 見どころは監督もクルーズも“本物”を目指したアクションシーン。カーチェイスでは映像トリックは一切使わず、カメラを揺らして編集でスピード感をだしたり、CG用のブルースクリーンを背景にトレーラーの上に車をのせたりしないで、実際に撮影した映像を使用。1967年型のシボレー シェベルSSで高速を逆走し、対向車をかわしながら執拗に敵を追跡するシーンは、クルーズ本人も気に入っているとのこと。アクションではスペインで開発された実践的な格闘スタイル“キーシ・ファイティング・メソッド”を取り入れたそうで、派手さはないものの、もと精鋭の軍人らしい鍛錬された動きとなっている。

 原作が世界中に熱心なファンのいる小説であるため、身長2メートル弱の大男という設定のリーチャー役をクルーズが演じることに対し、「イメージが違う」と反発していた原作ファンもいたとのこと。クルーズ本人による本格的なアクションシーンの映像とともに、リーチャー役を演じる熱意を伝えたことで、反対派にも受け入れられて支持を得たそうだ。このことについて原作者のチャイルドとマッカリー監督も、“内面が大切で外見は重要ではない”と明言しているとのこと。

 本作の来日記者会見で、2015年公開予定 “ミッション:インポッシブル”第5弾の続編はマッカリー監督が手がける、とクルーズが発表したことも話題に。監督とのタッグは良好、原作者チャイルドは現役の小説家でジャックシリーズは17冊が出版されており、クルーズの新シリーズとして第2弾もありきとされている本作。ただ2012年12月の全米公開から興行収入がふるわず、パラマウント・ピクチャーズが続編の製作を再考しているという情報も。クルーズ主演のハリウッド大作ゆえ、M:Iシリーズのようにわかりやすいキャラクターとはなやかな映像トリックによるシンプルなサスペンス・アクションを期待すると……という気持ちは、たしかにわかる。ジャック・リーチャーが続編製作となるかどうかは、日本をはじめこれからの世界公開の興収次第となりそうだ。

『アウトロー』
2012年 アメリカ映画
データ
2013年1月25日更新
トム・クルーズ
2013年2月1日公開
丸の内ピカデリーほかにて
全国ロードショー

■2012年 アメリカ映画
■上映時間2:10
■パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給
■原題/『JACK REACHER』
■監督・脚本/クリストファー・マッカリー
■製作/トム・クルーズ
ポーラ・ワグナー
■出演/トム・クルーズ
ロザムンド・パイク
ロバート・デュヴァル
ヴェルナー・ヘルツォーク
リチャード・ジェンキンス
デヴィッド・オイェロウォ
ジェイ・コートニー
ジョセフ・シコラ




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。